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【8,848m】vエベレスティング達成

「エベレストと同じ高さに至るまで、同じ坂道を繰り返し登ろう!」

アホか?誰がこんな馬鹿な真似を始めた?
なぜ持久系スポーツ界隈はこうもイカれたチャレンジが勃興しがちなのか。
認定を行うグローバルなコミュニティ(Hells 500)まであるらしい。しかも達成者にはオプーナ限定ジャージを購入する権利が与えられるとか。まぁそのうちね。血迷った気が向いたらね。

え?
小洒落たジャージ作ってるLe ColとStravaがコラボ?1回のライドで8,848m登ると限定ジャージがタダでもらえる?バーチャル(Zwift)でもOK?要件満たせばエベレスティングも同時申請出来る、、、?

はい。そう言う訳で、無料という誘蛾灯に引き寄せられv(バーチャル)エベレスティングを達成しました。備忘録的に認めておきたいと思います。
この苦痛と後悔を忘れない為に。
10K(10,000m)やリアルでの達成に挑もうなどと馬鹿なことを言い出さない為に。

準備

前日まで

先に要約すると、ガタガタコンディションでエベレスティングなんか挑むと地獄を見るよという話。
以下泣き言です。

長時間漕ぎ続けるのだから、しっかりと疲労を抜き、炭水化物を中心とした適切なエネルギー補充を前日までに行うのが当然。

なのだが、前日に軽い気持ちで参加したショップの練習会が想定外の高強度。1時間に渡りコーナリングの立ち上がりを繰り返すマイクロインターバル。10倍のわんこそば状態。

無限インターバル編

不慣れなパワー域で繰り返されたデスマーチ。更にトドメを刺すように、夜には下半身の筋トレも追加。計画性というものが危ういまでに欠如している。

でも一度決めたからにはやるしかねえ。
買い出しも済ませちゃったし。

食事

前日の夕食はまさかのカレー。近所のインドカレー屋。ここのチーズナンがまた美味いんだわ。普通のナンもおかわりした。これもカーボローディングか?

炭水化物と言えば炭水化物。

当日はチャレンジ中の補給食としてパン類やあんこ系のお菓子を用意。生来の肉体を信じ、固形物メイン。よくエベレスティング後半は固形物が喉を通らないと言われるが、鍛え抜かれた我が消化器には無縁。
実際のところ、用意した5,000kcal分をしっかり平らげた。なんならこれ以外に3食食べてる。

食事はモチベーション

環境

ギアはF50×34T、R11×28T。
本当はリアに34T、せめて30Tが欲しいところだが無いものは無い。
ローラーはSaris H3。

負荷は当然MAX

Zwift画面を正視し続けるなど精神が耐えられないので、アニメや映画、ドラマなどをアマプラで。とにかく思考を自転車から逸らす為、YoutubeはNGとした。勝手にオススメしてくる。

コースはvエベの鉄板、Alpe du Zwiftをチョイス。
9回弱登れば達成できる計算。
最後の1回は、8,848mを達成すれば頂上まで登り切らずとも良いらしい。
ZwiftのマシンはS-Works Aethos+Lightweight Meilenstein。たぶん登坂最速の組み合わせ。

自己ベストは45分くらい

エベレスティング開始

6時起床。朝食におにぎり2つとパンを数個、加えてシリアルとヨーグルト。ボトルはとりあえずBCAA。1本登るごとに600ml飲み干す計算で。
睡眠が浅く、とにかく眠い。案の定脚も重く、ガーミンからは休息日にすることを勧められるがそうも言ってられない。
不安しか感じない膝と腰をテーピングでガチガチに固め、尻にProtect J1を塗りたくる。

心身ともに重い身体に鞭打ち、7時前に登坂開始。
長い長い苦痛の時間が始まる。

1本目

Alpe麓まで軽く流す。FTP以上で踏む予定が無いのでアップは不要なはず。
Alpe突入後も、先は長いので200w(3倍)を目安に。
すんなり1時間04分32秒でクリア。

ただし右膝に違和感。負荷100%だからか、ケイデンスが上がらずひたすらトルクをかけ続ける登り方。普段からハイケイデンスで登りをこなす人間としてはちょっとしんどい。

まだまだ余裕

2本目

慣れてきたのか膝の違和感は薄らぐ。
1本目より楽に感じる。1時間05分35秒。

いけるいける

3本目

右膝の痛みがぶり返す。
パワー的にはまだ余裕。200wを維持。
1時間05分06秒。

既に3,000mUP。実走ならもう帰る。

4本目

なんか急に来た。つらい。
序盤は200wで踏めていたものの、半分を過ぎたあたりからは150w程度が精一杯。膝の痛みもあるが、単純にパワーが出ない。ハンガーノックも疑ったが、ここまで2,000kcalは摂取しているのでそれも無いはず。
純粋に限界だったか?
一気にタイムを落とし、1時間17分06秒。

そもそも4,000mUPしてるんだから当たり前か?

