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忘却を恐れる話(4/8の日記)

今日はいつも以上に、忘れることの怖さを強く意識した日だった。
バイト中ずっと頭の中を占領して出ていかなかった。そうしている間にも忘れていくことが山ほどあると思うとやってられない。何を忘れたのかもきっと覚えていない。どうしよう。どうしたら全部を忘れないでいられるのかばかり考えていた。そんなことできないのに。

「いらっしゃいませ」と来るお客さん皆に威嚇の声を発しながら、一秒一瞬をどうしても覚えていたいと思っていた。出来事だけを覚えていられても、出来事を一生分全部記録できたとしても、その時に考えたことはその時にしか分からないのだなと思った。

学祭だとか部活の本番だとかがあるたびに、この特別大事にしたい時間もいつか過ぎて二度と戻らないのだと悲しくなる。時間が経つのも怖い。人が年をとったと自覚するのが悲しい。


私は時間を止められるものなら止めたいし、脳に記憶装置が付けられるのならサイボーグになるし、タイムスリップができるようになったら過去に行きたいし、若返りや不老不死の薬があるのなら私の大事な人皆に飲ませたい。こういうのを闇落ちと言うのですかい?
こんなことができるようになるのなら、人間だって辞められるし悪魔に魂でも売るわい。私が主人公のそういう話でも書いてセルフで救おうかな~。どうすればいいんだ~。何が正しいんだ~。

毎朝ヘアアイロンで髪を整えてからバイトや学校に向かうのだけど、いつもコンセントを抜いたかどうか部屋を出た後に不安になるので、ドアに張り紙をして指さし確認をするように促している。
今日はその指さし確認をし忘れたことにバイト先に着いてから気がついた。開店に向けた準備をしながら、もしアイロンがつきっぱなしで火事でも起きていたらどうしよう、と気が気でなかった。しかしこの気が気でなさも私は知らないうちに忘れていて、いいのか悪いのかそういうものなのか、このことを一日思い出すことはなかった。
バイトから帰ってきてアイロンを見て、今朝こみ上げた不安を思い出した。コンセントは抜いてあって、私はいつも通りコードを束ねてしまっていた。自動操縦モードの私に振り回される。

私の頭に記憶装置がほしい。朝の出来事、前日の夜の決意、昼間思いついた日記に書きたいこと、全部全部覚えていたい。

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