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第10章【酸と塩基】

●酸と塩基は化学反応の理論としてきわめて重要なものです。高校化学で習う酸・塩基の定義は古典的なものですが、平衡論に基づいて無機・有機を問わず適用できます。
●pHの計算はしばしば化学の専門家にとっても難しいもので、各問題に応じた近似法を自在に適用できるかどうかが解法の鍵になります。この種の計算にはある程度の慣れが必要で、さまざまな技巧も知られています。平衡計算は現在では数値計算ソフト等を使って解くこともできますので、厳密解に興味がある方にはパソコンでの計算をおすすめします。
●中和滴定は単純ながら意外に奥が深く、分析化学の基礎となるものですので、いろいろなパターンに習熟しておきましょう。

それでは問題です。

【問題1】

次の問に答えよ。

①0.10 mol/L 酢酸水溶液のpHを求めよ。酢酸の酸解離定数は1.8×10⁻⁵ mol/Lである。

⓶0.10 mol/L 酢酸ナトリウム水溶液のpHを求めよ。酢酸の酸解離定数は同上とする。

③1.00×10⁻⁸ mol/L NaOH 水溶液のpHを求めよ。

④多塩基酸の解離定数が後段になるほど小さくなるのはなぜか考察せよ。

⑤緩衝作用の原理について述べよ。

【問題2】

次の化合物を酸性度(酸解離定数)が高い順に並べよ。

①酢酸、フェノール、炭酸
⓶酢酸、フルオロ酢酸、クロロ酢酸
③炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム
④p-ニトロ安息香酸、安息香酸、p-メトキシ安息香酸、p-メチル安息香酸
⑤水、メタノール、アンモニア

【問題3】

0.50 mol/L の酢酸と0.10 mol/L のギ酸を含む水溶液のpHを求めよ。酢酸とギ酸の酸解離定数はそれぞれ1.8×10⁻⁵ mol/L、1.8×10⁻⁴ mol/Lである。

【問題4】

(a) 0.20 mol/Lの アンモニアと0.20 mol/Lの塩化アンモニウムを含む水溶液100 mLに0.10 mol/L塩酸水溶液10.0 mLを加えたのちの水溶液のpHを求めよ。アンモニアの塩基解離定数は1.8×10⁻⁵ mol/Lである。

(b) 0.10 mol/L酢酸アンモニウム水溶液のpHを求めよ。酢酸の酸解離定数、アンモニアの塩基解離定数はともに1.8×10⁻⁵ mol/Lである。

【問題5】

(a) 弱酸HAを強塩基MOHで中和滴定することを考える。滴定の任意の段階における酸の濃度を[HA]₀, 生成した弱酸の塩の濃度(加えた塩基の濃度)を[MA]₀とし、酸の解離定数を Ka, 水のイオン積をKwとして、水素イオン濃度[H⁺]を求める三次方程式を求めよ。

(b) 滴定前におけるpHの近似式を求めよ。

(c) 加えた塩基が当量点のほぼ半分であるとき、pHの近似式を求めよ。

(d) 当量点におけるpHの近似式を求めよ。

(e) 当量点以後のpHの近似式について考察せよ。

【問題6】

0.10 mol/L炭酸ナトリウム水溶液10.00 mLを0.10 mol/L塩酸で滴定することを考える。炭酸(※)の第一電離定数、第二電離定数をそれぞれ7.4×10⁻⁷ mol/L, 1.2×10⁻¹⁰ mol/Lとして次の問に答えよ。

(a) 滴定前のpHを求めよ。

(b) 第二当量点での滴下体積は第一当量点における滴下体積の何倍か。

(c) 第一当量点でのpHを求めよ。

(d) 第二当量点でのpHを求めよ。

(e) 炭酸ナトリウムに少量の炭酸水素ナトリウムが不純物として含まれていた場合、中和完了までの滴定量はどのように変化するか。

※炭酸とはCO₂とH₂CO₃の混合水溶液であるとして差し支えない。

解答・解説は有料にて公開しております。

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