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第2章【物質量・化学量論】

●化学では物質量はモルを単位としてはかります。今日では当たり前のようですが、原子説の提唱以来、歴史的な経緯が複雑にからみあって原子・分子の実在については20世紀初頭までその正否をめぐる議論が続いていました。重要な法則や人名はこの際、復習をかねて覚えましょう。科学史は正しい道筋に沿って学習を行うための素養であり、文化的教養でもあります。
●アボガドロ数の測定は単分子膜の方法が定番であり、入試にも頻出ですが、それ以外にもいろいろなものが考案されていますので、物理の考え方も援用して理解しておきましょう。
●化学式や化学反応式から反応物や生成物を定量したり、逆に実験値からもとの化学式やその反応式を定めたりすることを化学量論といいます。とくに難しいものではありませんが、最近は無機化学で不定比化合物なども散見され、化合物の多様化が進んでいます。

それでは問題を6問。適宜、電卓や定数表を使って下さい。

【問題1】

次の問に答えよ。
①倍数比例の法則について例を挙げながら説明せよ。
⓶標準状態の理想気体1モルを含む立方体の一辺は何cmか。
③水素原子のイオン化エネルギーは13.6 eVである。kcal/molに換算せよ。
④光子1モルのエネルギーを1アインシュタインという。500 nmの光を1.4 kW/m²の強度で受光面積1 m²のパネルに1時間照射した。受光で得たエネルギーをアインシュタイン単位で求めよ。
⑤ウランの酸化物にはUO₂, UO₃, U₂O₅, U₃O₈, U₅O₁₃などが知られており、ウランの形式的な酸化数は+5よりわずかに大きいものが多い。ウランの数が13のとき、酸素の数を帰納的に予想せよ。

【問題2】

単分子膜の実験によってアボガドロ数を求めたい。ステアリン酸w gをヘキサンV mLに溶かし、直径がd cmである円型の水槽に張った水面に滴下していくと、ステアリン酸が水面いっぱいに単分子膜を作るまでに体積v mLを要した。ステアリン酸の分子量をM, 分子一個の断面積をs cm²とするとアボガドロ数を求める式はどのように表されるか。

【問題3】

次の文章の空欄に適切な語句・人名・数値または式を記せ。①, ⓶は人名である。
19世紀ヨーロッパにおいて原子説をはじめて提唱したのはイギリスの化学者( ① )であるが、この時代には元素は不変不滅の要素と考えられていたので、( ⓶ )が提唱した質量保存の法則が原子説を支持する大きな根拠となった。原子説の傍証にさらなる重要な役割を果たしたのは化合物の元素質量比に関してプルーストが見出した( ③ )の法則と( ① )が見出した( ④ )の法則である。( ① )は多才な科学者であり、気体の体積の膨張率が1℃あたり( ⑤ )であることをゲイ・リュサックやシャルルとは独立に導いた。ゲイ・リュサックは、気体の反応前後での体積が同温同圧で整数比に従うという( ⑥ )の法則でも知られる。質量保存の法則は今日的な意味では厳密には正しくない。放射性崩壊によって核種の変換が起こりえるし、20世紀にはアインシュタインによる( ⑦ )理論によって質量とエネルギーが互いに変換することが証明されている。物質からエネルギーが放出される際に質量が減少する現象をとくに( ⑧ )といい、一般に物質の集合体の質量はもとの質量より小さくなる。( ⑦ )理論では運動の状態によっても質量が変わり、高速の粒子は重くなるため、とくに速さがゼロでの質量を( ⑨ )という。電子と陽子の( ⑨ )の比はおよそ1:( ⑩ )であり、原子核は電子より圧倒的に重い。

【問題4】

ある金属酸化物W₁ gを水素で還元するとW₂ gの金属が単体として得られた。この金属をすべて強塩酸に溶かすとどれだけの体積の水素が発生するか。ただし、各反応は定量的に進むものとし、金属イオンの価数は金属酸化物と塩酸中で共通とする。気圧と気温はそれぞれP Pa, T K, 気体定数はR J/(K・mol)とせよ。

【問題5】

アボガドロ数の測定法として適切でないものはどれか。
①ブラウン運動の軌跡の解析 
⓶電気素量とファラデー定数の測定 
③結晶学的密度の測定 
④コンプトン散乱における波長変化の測定
⑤α崩壊の計数とヘリウムガスの定量

【問題6】

ある元素Aの原子量を求めるため、Aを別の元素Bと様々な比率で化合させ、それらの化合物の分子量を求めた。これらの分子量のうちAに相当する部分を集めてその最大公約数をとればAの原子量が得られる可能性があることを示せ。また、この方法の限界についても考えよ。

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