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不自然な "クーリング" による大きなリスク

繁殖スイッチをONにするトリガーとして、あるいは寿命を伸ばす(?)ことを目的に、ヘビを人為的に "休眠状態" に促す "クーリング" という方法が有効であるという情報がまことしやかに存在します。
しかし、実際にヘビを飼育してみると、こうした情報は全くのデタラメであることがわかります。

私のうちで飼育しているヘビについてご紹介すれば北半球原産のガーターヘビThamnophisであっても、自然な光量の変化や自然な温度勾配だけで、異常な時期に繁殖スイッチが入ったり、あるいは全く繁殖スイッチが入らないなどということはこれまでに一度もありません。

何より "クーリング" を行うことによる一番のデメリットは急激な温度変化、不自然な温度変化によるヘビの身体への大きな負担です。
短期間で急激に寒くなる、そしてまた短期間で急激に暑くなる。これは人であっても体調を崩す原因となるものでしょう。
外温性動物であるヘビにとっては、さらに大きな健康ストレスの元となります。

あるいは仮に "温度を段階的に冷やしてゆく" と言っても、自然な温度勾配を人の手で作り出すことが果たしてできるでしょうか。
少なくとも書籍・雑誌、あるいは動画などの情報を見る限りはヘビにとって好ましい温度操作ができているとは思えません。

そもそも日本においては毎年10月頃から翌4月頃まで、比較的気温の低い時期が続きます。この時期は仮に適切な保温・加温器具を使用していても自然にケージ内、あるいは飼育している部屋の中の温度は低くなります。こうした自然な温度変化だけで十分に "クーリングの効果" は期待できます。
*気温の低い時期にヘビに不適切な加温器具を使用し "無理な高温" を作り出すことは、ヘビに備わる自然な感覚を大きく狂わせるという意味でマイナスの効果しかありません。

これまでにとある知人から "不自然な時期に交尾行動を行う"、という相談を受けたことがあります。
このケースでも不自然な温度操作、あるいは普段の温度管理に不適切な加温・保温器具を使用していることが原因と考えられましたので、それらを修正するように提案したところ、当該の問題は解消されたとのことでした。

他にもこうした不自然な温度操作が原因で起こりうる健康異常、健康障害はたくさんあります。
具体的には立ち上げ後に長期間拒食が続いたり、代謝の低下状態が長期に渡り脱皮不全や排泄障害(その延長としての脱腸など)を繰り返したり。
さらには直接的に体力を消耗してそのまま体調が戻らずに死んでしまった、などというような事例も少なくありません。


ヘビはおもちゃや機械ではありません。また、自然物という意味で私たち人間と全く変わらない部分も多々あります。
叩けば痛いしお腹が空けば食欲が湧く、そして寒い・暑いも私たち人間と同様に感じています。
彼らを "完全に手の内に入れて" 全て思い通りにしようとしないこと。そして、彼らが自由に、"自らの意思" で行動を選べる環境を用意してあげること。

それこそが、ヘビに "健全に" かつ "健康に" 長生きしてもらうために非常に重要なことの1つだと心得ておく必要があります。

*理想的な温度操作については別項でもご紹介しておりますので、ご参照ください(https://note.com/calliophis/n/na7d64189f373)。

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