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怪獣の十戒

1:何かを破壊する存在でなくてはならない
2:巨大でなければならない
3:言葉が通じることがあっても、自ら言葉を簡単に発してはいけない
4:人間とは別の形態であるること
5:倒せる手段がなくてはならない
6:人間によって簡単に征服されてはいけない
7:超常的であること
8:意味のある形態であること
9:太ましいこと
10:新しいこと

 そもそも怪獣とそうでないものは何が違うか。
 いわゆる東宝怪獣とかウルトラ怪獣などの伝統的な怪獣をそうと言うならではそうでない巨大生物はそうではないのだろうか。
 モンスターバースシリーズのオリジナルのモンスターはどうも怪獣というにはどこかその根拠に弱々しいものを感じてしまう。
 モンスターハンターシリーズに出てくる超大型モンスターのような、確かに怪獣的ではあるがやはり”クリーチャー”といった方がしっくりくるような感覚である。

 思うに、伝統的(?)な特撮に出てくる巨大生物という意味での怪獣の、その意味は拡散され、希釈され、さまざまな再解釈をされている。そして怪獣らしくない”怪獣”と称する何かが生まれるのではないだろうか。
 ここでわざわざ書くのはそうしたわたくし個人がどう思っているかの再確認と、備忘のためである。
 だから時々これを見にきて、こっそり書き直すことがあるかもしれない。

※上にあげた十戒はあくまでも「わたくし個人」が考える怪獣の定義である。十個したことについては特に説明はしない。
 だからこれまでも、これからも、誰かが描いた”怪獣”にわざわざその人のところまでに行ってケチをつけようとは思わないし、するつもりもない。

※あと全てを守らなければいけないという類のものでもない。そういいった意味だとむしろロボット三原則に近いものである。
 そのため、もしそれぞれの十戒から外れている怪獣がいたとしたらそれを”例外”として追記する。


1:何かを破壊する存在でなければならない

 怪獣が破壊するものは何もビルや戦車だけでない。自然、社会、システム、法則、生態系、、、。
 怪獣は破壊という手段を用いてアンチテーゼを提示することこそが目的であり存在意義である。
 ”破壊”という手段が大事なのだ。怪獣は、その内部に秘めた恐ろしさ、破壊衝動、暴力性ゆえにそれ以外の手段を持ち得ないのだ。

例外:ガメラ
 初期以降、守護者としてのキャラクターを持ち合わせているために自ら積極的に破壊をすることはない。

2:巨大でなければならない

 破壊するためにはそれに見合った大きい力が必要である。そして大きい力を持つものは、それに見合った大きさでなくてはならない。
 また大きさという要素は、見るものを圧倒し、それだけで己の無力さを理解させる。見下ろされるものは、見下ろすものに畏怖する。
 最低限の大きさで言えば、せめて恐竜以上でなくてはならない。
 怪獣は怖いだけではいけない。巨大な質量による圧倒感が必要である。 

例外:なし
 のちに成長するか巨大化する怪獣は多いが、小さい時点ではあくまでも害獣、怪人の域を出ない。怪獣という言葉はゆらぎを許容するが、大きさというのは数少ない条件のうちの一つであると考える。

3:簡単にコミュニケーションができてはいけない

  怪獣はたとえ、図解としてその中身が曝け出されようとしても、生態が解明されようとも、そもそもが正体不明、意思疎通ができない野性そのものなのだ。
 だから高度な知能を持っていたとしてもその行動原理や思考は簡単に人間が理解できるものではない。
 コミュニケーションを取るためには、一定の手続きを得てからではなくてはいけない。(例えばテレパシーを持っているとか、巫女的な能力を持っているとか、特殊なアイテムを持っているとか。)

4:人間とは別の形態であるること

 巨人、と怪獣はあくまで別物だと考える。巨人はあくまでも人間の延長の存在であり、獣性の最たる象徴である怪獣とはニュアンスを異とする。
 怪獣は文字の通り”獣”であり、人間とは完全に切り分けて離されるべきである。巨大な生き物でも人型であればそれはあくまで、巨大な宇宙人だったり変異した人間としてカテゴライズされるべきであると考える。

例外:サンダ、ガイラ
 前作の「フランケンシュタイン対地底怪獣」のフランケンシュタインはあくまで大きくなった人間の域を出ていなかったが、この二体からは人間らしさはすっかりなくなっていた。「怪獣」という、究極の野生の戦いがこの映画で繰り広げられていた。

5:なんらかの特殊能力を持っていること

 ただ大きいだけじゃなく、何か特殊な能力を持ち合わせているとなお良い。火を吹く、冷凍光線を放つ。何かしらの武器を持ち合わせていることで単に巨大な獣と区別される。「怪」しさと構成する部分、神秘性を持ち合わせていることで「獣」だけではない、怪獣となるのである。

6:人間によって簡単に征服されてはいけない

 簡単に倒せないのが怪獣である。
 砲弾にびくともせず、ミサイルを撃ち込まれていても叩き落とすか、着弾しても煙の中から平然と現れる。
 何らかの方法で一旦操ろうとしても、暴走してコントロールが外れる。
 怪獣は既存の科学力や兵力を超えた存在であり、人間の浅ましさを露呈させる。

例外:ガイガン、メカゴジラ、ゼットンなど
 侵略者、悪役が手段としてこれらの怪獣を使役する。それでも怪獣の威厳を失わないのは怪獣の第一条件である「破壊する存在」と、彼らの目的が一致するからである。

7:倒せる手段がなくてはならない

 怪獣には何らかの弱点を備えているものだ。
 また完全に倒せなくても科学的方法、からめ手でも活動を封じることができるべきである。
 倒せない怪獣はもはやそれは怪獣ではなく”神”とか”超越的存在”になってしまう。怪獣は神がかっていてもあくまでも”生物”(もしくは無機物でも)に属する存在である。

8:意味のある形態であること

 怪獣の形状には何らかの意味があるべきである。角や牙、爪や突起、発光器官や特異なシルエットは単なる装飾ではない。奇をてらっただけでない何かしらの由来があり、機能を持ち合わせているべきである。  

9:人間を積極的に食べないこと

 怪獣は人類に憎悪を抱いていても、人間個人には無関心であるべきである。怪獣か化け物(クリーチャー)の違いはまさにそこにある。怪獣は小さなものを気にかけない。より大きなものを壊す存在なのである。
 これは絶対の条件でない、が、人間を食べるからには食欲や殺害衝動以外に何かしらの動機、そして効果を期待したいところである。

10:新しいこと

 怪獣は常に新しい存在である。既存の概念を破壊し、常に新しいテーゼを提示する。
 怪獣は古より来たり、そして新しきとして我々の目の前に現れる。

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