聴いた本『海と毒薬』

遠藤周作の『海と毒薬』を聴き終わった。ちょっとずつ、ちょっとずつ聴いた。三日坊主の私は、「ちょっとずつ」が苦手なはずだった。けれど、Audibleで「聴く読書」はなんだか新鮮で癖になり、憧れでありながらやる気が起きなかった「再読」も達成できてしまった。「1回目よりも作品味わう」という漠然とした目標(そもそも作品を「味わう」とはどうすることなのか、私はまだよくわかっていない)を達成できたかは怪しいけれど、読んだつもりになって実際はほとんど覚えていなかった内容をもう一度振り返れたり、タイトルの「海と毒薬」って何だろう、と考えながら聴けたりしたのは、いい体験だったと思う。

今回聴いてみて、それぞれの登場人物の考え方が区別されているようでありながら、「どうでもいい」という思考が勝呂にも戸田にも上田看護婦にもあるのが印象的だった。そういうふうに、その時代の空気に飲み込まれ、流されていかざるをえない感じが、「海」の表しているものの1つの部分なのかなと思った。

次は『流浪の月』を聴くつもりだ。『流浪の月』も、「重かった」という極度に雑な感想が残っているだけになってしまっているから(もったいない)、また少しずつ、じっくり聴いていこうと思う。『海と毒薬』は男性による朗読だったが、『流浪の月』は女性の朗読なので、雰囲気もまた変わりそうだ。

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