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「なんか食べたいものある?」って聞かれてもオムライスしか出てこない

お昼時。もしくは夕飯時。
「さっきの雑貨屋さんめっちゃ好みのセレクトやったわ~、ところでさ、」
ところでさ。

「そろそろご飯食べるか~、なんか食べたいものある?」

きたきたきたきた。
たとえ特に思い当たらなかったとしても、ここで「ない」と答えるべきではない。
かと言って、「何でもいいよ。」もよろしくない。
今から向かうご飯屋さんを決めるべく、駒をひとつ前に進めなければならない。
「麺類がいいな」とか「あっさり系の気分」とか「中華ありかも」とか。
話し合いの火種だけでもつくるのだ。

ところがどっこい。
私の頭に浮かぶのはいつも決まってオムライス。絶対にオムライス。どうしてなのかオムライス。
適当にオムライスと言って、何か提案するという責務を雑に果たしているのではない。
「なんか食べたいものある?」と尋ねられれば、必ずオムライスが食べたい気分になるのだ。
もしくは、私は常にオムライスを食べたい人間なのかもしれない。
奇妙なことに、好きな食べ物三選にオムライスは入っていないのだが。

とにかく、私はいつも「オムライス」と答える。
オムライスが採用されたことは、一度も無い。

「なんか食べたいものある?」
「オムライス。」
「んー。他になんかある?」

ここからは思いつく限りの料理名をひたすら言っていくしかない。
そうして、愛すべき友人の心にヒットするものが出てくるのを待つ。
こうなることは最初から分かっていた。
きたきたきたきた、この状況。
これは単に私がヘタクソなのか。それとも多くがうなずいてくれる話なのか。

こんなことなら適当に食べに行く料理を提案してくれるアプリを開発したい。
でもきっと、それができたとしてもいずれ使わなくなるのだろう。
オムライスを却下され、数少ない知っている料理名を挙げ連ねる。
「あーそれいいかも。」の一言を聞いて、自分もその料理を食べる口になる。
最終的にはついに決まったお店で、
「ここ本当に美味しいわ、来て良かった。また来よう。」
とか言っているのだ。

「なんか食べたいものある?」
この先にある、煩わしくも贅沢な時間が、なんだかんだ好きなような気がしている。

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