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今日の一福
2024/03/20
そこはギャルの聖地SHIBUYA―――も同然。
背中ガッバーナにおへそマルゲリータな彼女たち。もちろんメイクはバッチバチ。
まつ毛ギャンギャ~ンなその目、目、目、目がバキューンッ☆とコッチを射抜いたときは、素直におもった。
(あ、オワタ)
看護学校時代の、入学初日のお話だ。
わたしは社会人枠。それは古代種。まわりのほとんどが若さあふれる高校新卒枠の彼女たちとは、大げさでなく、惑星および次元を異にする異種族同士。その記念すべきファーストコンタクトの瞬間だった。
情動直撃。わたしの扁桃体わし掴みよ。
はい泣きそう。
おしっこもれそう。
足腰なんてガタブルよ。
このザマ、この体たらく。どうせ年下と侮って目も当てられない。これで3年間、古代種はこのギャルの惑星で生存可能であるかどうか。
なんつって歯の根も合わずにいたのも、ちょっとのこと。
定番の自己紹介をそれぞれ聞くうち、わたしの浅ましい不安やら疑念やらは雲散霧消。こころ晴れ晴れ。お若いうちから「看護師になる」という明確かつ現実的な将来像を描いてせっせと自己研鑽に励みましょうというこの真摯な姿勢よ。純度の高い夢物語よ。
「お母さんが看護師です。毎日大変そうだけど、ああなりたいです」
「手に職をつけなさいって。そうじゃなきゃ進学なんてさせないって」
「ボランティアで病院に行きました。それがきっかけで目指しました」
「ひとに役に立ちたいなあって。低予算でできる学校をさがしました」
いやアッパレ。
若者万歳。
涙涙よ。
日本の未来は絶対あかるい。まぶしくて目なんてまともに開けられない。
なにせわたしが彼女らくらいの年齢の時なんざ、ふわふわグラグラ。思い出すのもめんどくせーわ。なんかひとりでイケるんちゃうかと世の中舐めプしていた頃合いで、やることなすこと紙より軽くて薄っぺら。彼女たちと比べるのもおこがましい。
なおかつ、この当時わたしが「看護師でもやったりましょうか」と思い立った理由というのも、「(当時)最短かつ最低限のコストで国家資格が取得できて一生独身が叶うから」っつー夢も希望もヘッタクレもない、やたらスレた理由ですもの。謙虚さのかけらもない。そのことに気づいてもいやしなかった。
いや身が引き締まった。背すじも伸びた。
それで人生はじめて、わが身の不肖を健全に恥じ入る境地に立たされましたとさ。
以来、彼女たちはわたしにとって、この世でもっとも尊敬する友人たちに。
いろいろやらかしてスレた大人を、あのギャンギャンな目がまっすぐ源へと導いてくれた。ともに肩をならべてくれた。年の差、異文化、育った環境、時代、次元さえも軽々超えた。
若者よ、純度を誇れ。それを「未熟」と嗤うのもいるかもしらんが、それはそれ。あとになってからでは取り戻せない。これは学校でも社会に出てからでも言えること。
奪われるな。
手放すな。
へたに失うとすごく厄介。
これは経験済みのこの古代種が声を大にして言うことだから聞く余地ありだと、ひそやかに一筆しておく。
あれからもう何年経ったか。
今なお色あせない、あの鮮やかなギャルの惑星に最敬礼!
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