母は話を聞いてくれない
私の母は、とてもおしゃべり。
ドラマの話、ニュースの話、母の昔話、色々話す。
母と私の話は盛り上がってるように見えるけど、全然そんなことない。母が一方的に話しているだけだもの。
母は会話泥棒。
たとえば私が「この映画気になってて〜」みたいに話題を出すと、母は「あ、それテレビでやってた。あの女優さんのインタビューやってて、ぐだぐだぐだ…」以下、めちゃくちゃ長い母のトークショーが始まる。
私的には「今度観に行こうと思ってるんだけど行ってきていい?」と伝えるために話題を出したんだけど、一回母にマイクが渡るとしばらく戻ってこない。
私は白目剥きながら、母の気が済むのを待つしかないのだ。
これが普通の日常会話ならまだいいんだけど、
悩み事の相談をしたいときなんかは困る。
以前、就活について悩んでいるとき、何気なく母に相談をした。
そしたら母は「ふーん」と言って、二言目には自分の就活の苦労話にすり替えた。
「私のときなんか女の就職先なんかなかった。今は好きなところ自由に受けられていいよね。」
「私は受けても全部落とされて、結局親戚のおじさんのコネで入社した。」
「あなたもおじさんに紹介してもらえるように、おじさんにもっと愛想良くしといたほうがいいんじゃない?笑」
そうじゃなくて。
私は、大変だよねって、今の私の気持ちに寄り添って欲しかったの。じゃあどうしようか、あなたはどうしたいの?って気持ちの整理を手伝って欲しかったの。
母の体験談なんか聞いてない。
母は体験談を話すことで、私の就活に役立つだろうって気持ちで話してくれてたのかもしれない。
確かにそれは助かるんだけど、なんか母が体験談を話すのは意味合いが違うんだよ…
「私はこの体験からこういうことを学んだから、あなたの就活にはこういう活かし方ができるよ」
じゃなくて、
「私は当時こんなに辛かったの。こんなに大変だったの。あなたはいいよね。今の時代は恵まれてるんだから。」
っていうメッセージを感じる。
前者は私を軸にしてくれてるけど、
後者はあくまでも母軸。
私が相談してた気がするのに、
しまいには私が母に「大変だったんだね…」と寄り添う始末。
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母の話はさながら洪水のようで、
それが止むまで、私は耐えるしかない。
あるときから、母が話し始めるとしんどくなるようになった。胸のあたりがムズムズモヤモヤする感じ。
目をつぶったり一点を見つめたりして、意識をぼやっとさせてやり過ごしている。(自主的に解離させてる感じ。)
そうなると当然相槌は適当になる。
「うん」
「へえ」
「そうなんだ」
を使い回しているのだが、それでも母は気にせず話し続ける。
ああ、私が聞いているかどうかなんて、母にはどうでもいいことなんだ。
母はただ、自分の話をぶつける的みたいなものがあればそれでいいんだ。
そう思うと虚しくなって、
私って何なんだろうって思う。
母との会話の場面に、「私」は存在しない。
それでも、私はたまに母に相談や日常会話をしようとする。
どうせ聞いてもらえないとは思いながらも、諦めきれないのだ。
1人しかいない「お母さん」に、私の気持ちを受け入れて欲しいから。
「私」という存在を、認めてほしいから。