見出し画像

ヘビの疾病・健康管理⑤吐き戻し, 消化器・排せつ障害(脱腸など)

"吐き戻し" の原因は

ヘビが一度飲み込んだ餌を戻してしまう、”吐き戻し” 。こうした異常行動の要因となるのは主に2つです。
具体的には1.餌の質や状態の問題, 2.給餌環境の問題です。

餌が傷んでいる、あるいはきちんと解凍しきれていないといった状態の場合にヘビは異常を感じて途中で嚥下を中断、中止することがあります。

餌の状態異常を確認する手段は餌の色を確認する(ネズミ類でいうと黒ずんだり緑がかったりなどの異常な色味になっていないか。できれば自然光の元で確認した方がよいでしょう)、匂いを嗅いでみる(異臭がしないかどうか)、触ってみて弾力があるか(ブヨブヨと柔らかすぎる場合には劣化が進んでいる可能性があります)などの方法が考えられます。

冷凍餌の "保存有効期限" は、気温の低い時期で最大3カ月、気温の高い時期ではできるだけ1カ月で使い切れるだけの量を購入した方がよいでしょう。(餌の種類を問わず)
また、購入した時点ですでに餌の状態が著しく悪いというような場合には、その購入元は以後利用しないようにします。

餌の ”解凍不全” による吐き戻しは意外に少なくありません。ネズミ類に関しての給餌の項でもご紹介しましたが(ヘビの餌:ネズミ類の餌やり|cobra_thief (note.com))、両手のひらで包んだ際に冷気が伝わってこない程度にまで待ってから与える必要があります。

餌に神経質ではないヘビの場合、餌の温度が低くても飲み込んでしまうケースもありますが、こうしたケースではむしろ内臓により大きな負担やダメージがかかる可能性がありますので(吐き戻してくれた方がむしろ負担は少ない)、飼育管理者がきちんと管理してあげる必要があります。

”吐き戻し" のもう一つの原因は給餌環境に問題があるケース。すなわち、ヘビが摂餌中に "非常に怖い” と感じてしまう状態が関係しています。
特に臆病な個体では、餌を食べている際、あるいは嚥下から間もない時に人から観察されるとストレスで餌の消化を中止、あきらめてしまうヘビもいます。

ヘビにとって餌を食べている最中は "無防備な状態になる" という意味で非常に危険です。 
飼育管理者はこれを理解したうえで、摂餌中はできるだけヘビにストレスがかからないような配慮が必要になります。
摂餌中のストレスによって吐き戻しをしてしまった場合、なかには以降長期間にわたって拒食が続く、というケースもありますので、決して軽く見ることはできません。

糞の異常や排せつ障害

異常な色の糞や腸管内に排せつ物が詰まり、排せつがうまくいかない、あるいは脱腸といった排せつ障害のほとんどは、餌の種類に問題があることが原因となっているケースが多いようです。

たとえば雑食性のヘビにカメ用の人工飼料を与えてもよい、というような情報が紹介されていることがありますが、こうしたケミカルな餌では "嵩増し" のためのさまざまな ”粗たんぱく” が使われているケースが少なくありません。
こうした素材がヘビの消化器系に悪影響を及ぼしている可能性が考えられ、実際に人工飼料を与えられていたという知人のガーターヘビは、私のうちでは考えられないような脱腸の症状が出ていました。
*ストレスの多い環境、不衛生な環境も影響していたと思いますが、そちらは間接的なものだと考えられます。

ヘビ(あるいはほかの動物でもそうですが)に与える餌の考え方としては、”使われている素材や、餌に何を与えられているかわからないものを与えてはならない” というのが基本となりますので(ヘビの餌:”餌の餌” を考える重要性|cobra_thief (note.com))、少なくとも使われている素材がはっきりしない、外温性動物用の人工飼料を与えることは絶対に避けた方がよいでしょう。

人でもそうですが、糞については良くも悪くも餌がヘビに与える影響、およびヘビの健康状態が如実に出るものだと言えます。
おかしな餌を与えた場合には、普段では考えられないような色や水分量の糞が出ることがあります。
糞を知ることは、ヘビの健康を知るカギとなりますので、定期的に確認をすることがよいでしょう。
*飼育している生体の ”正常な糞” の状態を知るためにも、普段からヘビの糞の状態を確認することは重要です。

ちなみにヘビは糞で身体が汚れることを非常に嫌いますので、通常はシェルターや活動場所に排泄することは少ないですが、もしもそのようなケースを見つけた場合には、いち早く糞を撤去、清掃する必要があります。

なお、サケなど ”アスタキサンチン” と呼ばれる色素物質を含んだ餌を与えた場合には糞が赤く染まることがありますが、いわゆる血便とは異なります。消化器系に出血があった場合には糞は "黒くなる" ことが多いですし、アスタキサンチンの色素は血便の色と違って鮮やかな赤い色をしていることで区別がつきます。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?