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【コラム】"愛玩" で飼えなくなった特定動物①ヒャンとハイ

2020年に動物の愛護及び管理に関する法律(俗にいう動物愛護法)が改正され、愛玩目的での特定動物の飼育ができなくなりました。

したがって現在では強毒・弱毒を問わずコブラ科やクサリヘビ科、あるいはボア科やニシキヘビ科でも巨大化する種を愛玩目的で飼育することは一切できなくなっています。

それ以前から飼育してた個体はさすがに ”殺せ” とは言われていませんが、事情はわかるにせよ残念です。
現在私が飼育している特定動物に指定されているヘビ、および過去に飼育していたヘビについて、その飼育方法を参考までにコラムとして少しずつご紹介することにしましょう。

もちろん(無許可での)飼育を推奨するものではございませんので、あくまで参考までにご覧いただけましたらと存じます。

まずはコブラ科の中でも、ほぼ ”最も咬傷事故の危険性が少ない(というかほぼない)” "見た目も美しくて飼育も難しくない" 日本が誇る素晴らしい ”Japanese coral snake” 、南西諸島のヒャンSinomicrurus japonicusとハイSinomicrurus boettgeriについてご紹介しましょう。

ヒャンとハイ、およびクメジマハイ(伊江島および久米島の固有種)で個体差はあっても種間の生態(餌の嗜好や行動の特徴など)の著しい差はないようですので、すべてまとめてご紹介します。
*一応、文中では基亜種・ヒャンという表記で進めますのでご了承ください。

まず、これらのヘビはほぼ ”地中性” とお考えいただくのが良いと思います。フィールドでの遭遇機会が極端に少ないのも、実際に飼育してみると彼らが "ほぼ地中に潜っている" ことに起因するものと思われます。
したがって、飼育環境も地中生のヘビのそれに準ずる形が理想となります。

具体的にはブレンドした土(床材の考え方|cobra_thief (note.com))を3-40㎝程度の深さに敷き、 チモシーや枯葉などで覆います。
水への依存性は少ないですが、他のヘビと同様に水はよく飲みますので、浅いトレー状の皿やバットを使用して水場とします。

シェルターは地中に潜るため不要で、これまでに設置したことはありませんが、おそらく設置しても使用することはないでしょう。

ケージ内レイアウトとしては以上、実にシンプルで簡単です。

続いて餌ですが、これも難しいことはありません。
なにより冬場は概ね10月下旬から4月上旬までほぼ餌は食べませんので、餌にかかる経費は極端に少なくて済みます。

温かい時期の給餌は、もしあらかじめブラーミニメクラヘビRamphotyphlops braminusヒガシニホントカゲPlestiodon japonicusあるいはそのほかの国産スキンク類)を繁殖できていればこれを使用(ヘビの餌:⑧餌動物の飼育1 ブラーミニメクラヘビ|cobra_thief (note.com)  または ヘビの餌:⑩餌動物の飼育3 スキンク類|cobra_thief (note.com) )。

もし、これらがない場合には、ヒガシニホントカゲを捕獲して与えます。ヒャンの身体が小さすぎて、こうしたスキンクを食べられない場合でも冷凍→解凍、そして解体して与えても食べる個体がほぼ100%です。

そのほか、サイズが合えば多くのヘビ類、トカゲ類を食べてくれますが、鱗にキールをもつ一部の種は嫌うようです(カナヘビなども頑なに食べません。あるいはヤモリ類も与えても食べたことはありません)。

一応の目安として、これまでにヒャンその他、この一族が食べたヘビ、スキンクの種類を一覧として以下に挙げさせていただきます。

【ヘビ】
アオダイショウElaphe climacophora
ジムグリElaphe conspicillata
シマヘビElaphe quadrivirgata
サキシママダラLycodon rufozonatus
アカコーヒーヘビNinia sebae
ブラーミニメクラヘビRamphotyphlops braminus
コーンスネークPantherophis guttatus
カリフォルニアレッドサイドガーターヘビThamnophis sirtalis infernalis

*食べなかったヘビ
ヒバカリHebius vibakari

【トカゲ】
オオアシカラカネトカゲChalcides ocellatus
エジプトクサビトカゲChalcides sepsoides
バーバートカゲPlestiodon barbouri
ヒガシニホントカゲPlestiodon japonicus
オカダトカゲPlestiodon latiscutatus
イシガキトカゲPlestiodon stimpsonii
サキシマスベトカゲScincella boettgeri
ツシマスベトカゲScincella vandenburghi
イツスジマブヤTrachylepis quinquetaeniata

*食べなかったトカゲ類
ヤモリ類全般
カナヘビ類全般(南西諸島に分布のアオカナヘビも食べず)

これを見ると、なんとなく肌がすべすべした種が食べる、ザラザラした種が嫌いという傾向があるようにも思いますが、印象としてはそれだけで好き、嫌いを決めているわけでもないように思います(ガーターヘビなどはキールが在りますし……)。

なにかが、彼らの嗜好に合うのでしょうが、そちらはまだつかみ切れておりません。
あるいは、体調ほか、単純な餌の嗜好だけではない要素が食べた・食べないに影響している可能性も否定できませんので、はっきりとした物言いは避けさせていただきます。

温湿度管理については、どちらかというと湿った環境を好みますが、湿度は他のヘビと同じく50-60%程度を最も好みます。
あえて言えば高湿は非常に嫌いますので、どちらからというと乾いた環境設定が良いでしょうが、これは特にほかのヘビと比べて特徴的というものでもないでしょう。
また、温度については比較的寒さに強く、逆に暑さには極端に弱い傾向があります。

温湿度管理については、他のヘビと比較して顕著に特徴があるという感じでもなく、他の北半球産のヘビに準じる形で問題ないでしょう。

餌、温湿度、ケージ内の環境設定など、特に難しい種ではなく、何より非常に美しいヘビです。

"コブラ科" とは言っても咬まれることはまずありませんし(非常に臆病な性格で手に乗せると尾の先で刺してくるような動作はしますが、危険でないとわかるとすぐに落ちつきますし、むしろ活発に動くヘビではありません)、同じ南西諸島に棲むヘビでも無毒のアカマダラDinodon rufozonatumあたりの方が、よほど気が荒くてよく咬みついてくる危険なヘビのように思います。

現在では残念ながら愛玩動物として飼育することはできなくなってしまいましたが、もしも南西諸島のフィールド探索で見つけたら、そっと驚かさないように観察して彼らの美しさ、素晴らしさを楽しんでいただけたらと存じます。

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