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中島みゆきの悪女に思ふ

用事で外出し、用事を済ませた後に入ったラーメン屋で(ベトナムのフォーにするかどうかで迷ったがラーメンにしてしまった)中島みゆきの悪女がかかっていて、歌っているのがみゆきさんではなかった。

あら、カバーされてるのね。
それで、帰り道あいぽんで悪女を検索し元祖みゆき様以外の歌を聴く。そして、この悪女を媚びずにしかし尚且つ哀愁をもって歌い上げるのは結構難しいのだよね。と思ふ。

そして、 ワタクシの十年計画に新たに一つ目標が加わった。
中島みゆきの悪女を媚びずに哀愁を持って歌い上げられる歌手になる!
えっと間違えた。歌手には今更ならないでいいんだった。ちなみに営業職的お仕事についていられてカラオケなんぞで接待するのも厭わない方がいたら、お客様の年代に合わせて昭和歌謡を歌いこなすのは、営業の嗜みである。どうぞレパートリーに悪女も加えてくださいませ。

さて、昨今、ストーリー性の高い歌の歌詞が続々と出て、世を賑わせておりますが、昭和にだってストーリー性の高い名曲はございます。悪女もその一つ。この歌を知らない方も多いと思いますので、下に歌詞を載せましょう。

悪女
作詞作曲 中島みゆき 発売日 1990.05.21

マリコの部屋へ 電話をかけて
男と遊んでる芝居 続けてきたけれど
あのこもわりと 忙しいようで
そうそうつきあわせてもいられない

土曜でなけりゃ 映画も早い
ホテルのロビーもいつまで 居られるわけもない
帰れるあての あなたの部屋も
受話器をはずしたままね 話し中

悪女になるなら月夜はおよしよ
素直になりすぎる
隠しておいた言葉がほろり
こぼれてしまう「行かないで」
悪女になるなら
裸足で夜明けの電車で泣いてから
涙 ぽろぽろ ぽろぽろ
流れて 涸れてから

女のつけぬ コロンを買って
深夜のサ店の鏡で うなじにつけたなら
夜明けを待って 一番電車
凍えて帰れば  わざと捨てゼリフ

涙も捨てて 情けも捨てて
あなたが早く私に 愛想を尽かすまで
あなたの隠す あの娘のもとへ
あなたを早く 渡してしまうまで

(後繰り返し)

この曲を聞いていると、なんか恋愛小説が一本書けてしまえそうな気がしますねぇ。どんな状況なんだろうと色々考えてしまう。そして、昭和な髪型で化粧で、服を着た若者たちが出てきて、勝手に映画のワンシーンのようなものを薄ぼんやりと繰り広げているのですが、それはおいといて。

男の人って、いま付き合っている人と、新しく好きな女の人ができた場合に、今の人になかなかそれを言い出せない人が多いですよねぇ。マッチ棒のように女を振る人、えっと、今じゃ、マッチ棒と言ってもだめかな?まぁ、マッチ棒のように振る人もいるのでしょうけど、実際は、

ぐずぐずぐずぐず、悩んでいる人を何人も見たことがあります。

第三者の立場としてそれを、今の女の人も新しい女の人も同席しない場で聞くようなこともあるのですが、女は意外と残酷な一面を持ってますので、

「そんなん、優しく振る方法なんてないっしょ」
「でも」
「ズバッと、スパッと、いっちゃったほうが後々、相手もすっきりさっぱり忘れられるんだからいいんだって」
「でもー」

私が、非常に実用的な女性の振り方を伝授しても、そして、女は遭難しても男より長生きするし、子供産んでもピンピンしてるし、あなたが思っているより強いのよと諭しても、男の「でもー」はつづく。

何度も、実用的な女性の振り方が、提案してもボツにされ続けた経緯のうちに、悟ったことがある。曰く、長く付き合った女との別れというのは、男の浪漫なのである。

ここ、女子、マーカー引くように
男とは女との別れに浪漫を求めるものである。

しかし、どこぞの予備校での授業のようにマーカーを引けといってみたが、ほとんどの女子が教科書を机の上に置いたまま、腕組みをして、講師をしている私を睨みつつ、マーカーを引かないであろう。

え、こほん、では、男子に言いませう

女は終わりかけている恋に用はない生き物である
ここ、男子、マーカー引くように、つうか、そこのページを破って飲み込んどきなさい!!

