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涙のバレンタイン。

先日のバレンタイン、自分へのご褒美にイオンのリカーショップで購入したミックス粉を使ってブラウニーを焼いた。海外製のブラウニーミックスは、粉の段階からすでに甘い匂いを発しており、焼いたら倍の香りと甘さを発揮しそうな予感が満載だった。ともかくボウルにプラスアルファの材料をインしてまぜまぜ。四角いパウンド型に入れて、説明書き通りの温度と時間で焼いてみる。三十分後、オーブンから取り出すと、真ん中あたりからどろっとした液体がにょろり。あれ?おかしいな??生焼け???
…そこで追加で180度のオーブンで10分追加して焼けば良かったものを、せっかちな私はなぜかレンジ機能を使って10分チンしてしまう。7分くらいたったところで、何だか甘さのなかに焦げ臭さの入り混じった匂いが。あ、やべと思って取り出したが、さっきのどろっとした真ん中部分から液体がでてくることはなかった。これ焼けたのかなあと思いつつ、その後出かけなければならなかったので、作ったブラウニーは車の中で食べようと思って、パウンド型から取り出さずにそのまま持って車に乗って出かけた。
数時間の用事を済ませて車に戻る。ちょっとした仕事を済ませた後でお腹はぺこぺこ。車の中には置きっぱなしにしていたブラウニーが甘い香りを放っている。よし!食うぞ!!と思って用意しておいたコンビニフォークをパウンド型に入ったブラウニーに突き刺す!!!
…あれ?刺さらない。プラスチックのフォークの切っ先が一ミリもブラウニーに入っていかない。おかしいなと思って手で半分に割ろうとするがびくともしない。っていうか硬い。めちゃめちゃ硬い。パウンド型はシリコンタイプだったので容易に取れたが、取り出したブラウニーは石のように重く、硬い。とはいえ私は腹が減っている。この甘い匂いにはもう我慢ができん。かくなる上はそのままかぶりついてしまえ!!と石化したブラウニーにかじりつく。
…が、歯も立たない。ってかこれ飴より硬い。もはや食い物ではない。しかし腹の減っていた私の判断力はおかしくなっており、そのままかじかじ歯でかじり続けた。しばらくかじった後、ふと前歯に違和感を感じる。なんかおかしい。前歯の角度がおかしい。ちなみに私の前歯4本は差し歯である。うち一本の角度がなんかおかしい。もうひと齧りしようと歯を立てた瞬間、ぐらりと歯が揺れるのを感じる。あ、やばい、これ歯ぁ取れる。ようやく私は食うのを諦めた。
でも悔しい。ずっとこれを食べるのを心待ちにしていたのに、なんで食べられないの。こんなに甘い匂いで誘っているのに、なんで私を受け入れてくれないの。悔しい。悲しい。泣きたい。そして腹立たしい。いろんな感情が入り混じった私はそのまま車で帰宅し、玄関のポーチにカチコチのブラウニーを叩きつけた。さすがにフォークも歯も立たないブラウニーもこれで真っ二つになるはず。
…が割れない。形が一つも損なわれない。なぜ。ってかパウンド型で作ったブラウニー、そこまで硬いともはや見た目も強度も完全なレンガ。レンガは食べられない。これはもう負けを認めざるを得ない。
…というわけで私は歯形の何箇所かついたブラウニーをようやくゴミ箱に捨てる決意をしたのであった。ちなみにぐらぐらになった歯はその後歯医者で「あ、とれてますね」と言われ、作り直しをする羽目に。しめて1万円(保険適用)。食い意地に負けたせいでとんだ出費となりましたとさ。

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