あまりに辛いので一旦大休憩を入れる。
シャワーを浴びて昼食。レギュレーション違反なので寝ないよう横にはならない。床の座り心地に感動すら覚える。

5本目

1時間ほど休み再開。身体がサドルに戻ることを拒むが、続けるしかない。
Protect J1を再度塗りたくる。

休んだのでパワー回復、、、とはならず、ひたすら悶え苦しむ。
エベレスティングは5,000m登ってからが本番と言うが、これはマジ。
とにかくパワーが上がらない。スカスカになった脚を無心で回す。
もうやめたい。
タイムをさらに落とし、1時間36分21秒。

つらい

6本目

脱落者が最も多いと言われる、魔の6,000m台に突入。
虚無。何も考えたくない。
Zwift画面を見てはいけない。心が折れるから。
1時間47分02秒。

くるしい

7本目

6本目を終えた後、Zwiftのタイムラインを見ると日本人が何人か。走行距離を見るに、皆エベレスティング中なのだろう。もう少しだけ頑張ろうと思えた。

そうは言っても脚がついてこない。3倍くらいなら踏もうと思えば踏めるが、先を思ってすぐに挫折してしまう。なんでこんな馬鹿な真似を始めたんだ俺は。

このままでは1本2時間を超えてしまう。そこで7本目の途中から、とりあえず10分だけ200wで頑張り、10分休むことに。休憩の10分間はパワーを気にしない。メリハリを付けて気を紛らわす作戦。

実行してみると案外いける。
10分だけ集中して踏む、という短期目標ができたことで、少なからず精神を持ち直せた。休憩区間は余裕で100wすら下回るけど。
タイムは1時間40分38秒まで回復。

たえられない

8本目

20時を越えようやく終わりが見えてきたと言いたいが、まだ2時間以上かかるのが目に見えている。つらい。
とりあえず先ほどの作戦を継続。経過時間だけを見て無心でオンとオフを繰り返す。残り距離や標高は決して目に入れない。
1時間40分17秒でクリア。

たすけて

9本目

いよいよラスト。最後くらい頑張ろう、なんてことを思う余地すら無い。
全身のありとあらゆる関節が軋む。1秒でも早くこの苦行から解放されたいが、既に10分200wも出ない。あらゆる感情に蓋をして、ただ脚を回すだけ。

中腹でいよいよ8,848mが近づく。
最後くらいはと250w程度で踏むが、1分と保たず撃沈。
そのまま頑張ることもなく、ヌルっと8,848m到達。
エベレスティング達成です。

ようやく、、、

念のためもう少しだけ登り終了。
Stravaのログを確認。
達成感は薄く、ただようやく終わってくれた、という安堵感が大半。

始める前は10Kも考えていたが、時間は既に23時。翌日の仕事を考えると引き際だろうと判断し撤退。生まれて初めて、仕事の存在に感謝した。

振り返り

完走した感想

二度とやりません
記録は16時間06分(休憩込み)。

ペダルを回していた時間だと14時間弱。

ただただ苦行。拷問で使える。
これをリアルで行う人間がいるというのだから凄まじい。なんなら恐ろしいまである。肉体も精神性も常軌を逸している。

下りは降車しても良い、補給も自由、安全確保が不要というバーチャルのメリットがあってもこの苦しみ。実走での達成なんて自分には到底不可能。

バーチャルのデメリットは、ただただ孤独なことくらい。vエベは自宅で静かに限界を迎えるチャレンジ。

良かった点

  • とにかく最後まで固形物を食べられたこと。飽きないし食事自体がモチベーションにもなる。栄養補給だけが目的の流動食では味気ない。

  • Protect J1。良かった点というか物。マジで最強。サドルが擦れることによる、ヒリヒリ系の痛みとは無縁で済んだ。ブルベ勢御用達は伊達じゃない。200km以上走る時はいつも世話になっているが、その働きにかつてない程救われた。

悪かった点

  • そもそも挑戦したこと。コンディショニングや食事も大事だが、小手先の工夫でどうこうなるレベルを超えた過酷さ。自分のレベルで挑むこと自体が愚かな行いだった。

終えてから数日間は脚の重さ、痛みに苦しんだ。ひたすらトルクをかけ続けた為、筋トレに近い状態だったのだと思う。自転車で筋肉痛なんて数年ぶり。
無事にエベレスティング認定、Le Colからもメールが入ったのでジャージも入手できそう。

エベレスティング認定

とはいえ、バーチャルエベレスティングは実走での挑戦と比べればかなりハードルが下がる。さらに、脚力を必須としない。キャノンボールなどいわゆるエピックなチャレンジは他にもあるが、ある程度の脚力が求められる。
vエベは長時間耐える精神力さえあれば、誰でも達成しうるチャレンジと言える。

Zwift環境がある方は、気軽にまずはハーフからでもいかがでしょうか。
やろう!エベレスティング!!

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