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DXを「自分には関係ないしそれはシステム部門の話と思っている人たち」にはスマホの中にあるアプリのサービスがどのような顧客価値を提供していてデータを使っていて収益構造になっているかを6名くらいで60分議論させて発表させると理解が進む件

はじめに

筆者は生命保険会社のデジタル共創オフィサーとして、社内のデジタル戦略や執行支援をする傍ら、顧問先やパートナー企業のDX支援、自治体向けのビジネス発想支援や官公庁のDX推進委員を務めており、日本全体のDX推進や人材育成のあり方を考える活動に携わっている。

その関係で多くの企業のDX推進担当から相談を受ける。そこで聞くのは「デジタルやDXについて、自分とは関係がないと考えている人が多くてDX人材育成が進まない」ということだ。特に業績が安定している電気やガスのエネルギー製造供給や製造業などの巨大企業に多い。

このような「自分には関係ない、システム部がやればいいんでしょ」と思っている人に自分ごと化させるにはどうすれば良いのか。これには「日常的に使っているスマートフォンのアプリを通して、デジタルサービスがいかに顧客価値を提供し、データを活用して収益を生み出しているか」を理解してもらうことが有効だ。

身近なアプリの顧客価値とデータ活用

DXでは「顧客価値」とそれを創出するために「データ」が使われていることを理解することが必要である。日常的に利用しているスマートフォンアプリの多くは、利便性や楽しみを提供することで顧客価値を生み出している。例えば、ある地図アプリは目的地までの最適なルートを提示し、移動時間を短縮してくれる。これが顧客価値だ。

また、あるメーカーの家電操作アプリは、外出先からでも家電の操作や状態確認ができ、利便性を高めており顧客価値になっている。これらのアプリは利用者のデータを収集・分析することで、サービスの改善や新たな収益源の創出につなげている。

ある有名なSNSアプリは、利用者の投稿内容や交友関係のデータを分析し、趣味や関心に合わせた広告を配信している。また、ある大手ECサイトのアプリは、購買履歴や閲覧履歴を活用し、個々の利用者に適した商品のレコメンデーションを行うことで、売上増加につなげている。

データを活用した収益構造

DXでは「収益構造」を理解することも必要だ。多くのアプリは、利用者のデータを分析することで、ターゲティング広告を配信し、収益を得ている。例えば、あるメッセージングアプリは、利用者の会話内容や行動パターンを分析し、それに合わせた広告を表示する。また、あるフィットネスアプリは、利用者の運動データを収集・分析し、健康関連商品のレコメンデーションを行うことで収益を生み出している。

あるゲーム会社のパズルアプリは、利用者のゲームプレイデータを分析し、アイテム販売や有料コンテンツの提案を行っている。さらに、ある動画配信サービスは、視聴履歴や評価データを基に、個々の利用者に合わせた作品のレコメンデーションを行い、有料会員の獲得や継続利用を促進している。

ある大手検索エンジン会社のアプリは、検索キーワードや位置情報データを分析し、ユーザーの関心に合わせた広告を配信している。また、ある有名な宿泊予約アプリは、利用者の検索履歴や予約データを活用し、パーソナライズされたおすすめ宿泊施設を提示することで、予約率の向上を図っている。

ディスカッションと発表による理解の深化

デジタルやDXに関心が薄い人たちにこれらの仕組みを理解してもらうには、身近なアプリを題材にしたディスカッションと発表が効果的だ。6名程度のグループで、普段使っているアプリがどのような顧客価値を提供し、データを活用してどのように収益を上げているかを60分かけて議論し、発表することで、デジタルサービスのビジネスモデルへの理解が深まる。

例えば、あるグループがショッピングアプリを取り上げ、商品検索や購入の利便性といった顧客価値や、購買履歴データを活用したレコメンデーションや広告配信による収益構造を分析・発表することで、デジタルサービスの仕組みへの理解が深まる。また、別のグループが音楽ストリーミングアプリを題材に、利用者の好みに合わせたプレイリスト提案という顧客価値や、聴取データを基にしたアーティストへの楽曲提供や広告配信による収益構造を議論・発表することで、データ活用の重要性が明確になる。

あるグループが有名なタクシー配車アプリを取り上げ、利便性と迅速性という顧客価値や、利用者の位置情報と需要予測データを活用した効率的な配車システムによるコスト削減と収益向上について議論・発表することで、データ活用がビジネスに与える影響への理解が深まるのだ。

社内のDX推進に向けて

こうしたディスカッションと発表を社内で実施することで、デジタルやDXへの理解が深まり、自社の業務や顧客サービスにどのように活かせるかを考えるきっかけになる。例えば、ある製造業の営業部門が、顧客との接点で得られるデータを活用し、ニーズに合わせた提案や新サービスの開発につなげるアイデアを出し合うことができるだろう。ある小売業の店舗スタッフが、店舗内の顧客動線データを分析し、レイアウトの改善やスタッフ配置の最適化を提案できるかもしれない。

まとめ

デジタルやDXは、もはや一部の部門だけの話ではない。デジタルサービスがいかに顧客価値を提供し、データを活用して収益を生み出しているかを理解することが重要だ。身近なアプリを題材にしたディスカッションと発表を通して、デジタルやDXへの理解を深め、自分自身の仕事や生活にどのように活かせるかを考えることが、全社的なDXの推進と、新たな価値創造につなげていくことができるはずだ。

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