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2024年上半期ベストアルバム?

順不同。

・今年リリースでよく聴いたもの

Bring Me The Horizon『POST HUMAN:NeX GEn』

 実質1曲目“YOUtopia“のドロップチューニングによるギターリフが流れ出した瞬間、完全に中学生化してしまいました。最高です。サマソニチケット両日取っといてよかった。
 オルタナ〜グランジ〜インダストリアル〜モダンヘヴィネス〜エモ〜ポップパンク〜メタルコアと、ユースに愛されてきたロックのサブジャンルを自在に横断。ドラムンやジャングル、ハイパーポップなど旬の素材も取り込み、結果的にFACT(!)等のピコリーモ(!!)勢を想起させる瞬間もたびたびある。
 93年生の筆者からすると胸焼け必至のコンポーネントながら、低域をしっかり出した音作りやMVおよびアルバムの構成、コンセプトまで含めたデザインの練り込み、何より曲のよさ(メロディが書けている)のおかげで何度も聞き返せるバランスに落ち着いており、このあたりの手腕はキャリア20年の経験値が成せる技ってところでしょうか。照れ隠しを排除して超ファッショナブルになったマキシマムザホルモン、もしくはUSメインストリームポップへの寄り道をせずひたすら刀を磨いていた世界線のONE OK ROCK? 的な?
 個人的なハイライトは、ピクシーズから始まり「全て」を取り込みながら怒涛の展開を見せる“n/A”から、マイ・ケミカル・ロマンスのあの代表曲を20年代版に再解釈した”LosT”へと至る流れ。


YOTO『Levure』

 アルゼンチンの今を語る上で欠かせない人物といえば、23年12月に大統領に就任したハビエル・ミレイだろう。トランプを彷彿させるポピュリストという意味では既視感のあるパターンだが、ミレイの場合はそのエキセントリック度合いが群を抜いており、日本で例えるならば橋下徹と立花孝志を足したようなキャラクター、という感じだろうか(さすがに失礼?)。本業が経済学者という意味では竹中平蔵や高橋洋一も入っているかもしれない。選挙戦の演説中にチェーンソーを振り回したというエピソードが有名で、都知事選があんなことになっている中では何だか対岸の火事と片づけきれないものがある。通貨安に苦しんでいるところも同じだし......(南米諸国の現代史については、最近の本だと『ポピュリズム大陸 南米』が勉強になった)
 そんなアルゼンチンから届いた、キュートでストレンジなアヴァン・ポップ。アルゼンチンといえば、なフォルクローレの要素も加味されていることを考えるとフォークトロニカなのかもしれないが、そういったラベリングがあまり意味をなさないくらい、ちょっと他では聴くことのできないオリジナルな音楽である。アルバムタイトルの意味は「酵母」で全体的にパン屋がコンセプトとなっているらしく、タイトルも「パルミジャーノ・レッジャーノ」「こねてお祝い」「発酵」「吹きこぼれ」と人を食ったようなものが続いている。この軽やかなユーモアは社会の過酷さの裏返しなのか、それとも。


Tyla『TYLA』

 アフリカ大陸発のビートもすっかり人々の耳に馴染み、ナイジェリアやガーナのアフロビーツが世界的に流行してからというもののその名のもと十把一絡げにされがちだった彼の地の音楽も、地域性をふまえた解像度でもって語られるようになってきた。中でも南アフリカのアマピアノは、日本ではaudiot909さんのような積極的な紹介者の功績もありだいぶ人口に膾炙してきた感がある。タイラはその代表的なアーティストで、本作は待望のファースト・フルレンス。今年のサマソニにもブックされており、ラインナップにかんしては色々言われつつも、なんだかんだでこの辺を押さえているクリエイティブマンは偉いと思う。
 まあ、ぶっちゃけ『TYLA』にかんしていえば、先述のaudiot909さんが自ら執筆した紹介記事以上の質および量を持つ情報を日本語で得ることはほぼ不可能だろうから、興味がある方はそちらを読んでみてくださいとしかニワカの筆者には言えない。アフロビーツとアマピアノの違いについても分かりやすく説明されているので。
 余談ながら、ふと入った飲食店や服屋で「あれ?」と思うと”Water”がかかっている、というようなことが割とある。けっこうエッチな歌詞ですけどね。


CATFLP『JERKIN’ AT RYōō HIGH』

 突如としてツイッター(自称X)の音楽好きの界隈の片隅をざわつかせた、正体不詳のトラックメイカーによるアニソンリミックス集。『らき⭐︎すた』の連載20周年のアニバーサリーイヤーということで、タイトル(作中に登場する稜桜学園から取られている)やジャケットに同作をフィーチャーし、冒頭はもちろん”もってけ!セーラーふく”が飾る。今年は公式も記念のリミックスアルバムをリリースしているが、そちらとはまるで比較にならないエクストリームな音が詰め込まれており、度肝を抜かれたリスナーは多かったはず。
 全曲190代まで引き上げられたBPMに、ほぼ全編にわたって音割れした凄まじい低音(歌がまともに聞こえず、コード進行でかろうじて原曲が判別できるようなものもある)。出オチなのかと思いきや意外と構成は練られていて聴き飽きず、正直、個人的なヘビロテ度合いでいえばここまで書いてきた作品を上回るところもある。『日常』EDの”Zzz”など、痒いところに手が届いた選曲も心憎い。次はタンザニアのシンゲリみたいなBPM300代への挑戦をお願いします!


Cornelius『Ethereal Essence』

これから聴き込んでいきます。


・その他、よく聴いていた作品(去年リリースで今年に入ってから初めて聴いたもの)

🎷Bendik Giske『Bendik Giske』

👻冥丁『古風 III』

🎸羊文学『12 hugs(like butterflies)』

🤡DJ K『PUNICO NO SUBMUNDO』

🎥Jerskin Fendrix『Poor Things(Original Motion Picture Soundtrack)』

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