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ヘビの飼い方⑥アマゾンニセサンゴヘビ

ここまで比較的ポピュラーなヘビの飼育を紹介して参りましたが、少し変わったヘビの飼育方法もということで、今回はラテンアメリカ産のヤモリに嗜好が寄ったヘビをご紹介します。

この地域には、サンゴヘビMicrurusの体色に似せたさまざまなmimic種(擬態種)がいますが、このアマゾンニセサンゴヘビOxyrhopus rhombiferもそのうちの1つです。

このヘビが属するニセサンゴヘビ属(Oxyrhopus)には15の種が種登録されており、いずれもその名の通りMicrurusによく似た "赤と黒" 、もしくは "赤と白と黒" のバンド模様を持っています。

"樹上生" と紹介されることが多いですが、飼育下ではほとんど ”地中生” と言ってよいくらいに地下での生活に特化しています。ただし餌はヤモリに特化、ごくまれにカナヘビも食べるという具合ですので、自然下での索餌や摂餌は樹木に頼るところが大きいのでしょう。

ケージサイズの目安とケージ内環境の設定

これらの性質を鑑みて、地上から上下方向の運動が可能なケージを用意する必要があります(地中および樹上のいずれの運動もできるように)。
それほど大きくなるヘビではなく(最大でも1メーターに満たない程度)、また体型も華奢なので頭胴長と比べて極端に大きなケージは必要ありませんが、それでも一応、

横方向:頭胴長と同か1.5倍以上
奥行き:頭胴長と同
高さ:頭胴長の2倍以上

程度のサイズは見た方がよいでしょう。

遊泳や浸かるなど、水への依存はほとんど感じられませんので、ウォータープールにそれほど気を使う必要はありません。
一般的なヘビの環境設定と同様、2-30㎝程度の深さのプラスチックケースに水を張ったものをケージ内に1-2個設置してあげればよいでしょう。

先の通り ”ほぼ地中生” なので床材には用土を使用、原産地は比較的高湿の環境ですが、飼育下では乾燥気味の方が体調は良さそうです(このヘビにおいても湿度設定の考え方は別項の通り:部屋とケージの温湿度操作③湿度管理|cobra_thief (note.com))。

温度と湿度の設定

低温にもかなり強い個体が多いようで、気温が下がる冬場はほぼ餌を食べない時期が3カ月程度ありますが、ある程度の低温状態では健康・体調に著しいダメージが加わるというようなこともありません。

湿度、温度の目安としての理想値は以下をご参照ください。

◆温度
気温の低い時期:摂氏18℃~25℃
気温の高い時期:摂氏27℃~32℃

◆湿度
乾燥傾向の時期:30%~50%
湿潤傾向の時期:50%~70%

餌の種類と量、給餌間隔

先の通り、このヘビはほとんどヤモリに餌の嗜好が特化しています。ごくまれにカナヘビ(ニホンカナヘビほか)を食べる個体もいるようですが、捕獲の容易さ、それに伴うストックの容易さを考えるとヤモリだけで育てるという考え方でよいように思います。

ヤモリを丸々1匹食べられない程度に小さな幼蛇の場合には、冷凍→解体して与えても食べる個体がほとんどです。(少なくとも私のうちでは解体したヤモリは食べない、というケースはありませんでした)

成蛇でも通常のニホンヤモリのサイズであれば、1回の給餌間隔で2-3匹が最大、比較的気温の低い時期(まったく餌を食べない ”休眠明け" や休眠に入る前)では1匹でよいでしょう。

特徴的なのは給餌間隔で、これは他のヤモリを食べるヘビ全般に多い傾向なので、ご留意いただくとよいかもしれません。
すなわち、特に気温が高い時期には ”1匹ないし2匹(飼育しているアマゾンニセサンゴヘビのサイズによっては上記の通り3匹を最大とする)を連続で(日を空けずに毎日)3-4日与え、2週間程度空けてまた連日3-4日、同様の数を与える” という給餌の方法が効果的です。
*これにより不可解な拒食などは一切なくなります。
 
こうした傾向はおそらく自然下でのヤモリとの遭遇機会と関連しているのではないかと考えています。
つまり、ヤモリは "いる時には大量にいて、いないときにはまったくいない” というところから、遭遇時にある程度の数をまとめて食べる。これが飼育下においても摂餌の傾向に反映されているのかもしれません。

ちなみに余談になりますが、”猫の眼” のようにタテに切れ長の瞳孔をもつアマゾンニセサンゴヘビでは、明確に捕食や防御を ”視覚に頼っている” 傾向が見られます。(ほかのヘビよりも明らかに眼がよいという傾向)
この点は、”ほぼ地中に潜っている” 普段の様子とは一見矛盾しているように思えるのですが(地中生のヘビはほぼ視覚がゼロのものも少なくない)、この辺りの進化・獲得の傾向も非常に興味深いヘビだと言えると思います。


元々、ペット流通は非常に少ないヘビで、繁殖もこれまでに経験がありませんのでご容赦いただけましたらと存じます。
サンゴヘビに擬態したいろいろなヘビの中でも、特に美しい色合い、パターンを持つヘビで、他のヘビにはない魅力を多く持った種です。

販売価格はやや高めですが、飼育は難しくありません。とても臆病な性格で、ほとんどの時間を地中で過ごしますが、餌を求めて地上に這い出て来た際にはその美しい姿を拝むことができるでしょう。

最後に1点だけ注意点を申し上げますと、このヘビは口内奥に長い牙があり、比較的強い毒液を持っているとされます。
咬まれたことはありませんが(先の通り臆病ですが乱暴なタイプではないので、よほど追い込まれない限りは咬むことはないと思います。少なくとも私のうちで咬もうとするしぐさをしたことは一度もありません)、ヤモリの捕食の際には、明確に "毒を使っている" 様子が感じられます。(摂餌の際は毎回、ヤモリを口内奥の牙でしっかりとホールドし、"モグモグ" とまるで反芻するような動きで牙を使っている様子が見られます)

真っ当な飼育をしている限りにおいては咬まれるようなことはほぼ考えられませんが、注意するに越したことがありませんので、間違ってもハンドリングなどはしないようにくれぐれもご留意いただけるとよいでしょう。

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