先日のこと「ヘドラ」

 友人に「ゴジラ対ヘドラ」を見せたときの話。

 先日、同居人が、月に一度ほど地元から泊りがけで都内にやってくる母親に会いに家を出ていった。
 大抵、同居人は母親と何処かで一泊するので、暇になった俺はいつも実家に帰るか、友人と遊ぶことにしている。 
 今回の場合は、友人が来てくれるとのことだったので、特に何も用意しなかったが、午前のうちに用事を済ませてしまい、あたりで一番うまいラーメン屋がやっているか調べた。
 そして正午に友人がやってきて、ラーメンを食べたあとで家に行き、のんべんだらりと過ごしていた。
 夕飯は近くの中華料理屋で簡単に済ませ、その後で銭湯に行ったあと、時間は22:30ほどになっていた。
 寝るには少し早いが、かと言って長い映画を見るほど時間はない。
 リモコン片手にあーでもないこーでもないと言っているうちに、ちょうど「ゴジラ対ヘドラ」があったので、いつも俺が見たいものばかりを再生してしまう少しの申し訳無さとともにえいやっと、再生ボタンを押す。
 (友人としては特にこれが見たい!というものはなかったので別にうしろめたさなんて本当はなかったはずだ)
 サイケデリックな演出、文字通り泥臭いまでの怪獣の死闘、勢いだけしかない若者に、後手後手な自衛隊、そして一周して演技に味のある少年。
 そのどれもが友人にとって新鮮な映像だったらしい。最初の心配はよそに思いの外楽しんでいたようだ、ったが彼は半分見たところでうつらうつらとし始めてしまって、残り半分を夢と現実の間を彷徨っていた。

 翌朝、すっきりとした顔をした友人は自分が見た夢について話ていた。
 「ゴジラが後ろ向きで空を飛んでる夢を見たんだけどまさかゴジラに限ってそんなとんでも展開はないよな。」

 彼が「シン・ゴジラ」や「ゴジラ−1.0」のゴジラしか知らないままの方がそれはそれで面白いのかもしれない。
 だからおれは「なわけねえじゃん」と嘘をついた。

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