DX×生成AI時代に新規事業を成功させるために学びたい6つのこと。
はじめに
筆者は財閥系生命保険会社のデジタル共創オフィサーで、DX人材教育を自社だけでなく社外でも実施しています。年間多くの講演やワークショップを実施しており、全国の多くのDX担当者から悩みや不満を聞くことがあります。5年間もそんなことを続けていると、成功するDXとしないDXが分かります。
成功するDXは既存の業務の改善にとどまらず、既存の事業をさらに拡大する新サービスや本業に近い新規事業を手がけています。DXとはデジタルを使ったトランスフォーメーションなので変革が伴います。変革には新しい知識やスキルが必要です。絶対必要です。
筆者はDX商品である健康増進型保険Vitalityの開発を行いましたが、そこでも新しい知識やスキルをたくさん学ぶ必要がありました。さらに今は生成AIがあります。生成AIは単独で使うのではなく、他の能力と掛け合わせると威力が増します。
そこで本稿では、特にDXが苦手だと言われる大企業が新規事業で生成AIを効果的に活用するための社員のリスキリング項目を紹介します。DXが上手くいかないと嘆く大企業は、6つの項目を中心に、社員の能力開発を進めていくことが重要です。
1. 生成AIの使い方、プロンプト
生成AIを活用するためには、AIの基本的な仕組みや特性を理解することが重要です。社員は、AIモデルの種類や性能、適用可能な領域などについて学ぶ必要があります。当然、プロンプトエンジニアリングのスキルを身につけることも重要です。適切なプロンプトを設計することで、AIからより良い結果を引き出すことができます。
プロンプトの設計には、タスクの明確化、文脈の提供、望ましい出力形式の指定などが含まれます。社員は、プロンプトの設計を通じて、AIとのコミュニケーションを最適化し、効率的に業務を遂行できるようになります。
2. デジタルビジネスモデル
生成AIを活用した新規事業を成功させるためには、デジタルビジネスモデルに関する知識が不可欠です。社員は、データやAIを活用したビジネスモデルの設計や評価ができるようになる必要があります。
プラットフォームビジネス、サブスクリプションモデル、フリーミアムモデルなど、様々なデジタルビジネスモデルの特徴や利点を理解することが求められます。また、自社の強みを活かしつつ、顧客価値を最大化するようなビジネスモデルを設計する能力も重要です。以下は筆者の連載記事ですが、無料で登録して読めるので是非勉強ください。
3. 文章を書いたりプレゼンする能力
生成AIは、文章作成やプレゼンテーション資料の作成などにも活用できます。社員は、AIを活用しつつ、説得力のある文章やプレゼンテーションを作成する能力を身につける必要があります。
AIによる文章作成では、適切なプロンプトを与えることで、目的に沿った文章を生成できます。
社員は、AIによる文章の特徴を理解し、必要に応じて修正や加筆を行う能力が求められます。プレゼンテーションでは、AIを活用して視覚的に訴求力のある資料を作成することも可能です。社員は、AIの出力を効果的に活用しつつ、聴衆を引き付ける引き込みスキルを磨く必要があります。
4. デジタルマーケティング
生成AIは、デジタルマーケティングにも大きな影響を与えています。社員は、AIを活用したマーケティング施策の立案や実行ができるようになる必要があります。例えば、AIを活用した広告の最適化や、パーソナライズされたコンテンツの配信などが挙げられます。社員は、顧客データの分析やセグメンテーション、キャンペーンの設計などにAIを活用する方法を学ぶ必要があります。マーケティングオートメーションツールなどの活用方法も身につけることが求められます。
5. エフェクチュエーション
新規事業の立ち上げには、不確実性が伴うことが多くあります。そうした状況下では、エフェクチュエーションの考え方が有効です。社員は、エフェクチュエーションの基本的な考え方を理解し、実践する能力を身につける必要があります。
エフェクチュエーションでは、"Bird in hand"(手持ちのリソースを活用する)、"Affordable loss"(許容可能な損失の範囲内で行動する)、"Lemonade"(偶発的な出来事を活用する)などの原則が重要です。社員は、これらの原則を踏まえつつ、柔軟に行動し、新たな価値創造に挑戦することが求められます。以下は筆者のエフェクチュエーションの連載記事です。よろしければ。
6. SaaSなどのシステムを導入できる能力
生成AIを活用した新規事業では、SaaSなどのクラウドベースのシステムを導入することが多くあります。社員は、SaaSの特徴や利点を理解し、適切なシステムを選定・導入する能力を身につける必要があります。
SaaSの導入では、自社の業務要件に適合するシステムを選定することが重要です。社員は、システムの機能や拡張性、セキュリティ、コストなどを総合的に評価する能力が求められます。また、SaaSベンダーとの交渉やコミュニケーション、システムの運用・保守に関する知識も必要です。
リスキリングの進め方
これらの6つの項目を中心に、社員のリスキリングを進めていくことが、生成AIを活用した新規事業の成功につながります。ただし、リスキリングには一定の時間と努力が必要であり、企業は計画的に取り組む必要があります。
まず、社員のスキルギャップを評価し、個々人に適したリスキリング計画を策定することが重要です。また、研修プログラムの開発や外部リソースの活用など、効果的な学習機会を提供することも求められます。
加えて、リスキリングの成果を評価し、適切にフィードバックすることも重要です。社員の成長を促し、モチベーションを維持するために、適切な評価体系の構築が求められます。
組織全体としても、リスキリングを支援する文化の醸成が必要です。学習や挑戦を奨励し、失敗を許容する組織風土を作ることが、社員の能力開発を後押しします。
まとめ
生成AIを活用した新規事業は、大企業にとって大きな機会であると同時に、社員のリスキリングが不可欠な取り組みです。企業は、これらの6つの項目を中心に、戦略的かつ計画的に社員の能力開発を進めていく必要があります。
社員一人ひとりが、AIの活用に必要なスキルを身につけ、新たな価値創造に挑戦していくことが、企業の成長と発展につながるでしょう。大企業が、生成AIの可能性を最大限に引き出し、新規事業で成果を上げていくことを期待したいと思います。
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