今日の一福
もうサンダルかいと。
すれ違いざまの女子高生――と思しき年代。チャリを漕ぐその足もとの思い切った抜け感よ。
クロップド丈のパンツの裾からのぞく白い踝。晴れた春の陽も透けんばかりぞ。
いやはやアッパレ。まばゆいばかり。
冬枯れの景色から抜けきらないこの目も頭も、一度に醒める。心の底から御見それしちゃう。長いため息も出るというもの。
くらべてコッチときたら、やれ花粉だ黄砂だ人事だ何だ。
じたばた騒がしい見苦しい一方で、あの在り様には、思わず恥じ入る。
さすがにお若い。
軽やかそのもの。
季節の風に乗るその颯爽とした身ごなしよ。
そういえば春休みに入ったばかりか。午後も過ぎた今ごろの時間、近所のコンビニにでもブラリするのか、上はゆるいトレーナー。パッと見、持ち物はスマホのみ。長い髪は特にまとめず風まかせ。いかにも気の向くままという風情。
やめよう。考え込むのは、もうよそうかと。
今かぎりでも少しばかり。
あの軽やかさにあやかりたいぞと、わたしは家の鍵をさっさと開ける。大容量のリュックが肩に食い込んでいるのをたった今知る。そりゃあ膝も痛むというもの。腰もガタつく。無理もなかった。
なにをこんなに担ぐことがあるんでしょうねと、一先ずコイツをおろして途方に暮れる。
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