チーン

あ、すみません。つい、私的感情でちょっとリキが入っちゃいましたが、あの、別れ際のどっちつかない態度はですね。もう少し頑張ったらいけるんじゃないかと思っちゃうので、はっきりいって迷惑です。

OKならOK、だめならだめで、
はっきりスパーンと言ってこいや!!!
包丁でズバーンと、魚の頭落とすくらいの勢いでさ!
女は、男と女の別れ際ではむしろ、血を見たい生き物なのである。
えっと、全員が全員ではないけれど、こういう人が多いと思う。

最後に結局別れるなら、優しさなんていらねー!
魚の頭、落としてこいやー!!!
つうか、それ、優しさじゃねえから!

……え、すみません。過去の色々がフラッシュバックして、なんか激しくなってしまいましたけど、冷静にいきましょうね。

しかし、私が今まで自分の経験と周囲を観察してきた限りでは、男は男女の別れに浪漫を求め、女子は、別れるなら別にどんな状況でもたいして 差はなくね?と思っている人が多い。100歩譲って、別れちゃったけど大人同士としていい友達でいたいねという人はいると思う。でも、昭和歌謡のような 浪漫を求めるのは男子だけだと思う。つまりは女子は別れの場面を大事な思い出とはしないと思うのよね。

男にとっていい仲になった女というのはたとえ別れたとしても自分の所有物なわけ、棚に入れたトロフィーです。だから、別れの場面は哀愁のこもった物でなくてはならないし、そのトロフィーは時間が経っても時々取り出して眺めるよ。

そして、男の人は女の人もきっとそういうことをしていると思っているかもしれないけど、そんなトロフィーは粗大ゴミの日にさっさと捨てたほうがいいと思うし、捨てられなくてそれをとっている女の友人がいたら

「運気が上がらないから捨てたほうがいいよ」
「あっ」

捨てることをお勧めしながら、全国を行脚しております。

そんなことを思いながら昭和歌謡を眺めてみると、男目線から語られた理想の女性が出てくる曲がいくつもある。悪女なんて、最高の出来だと思います。私はこの文脈からみると、この歌の中の彼はまだあの娘に手を出してないのではないかなと思ってるのですが。

女ってさ、相手の男を心底愛してしまうと、その彼が好きなタイプの女の人がぱっと見て分かっちゃう物だし、下手すると、本人が惹かれていると気づく前に気づいちゃうんだよねぇ。

惹かれ合うとか、好き合うとか、あるいは一緒にいてうまくいくというのは、努力でどうにかできる物ではないので、好きだから付き合い始めたのだけど、どうしても合わない部分があって昔ほどいい関係でいられない。いわば傷つけあっているけど別れられないような時期に、相手に自分よりも合いそうな人が現れたら、どうする?

優しすぎて自分を切れない男のために、男物のコロンつけて、朝帰りするか?

この架空の女の子の健気さに泣いちゃうんだよねぇ。クー!
(私はかなり涙腺の緩い人間です)

私は上述の通り、最後に別れるなら魚の頭をぶった斬るようにズバッと言ってこいやなどという乱暴な人間なので、逆立ちしてもこの悪女の彼女のようなことはできません。

表では強がって、自分が悪者になって相手の未練を断ち切り、彼があの娘とうまくいって何年か後に、彼女が悪女を演じていたという事実を知れば、未来のどこにもつながらない愛しさが掻き立てられると思うけど。いわば、それが愛の余韻で、男の人はこういうものをコレクトするのが好きなコレクターなのだよね。

愛の余韻なんていらねえけどな。
私は別れると決まったら、相手が

「そんなもの持ってたんですか?」

というようなあの、リボルバー?回転銃を突然持ち出して、全て破壊し、

私のことはもう2度と哀愁を持って思い出さないこと

という契約書に、親指ではんこ押してもらって去ります。
……

すみません。これは流石に言い過ぎですが、壊れてしまったものに興味はありません。とはいえ、なかなかズバッと魚の頭を落とすようには落とせなかったことがあり、長く尾を引く苦しみを味わったこともありますし、昔のことを全く何も思い出さないかといえばそうでもない。

ただちょっとそのノスタルジーは、男と女で違うようです。

2024.08.25
汪海妹










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