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合コンに現れた五つ子の女子

梅雨の晴れ間が広がるある日、大学サークルの友人たちと計画した合コンが開かれることになった。場所はいつもの居酒屋「幸せの道」。今回の合コンには、なんと「五つ子の女子」が参加するという話を耳にした瞬間、心臓が跳ね上がった。

合コン当日、緊張と期待が入り混じる中、居酒屋の個室に足を踏み入れる。仲間たちも同じく緊張の面持ちで、席に着くと一斉にビールを注文し、乾杯の準備を始めた。そこに、ドアが開き、五人の女性が現れた。まるでアイドルグループが登場するかのような華やかさで、僕たちは一瞬、時間が止まったかのように感じた。

五つ子の名前は、葵(あおい)、茜(あかね)、翠(みどり)、菫(すみれ)、そして桃(もも)。見た目はそっくりだが、それぞれの個性がきらめいていた。葵は少しおっとりした雰囲気で、茜は活発でお喋り、翠は知的でクール、菫はおしとやかで優雅、そして桃は明るくて元気いっぱいだ。

乾杯が終わると、それぞれの自己紹介が始まった。五つ子の話題は尽きることがなく、彼女たちの息の合った掛け合いに、僕たちは笑いが止まらなかった。そんな中、ふと葵が尋ねた。「合コンに五つ子が来ると聞いたとき、どんな反応だった?」

「驚いたよ!まさか本当に五つ子が来るなんて思わなかったからさ」と、友人の一人が答えた。皆で大笑いしながら、会話はどんどん弾んでいった。

それぞれの個性が光る中、僕は気がつけば葵に心惹かれていた。おっとりしているが、芯の強さを感じさせる彼女に、自然と視線が向かう。葵も僕の視線に気づいたのか、にっこりと微笑み返してくれた。

「葵さん、何か趣味とかあるの?」と、思い切って尋ねてみると、彼女は少し照れくさそうに答えた。「実は、料理が好きで、最近はパン作りにハマってるの」

「へえ、すごいね。僕もパンが大好きなんだ!今度、一緒に作ってみたいな」

その一言に、周りの友人たちが一斉に歓声を上げた。「おいおい、早速デートの約束か?」「パン作りデート、いいね!」と、茶化されながらも、僕と葵の間にほんのりとした温かい空気が流れた。

一方で、茜は積極的に話を盛り上げ、皆を笑わせる。翠は時折鋭いツッコミを入れ、菫は優しい言葉でフォローする。そして桃は、いつも明るい笑顔で場を和ませていた。五つ子の絶妙なコンビネーションに、僕たちはすっかり虜になっていた。

合コンも終盤に差し掛かり、連絡先の交換タイムがやってきた。ドキドキしながらも、僕は葵に話しかけた。「今日は楽しかったよ。よかったら、また会って話したいな」

葵は少し頬を染めながら、スマホを差し出してきた。「もちろん。私も楽しかった。また会えるのを楽しみにしてるね」

その後、五つ子たちは「またね!」と手を振りながら去っていった。僕たち男子メンバーは、彼女たちの姿が見えなくなるまで手を振り続けていた。

帰り道、友人たちと一緒に居酒屋を後にしながら、今日の出来事を振り返った。五つ子の女子たちとの合コンは、間違いなく最高の思い出になった。スマホに葵からメッセージが届いた。「楽しかったね!また会おうね。」。僕はすぐに日程を調整しようと返信した。

その夜、僕は布団に入って再び五つ子のことを考えていた。すると、ふと疑問が浮かんだ。「そういえば、五つ子の誰と連絡先を交換したっけ?」。

僕はスマホのメッセージを見直し、顔から血の気が引いた。送信者名には「茜」と書かれていた。さらにスクロールすると、他の友人たちも同じメッセージを受け取っていた。そして送信者名は「翠」、「菫」、「桃」、そして「葵」。

結局、僕たちは五つ子全員から同じメッセージを受け取っていたのだ。「次の日程を調整しようね」。僕は笑いを堪えながら、友人たちにメッセージを送った。「次の合コン、全員で参加するのがベストだな」。

そして、僕たちは五つ子全員に会うために、再び合コンを計画することになったのだった。

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