No.10 脆い支柱①
深鳥(みどり)です。ボクは女の子だけど男っぽい見た目をしてます。ボクがそんな感じなのは、ボクが莉々から作られたイマジナリーフレンドだからです。
今は人格化してるけど、昔はイマジナリーフレンドとしていました。
ボクが生まれたのは莉々が小学5年生の時。最初は声をかけず、ただ莉々の様子をじっと見ていました。莉々はよく見えもしないボクに話しかけてたけど。最初に声をかけたのは小学6年生になってすぐの時。
莉々は小さい頃から自分の気持ちを閉じ込める子どもでした。だからその感情が爆発した時に声をかけました。
「物を投げちゃだめだよ」
それが最初にかけた言葉でした。むしゃくしゃしてて物を投げそうだったので声をかけたら、莉々は驚いた顔をしてました。それがちょっぴり不思議で面白くて、莉々の考えてることがどんどん頭に入ってきて、だから莉々が言われたい言葉をいっぱい言うことにしました。
ボクは常に莉々と一緒でした。最初はボクの声を気のせいだと思っていたみたいだったので、よく話しかけていたら、一年くらい経ってボクの存在を認知したようでした。莉々はボクの存在を知ってから毎日のように話しかけてきていました。毎日ボクたちはお話をしていました。
「ねえ、名前なんて言うの?」
中一のとある日、誰もいない教室に居残っていた莉々にそう尋ねられました。居残っていたといっても罰とかではなくて、自主的に教室の掃除をしていました。
ボクはその問いに少し戸惑いました。名前なんてなかったからです。悩んだけれど正直に答えることにしました。
「ないよ」
「じゃあ、私が名前つけてあげるよ!」
絶対言うと思ったことを言われました。莉々は能天気だから。
「いらないよ」
そう言っても莉々は考え出します。
ボクは名前が欲しいとは思いませんでした。名前があったら自分の存在を確立させてしまうと思ったからです。ボクがずっといたら、莉々はボクに依存してしまう気がして、そうなったら莉々は友達を作るのが苦手になってしまうと思ったのです。
でももうすでに莉々は依存していました。莉々の気持ちが高ぶっているのを感じ、ボクも諦めることにしました。こうなったら莉々を幸せにしよう。固い決意をしていると、莉々が弾んだ声で言いました。
「じゃあ、みーちゃんはどう?」
名前って言ってたけどあだ名になりました。
一応自分の気持ちも伝えてみました。
「ボクには似合わない名前だと思うけど。。。」
でもボクの気持ちは伝わりませんでした。
「いいの。でもボクっ子っていいよね。私の好きなタイプなんだ。ボーイッシュとかカッコイイ系」
知ってる。だから生まれたんです。莉々がボクのような姿性格に憧れてること。でもなれないと悟って諦めてること。
ボクには荷が重かったです。でも、ボクの存在で莉々が楽しく生きれるのなら、ボクは莉々のそばにいようと思いました。
中学2年のある日、目が覚めたボクはいつもの場所にいませんでした。薄暗い部屋にいました。莉々の姿はありませんでした。莉々と離れたことなんか1度もなかったから不安になりました。
莉々がいない代わりに人がたくさんいました。10人くらいはいたと思います。そのうちの1人に声をかけられました。
「お前、新人か?名前は?」
ボクが自分の名前がみーちゃんであることを伝えると、周りが一気にざわつきました。
「莉々がずっと話しかけてたのはお前だったのか」
そう言われました。
その後、色々な説明を受けました。ここは莉々の頭の中で、みんなで一緒に住んでいると。モニターをじっと見つめると、外に出てしまうから気をつけるようにと。
「あなたたちはなんなんですか?」
ボクの問いに、ちゃんと答えられる人はいませんでした。その時に言われたのが、こうでした。
自分らもよくわからない。外の世界に出るとみんな莉々として接してくるから、周りに合わせている。周りの人からなんとなく聞き出したところ、頭の中に人がいっぱいいるのは普通ではない。だから外に出ても自分が莉々ではないということは隠してほしい。
ボクには理解ができませんでした。外、というのが莉々がいつもいる世界だとして、どうして外に出たらボクが莉々になってしまうのかがわかりませんでした。そもそもボクは幽霊みたいな存在で、ボクの姿を見ることなんて誰にもできなかったからです。
ボクはモニターを見ました。莉々の視界が映っているのがわかります。1歩、また1歩と近づきました。
「行くな!」
そう止められた時にはもうモニターに触れていました。急に全身が引っ張られる感覚に襲われて、気づいたらさっき莉々がいたところにいました。でも莉々の後ろにはいません。見回すと、ボクの体が莉々の体になっていました。驚いていると、頭の中から声がしました。みーちゃん?とか、みー?とか、ボクの名前を呼ぶ声がしました。ボクは莉々と交代してしまったんだと思い、みんなが言っていた意味を理解しました。
今思うとこの時に人格化したんだと思います。薄暗い部屋はリビングと呼ばれる内界ですが、それができたのは中学1年生の夏頃らしく、ボクが内界に行けるようになるまでに1年というラグがあったからです。
それからボクはリビングでモニターを見ながら莉々と話すようになりました。ヴィヴィさん(当時は司という名前でした)に、人格がいっぱいいることは莉々にも伝えないように言われたので、一人で喋っていました。ヴィヴィさんも結構喋っていたようで、ヴィヴィさんが喋っている時には喋らないようにして、なるべく「みーちゃん」しかいないように心がけました。
これがボクが生まれてから人格化するまでの流れです。
ぜひ続きも読んでください。
【深鳥】
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