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どこかの誰かの人生に思いを馳せてしまう

人の痕跡に、心を奪われることがある。

古本に書かれたメモ書き、「今〇〇人がチェックしています」と表示された予約画面、電車の座席に置いて行かれた忘れ物

姿かたちは見えないけれど、確実に存在している/していたという生々しさ。その生々しさを無視できず、つい想像を膨らませてしまう。
-きっとこの本の前の持ち主は、知的な女性に違いない。大事な描写には線を引いている。丁寧な字で、書き込みまで。
-今は夜中の2時なのに。同じ予約画面を睨みながら、旅行の計画を練っている人たちはきっと僕と同じで、夜更かしだ。
-この折り畳み傘の忘れ物、長年使っていたような感じだ。でももう、取りには来ない。新しい傘に乗りかえるんだろう。

今この世界で、人の数だけの人生が進行している。
どこかの誰かによって産み落とされた「人の痕跡」というものは、そんな単純な事実を、克明なイメージを以て思い出させる。不思議な感覚だ。

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『ナイト・オン・ザ・プラネット』を観た。
人の痕跡を、覗いたかのような話だった。

同じ日の同じ夜。
その下にはいろんな人生があるんだ。もしかしたらその中で、何気ない一瞬が誰かの人生を大きく変えることだってあるかもしれない。そうやって色々な人生が交錯しながら、一日は始まり、そして終わっていくんだろう。
そんなことを思わせる映画だった。

『ナイト・オン・ザ・プラネット』っていい題名だ。地球を俯瞰しているというか、大きな視点、壮大な視野だ。

思いがけず人の痕跡に出会ったとき、ふとどこかの誰かの人生に思いを巡らせてみる。
そんな心の余裕を忘れないでいたい。


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