ヘビのハンドリング
基本的にヘビは、触ったり撫でたりする動物ではありません。
人のように大きな動物は、近づくだけでも恐ろしいと感じるでしょうし、それがさらに身体に触れるとなれば、彼らの恐怖はいかほどのものか、想像するに余りあると言えるでしょう。
しかし、全く触れる必要がないのかというと、決してそんなことはありません。(もちろんできるだけないに越したことはありませんが)疾病や外傷などがあった場合、傷や回復傾向を確認したり、あるいはケージの移動の際(これも本来は触らずにできる作業:詳しくは改めてご紹介します)などにはどうしても触らずを得ないという状況もあるでしょう。
このような場合に、飼育管理者が "触れることに慣れていない" という場合、さまざまな事故が起こる可能性があります。
具体的には落下事故、あるいはヘビの逃走などです。
それを防ぐためには、飼育管理者が "ヘビに馴れておく” 必要があります("ヘビを人に馴れさせる" 必要はありませんし、馴れさせるべきではありません)。
そこで、この項ではヘビのハンドリングについて、そのポイントをご紹介することにしましょう。
ヘビは ”つかむ" のではなく "乗せる"
ヘビを手で扱うことは ”ハンドリング” と呼ばれます。
この言葉がヘビとの接触の仕方についての大きな誤解を呼んでいるのではないか、と個人的には考えています。
ヘビに触らなくてはならない状況、そこでは決してヘビを ”つかむ” という動作は必要ありません。
たとえばヘビの傷を確認する際、あるいはヘビを移動させる際には、彼らを "hold" しなくても作業を行うことができます。
ヘビの体表にある神経は非常に敏感で、手に少しでも力が入るとそれを察知して彼らの身体にも力が入ります。おそらく強いストレスを感じているのでしょう。
したがって、彼らを手で ”つかむ” という動作をしてはいけません。
手のひら、あるいは指や腕の上にヘビを "乗せる" という感覚で、彼らが人の身体を支えにして自由に動き回れる状況を作ってあげることがポイントです。
もちろんその際、片手で作業を行うのではなく、両手の平、両手の指、両腕を使います。かなり不安定な状態でも彼らは器用に落ちることなく動き回りますが、それでもやはり安定感のある姿勢の方が、ヘビは落ち着き、ストレスなく動いていると感じられるでしょう。
しばらくするとその状況に ”慣れ” ますので(環境に慣れるという意味での "なれる")、傷や回復状況の確認も楽にさせてもらえるようになるでしょう。
こうした作業の際も、とにかく焦る、早く終わらせようとする、セカセカするということは禁物です。もしも心や時間に余裕がない場合には、ヘビの扱いをすることはできません。
時間をかけてヘビが落ち着くのを待つこと。あるいは種や個体によっては嫌がって臭腺から強烈なにおいのする液体を飛ばしてくるかもしれません。
その場合には、作業をいったん中止して手を洗うか、それでなければ毒があるわけでもありませんし、匂いは我慢してヘビが落ち着くのを待つ必要があります。
とはいえ、このような "ヘビの扱い" はそれほど長時間しなければならないケースというのはほぼありません。
ヘビの移動、傷の回復具合を見るなどはせいぜい長くとも2-3分あれば済むでしょう。
ヘビに長く触れていれば長く触れているほど、彼らのストレスもそれだけ大きくなるのだ、ということを忘れないようにしつつ、必要最低限のコンタクトが終わったら、またゆっくりとケージに戻してあげます。
この一連の作業も、ヘビの部屋での基本である ”ゆっくりと動くこと” を忘れずに、なおかつ力を抜いて作業に当たる。
それがヘビとの信頼関係を崩さずに、彼らに触れさせてもらうための基本だということを頭に入れておくとよいと思います。
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