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【詩】過去の香り

記憶の中からとりこぼれてきた

ただれた膿を流す、鮮やかな塊

歯型を刻んだまま
忘れられたのは
わたしなのか

たわむれにほおばり
もてあまして捨てたのは
自分だったのか

午後の陽射しに
倦んだわたしは

忘れられ
捨てられたものたちを
窓辺に置き

薄い皮膜に閉じられた
崩れゆく香気を解き放つ


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