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(SF小説)『荒野.jp』第2話 襲撃

 前と後ろから迫り来る合計10個の赤い点の正体が判明した。やはりドクロ組のホバー・カーだ。
 それぞれ2人ずつ乗っており、1人が運転を、もう1人がジャベリンを構えている。
 いくらなんでもこれだけの数のジャベリンを撃たれたら、さすがにこのホバー・タンクもエタりそうだ。
 俺は砲塔を前方から来る5台のホバー・カーに向けた。
「前から来る5台をしとめる」
 俺がそう宣言すると、レノがキャハッと笑った。
「いいねアラタ。やっちゃって」
 アラタってのは俺の名前だ。死んだ両親が『新たな時代を切り開く人間になってほしい』との思いをこめてつけたんだよね。
 でもまさか、新時代がこんな悲惨な世界になるなんて考えもしなかったろうな。
 親父もお袋も核戦争後も生き残ったけど、結局2人共死んじまった。無理ないけどさ。
 戦車の中ではずっとハードロックが大音量で流れている。
 俺は、狙いをつけて主砲を撃つ。衝撃と爆音と共に砲弾が飛び、迫り来るホバー・カーの上に落下した。
 前方から来る5台のうち1台に直撃して炎上する。前と後ろから一斉にジャベリンが飛んできた。
 レノが機転をきかせてホバー・ノズルを左に吹かす。ホバー・タンクは右へ移動。後方から撃たれたうちの1発がホバー・タンクの上に屋根のように突き出た装甲の上にぶち当たった。
 恐ろしい地震のような衝撃が走ったが、何とか無事だ。少なくとも、日本が核攻撃を受けた時はこんなもんじゃなかったし。
 俺は砲台の上のハッチを開けて上半身だけ外に出すと、砲台上部に固定されたマシンガンを構え、銃口をジャベリン野郎共に向けた。
 引き金を引くと銃口から連続的に弾丸が飛びだして、前方から来るホバー・カーの1台に当たって爆発する。
 そして今度は脳波で砲台を操作して、後方に向けた。そして後ろから来た5台のホバー・カーにマシンガンの銃弾をぶちこんだ。
 そのうち1人の運転手の顔に弾丸が当たった。ハンドルの手元が狂い、そのホバー・カーは隣を一緒に飛んでいた仲間のホバー・カーに当たり、2台共衝突して爆音をあげる。他の3台は巻き込まれないように散開する。
 ホバー・タンクは急速に右へ飛行していたので後方の3台は左前方の位置に、前方の4台プラス最初に撃ちもらした1台は、右前方に移動していた。
 俺は脳波で砲台を今度は右へ回転させ、主砲を撃つ。砲弾が飛び、右前方の5台のうち1台が四散する。
 爆発した時破片が他の1台にぶちあたり、その1台も炎をあげた。これで右前方は3台に、左も同数になったのだ。
 その6台が一斉にミサイルを撃ってくる。俺は機関銃を接近してくるそいつらに向かい撃ちまくる。
 ジャベリンのうち1発が派手に爆発した。俺の乗ったホバー・タンクはレノの機転で後方に移動しながらさらなる高みに浮上する。
 そしてミサイルよけの熱を発する小型弾をタンクの脇から発射した。ジャベリンは騙されて小型弾の方を追い、俺達の愛車は攻撃を回避する。
 ホバー・カーが左右から接近してきた。俺は機関銃を右から左へ撃ちまくる。右の2台と左の1台が爆音をあげた。
 さすがに戦意がなくなったらしく、残りの3機は回避行動を取り始める。一瞬奴らを撃とうとしたが、弾丸が無駄なのでやめにした。
 敗北者は逃げるままに任せて、墜落したホバー・カーから武器や燃料を奪う事にする。
 ジャベリンやマシンガン、手榴弾や食料、水等、色々調達できたのだ。そしてその場を離れ、なるべく西に向かって飛行を開始した。
 どこに行くかのあてはない。その時だった。突然猛烈な苦痛が俺を襲う。全身から汗がふきだした。
「大丈夫? アラタ! しっかりして」
 心配そうにレノが俺を、呼ぶ。

(SF小説)『荒野.jp』第3話 西を目指して|空川億里@SF、ミステリ、ショートショート (note.com)

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