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ケージ内の構造物:"立体行動" のために

ほとんどのヘビは立体方向:地面から垂直方向の動きを好む傾向があります。これは生息環境とは無関係で、地中生や地上徘徊生の種であっても変わりません。

基本的には器物の転倒事故防止やヘビの動ける空間が広くなるという意味で、ケージ内のレイアウトはできるだけシンプルな方がよいと言えます。

しかし、広いケージを使用している場合などはヘビの立体行動を促すアイテムを設置することが有効な場合があります。
特に樹上性のナミヘビやボアでは、立体方向の行動の割合が多い個体がいますので、こうしたアイテムの設置がストレス緩和、運動不足解消に効果的です。

1.竹や木材を格子状に組んだもの

地面と垂直方向、水平方向のいずれの場合でもヘビが "運動用具" として使用するアイテムとして有効なものは ”できるだけ身体に接触する部分、面が多い・大きい・広い” ものです。
別項目でシェルターとしてご紹介しているものも、これらの性質を持ったものが多いと思います(ヘビにとってシェルターとはどんな場所か|cobra_thief (note.com))。

立体行動のためのアイテムもこの点を重視したものを使用する必要があります。
樹上生のボアに向けて、ケージの側面左右にバーを渡しただけのものが使用されることがありますが、これは彼らにかなり ”無理を強いる” 性質のもので、本来は不適切だと言えます。

たとえばミドリニシキヘビ Morelia viridisなどが、バーに身体をぐるぐると巻き付けて休んでいる写真をよく見かけますが、これはいわば ”自分の身体を、自分の「別の部位」と接触させる” ことによって、落ち着いている形です。
おなじことはいわゆる "とぐろを巻いている" という状態にも言えるでしょう。

自然下において、本来はコイル状に(バネが伸びたような状態で)木の枝や幹に絡みつく形で休んでいることが多く、身体を接触させるための "横方向の軸" だけではなく、" 縦方向" の軸も必要であることに注意が必要です。

ほかの樹上性のヘビ(ナミヘビ科の樹上性の種を含む)であっても、この点は同様で、アイテムに求められる最も重要なことは "縦方向と横方向にしっかりと身体を巻き付けられる" という性質です。

 これを考えると、市販されている流木などはかなり "形状の縛り" が限られます。枝分かれの多い:ヘビが身体を巻き付けやすい、それなりにサイズをもった:ヘビのサイズに合わせた大きさ。ボアやニシキヘビであればなおさら、そして転倒等の不安がないものということになると、数は多くありません。

一方、自作すれば飼育個体に合わせた理想的なものができます。
”自作” と言ってもそれほどたいそうなことではなく、ケージサイズや飼育個体に合わせた適当なサイズにカットした角材、丸材や竹を格子状に組み、麻ひもで崩れないように固く縛って完成です。

これを床材の地中に(転倒しないようにしっかりとホールドして)埋め込み、ヘビの運動場所とします。

その形状からヘビの姿勢や運動の自由度・自在性が高く、"横軸" は安定性も高いので休息場所としても優れています。冬場、加温器具の稼働時には暖かい空気がケージ内の上層にたまる傾向があるため、この格子状のアイテムの上段付近に複数のヘビがかたまっている様子がしばしば見られます。

ケージ内の上層、下層で温度勾配ができることから、ヘビが好きな場所で休息できるという点でもこうした "格子状の休息アイテム"は有効だと言えるでしょう。

 2.模造水草

サイズの小さなナミヘビ類には模造水草が有効です。
一口に "模造水草" といっても色々な形状なものがありますが、理想的なのは樹木のように根元から放射状に広がったもので、なおかつ一定以上(15-20センチ程度)の高さのあるものです。
 
1つだけでは足りないことも多いので、ケージの広さに合わせて4つないし5つ程度を使用することが効果的です。
特に樹上性のナミヘビなどの場合にはケージのおよそ1/2程度の範囲にこの模造水草を設置し "ブッシュ" のようなエリアをつくるとその中で(あるいはその模造水草の下の地中で)休んでいることが多いようです。

何より ”草” の部分がジャングル状になっていることからそこを通り抜ける、あるいはその中に滞在することによってヘビが落ち着ける場所、落ち着いて運動・徘徊できる場所となります。

ほかのメリットとしては樹脂製で軽いので、転倒事故などの心配はほぼないことが挙げられます。
基部(”水草" の部分が生えている岩ないし底の部分)を地中に固く埋めて安定性を出すとよりベターですが、そのまま床材の上に置くだけでも十分に役割を果たしてくれます。

一方でデメリットとしては稀に強い樹脂の匂いが染みついている製品があることで、そのまま設置しても気にせず使ってくれるヘビもいますが、中にはこの匂いを嫌がる個体もいます。
*使用していけばある程度匂いは抜けますが、最初の段階でかなり匂いの強い製品もなかにはあるようです。

このような場合は重曹を溶かした水に半日程度浸け、1週間から2週間程度天日干しするとだいぶ匂いが気にならなくなることでしょう。

ボアやニシキヘビなど身体の大きくなるヘビには使えませんが、ナミヘビの多くは立体行動のための運動器具、あるいは簡易シェルターとしても好む個体が多いことから有効なアイテムの1つだと言えます。

3.小型の脚立・折り畳み式踏み台

広いケージを使用している場合に有効なアイテムが小型の脚立、あるいは折り畳み式の踏み台です。
新品を購入すればそれなりに価格は高いですが、新しいものを使用する必要はありませんので、リサイクルショップやオークション、中古用品販売サイトで購入することで廉価な製品が手に入ります。

これらはヘビの好む運動に必要な要素を備えており、非常に優秀なアイテムだと言えるでしょう。
すなわち、縦軸(あるいはナナメ軸)、横軸、そしてそれらに下半身を絡ませて "ステップ部分" で休息できるという点も彼らに好まれる理由のようです。

ヘビが身体を接したときの触感からか、木製の製品を好むようですが、金属製のものでも問題なく使用してくれることが多いようです。
下部を地中に埋め、転倒やぐらつきが無いように固定して使用しますが、製品の性質上、転倒事故などはほぼないと考えてよいでしょう。

ここまで3点、ヘビの立体行動を促すために有効なアイテムをご紹介して参りました。
このほかに庭がある場合には枯れ枝を剪定したものを麻ひもでまとめて ”ロール状” にしたものなども、シェルター兼運動場所として(枯れ枝の隙間に入ってシェルターとする、あるいはトンネル状の枯れ枝の中を通過するなど)有効です。

先にも記しました通り、ヘビはどんな種であれ地面から垂直方向の運動を好む傾向がありますので(壁面を伝って天面をほぼ逆さになって動き回るなどの運動も好む)、広いケージを準備できるのであれば、こうしたヘビの嗜好を助けるアイテムを設置することが有効です。

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