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54才。

 今、54才です。
 0~9才は幸せだったと思う。そして、10代をあがき、20代をあがき、30代をあがき、40代をあがき、今に至る。
 10代前半はいじめに遭ったり、不登校だったり。
 10代後半は大学を目指して、独学し始めたり。
 20代は生きる意味が分からなくなり、でも、かけがえのない友達にであって生きようと思い、そこから今日までずっと夢見がちだ。
 30代前半は結婚、育児を楽しみ、後半はミドル・クライシスの大波が訪れた。自分の社会的価値に疑問を感じ、もがく。うつ病発症は34才、今も通院は続く。
 40代は低空飛行を心がける。エネルギッシュな自分がこよなく好きなだけに、セーブするのは難しい課題だった。

 今の趣味は数学と哲学の研究・勉強、そして分野に隙のない読書だ。このことについて話せる友達は身近にはいない。けれども最近、二人の娘がそれぞれオススメの本を聞いてくれ、その本を実際に手に取って色々と感想を聞かせてくれるので報われた思いがする。もっとも数学の本は読みたがらないが。
 しかし、拾う神もいた。職場のちょっと遠い関係の後輩だ。駅で数学書を読む僕を見つけて、数学が好きなことを打ち明けてくれた。ABC予想とか話せて嬉しい。
 忘れられない思い出がある。昔、地域のボランティアで偶然、おうちを訪ねた寡黙な10代の男の子が安部公房の『砂の女』が愛読書と聞いて、不覚にも感激した。あんな不条理な小説を愛読書にするなんて、彼への興味は尽きなかった。当然、話しは盛り上がった。
 
 残りの人生を考える年頃だ。54才だもの。僕の場合、仕事の定年を待つことはない。家計的には、かなり計画的に生きてきた。だから、次の段階に進むことに真剣だ。
 仕事でない部分で、対人援助を求められるのならば、力は惜しまないと決めている。僕のロールモデルは、ポーランドの偉人、ヤヌシュ・コルチャクだ。孤児院を営んだ小児科医で、ユダヤ人の子ども達とともにガス室で死んでいった。
 生き方としてコルチャクだ。そして、今は断片しか分からないが、子供の権利条約の精神的支柱ともなった思想の全貌を深めたい。自分のものにしたい。そのためにポーランド語を学んでだいぶたつ。英語よりも使えないのが悔しいが、全集を始め、できる限りの文献を集めている。日本国内の研究者の方と議論するための知的基盤を作りたい。
 54才。間に合うだろうか。
  思想を深めるだけではダメだろう。子供が生きるに値する社会をつくれるか。そんな自分かどうか。今は落第だな。でも、頑張る。毎日、爪痕は残す。

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