環境すべてを "支配・管理する" ことは不可能
飼育にあたって陥りやすい錯覚の一つが、"ヘビの飼育環境の全てを支配・管理することができる" というものです。
湿度や温度、紫外線、光量のほか、ヘビの摂餌量、そして繁殖行動など。。。
どんなに優れた用具・機材を使用しても、完全に思い通りの数値に設定することは不可能ですし、ヘビを思い通りの行動に導くなどということはできません。
相手はあくまで動物であって、機械ではありませんので、ゲームのように "こうすると必ずこうなる" などということはありえません。
こうして文字にすると "それはそうだ" と納得していただけることも多いのですが、実際には "温度は●●℃、湿度は●●%"、あるいは "紫外線は1日●時間当てる" などという数値に惑わされ、結果的にヘビに不適切な環境を作り出してしまっているケースも多いのではないでしょうか。
まずは "ヘビの環境を完全に人の手で支配し、作り出すことができる" という錯覚を手放し、あくまで自然の力を借りる、あるいはヘビの意思に従った環境づくりや給餌量・給餌間隔を心がけるということを常に頭に置いていただくといいように思います。
これを踏まえた上で重要なことは、基本的・健康的な暮らしのサイクルに必要な事項はヘビも人とそれほど変わらないということです。
すなわち、
夜行性・昼行性を問わず昼夜の光量には差をつける必要がある。
光量(紫外線量)のほか、温度や湿度は季節によって変化がある。
運動量が少なければ食べる量も少なくなる
日々のストレスが大きければ摂餌や繁殖行動に支障が出る
体調など様々な要素を原因として "機嫌の良い日・悪い日" がある
パッと考えるとこの辺りでしょうか。
しばしば頂戴するご質問として、「赤外線ライトは何月くらいから何月くらいまで使用するのが良いでしょうか」「紫外線ライトの使用方法について教えてください」「強制給餌・アシスト給餌について教えてください」などといったものがあります。
しかし、自然の力を借りるという意味では、私としては基本的に保温ライト(これを使わない理由は温度が暑くなりすぎるということも大きいですが)や紫外線ライトは使用しないことをおすすめしています。
また、強制給餌やアシスト給餌はどんな状況であろうと絶対にやめてください、とお伝えしています。
光量や紫外線量はもとより、ヘビの餌の量を完全に人が支配することは不可能だと思っているからです。
食べたくない時に無理に食べ物を口から押し込まれたら。
(休日で)眠っていたい時に無理に光を当てられたら。
冬でも暖かい日に、"冬だから" という理由で暖房をガンガンたかれたら。
人でもストレスになるようなことをヘビにしてはいけない、というのはごくごく基本的なことです。
この辺りは、それほど複雑な考え方は必要なくて、自分がされたら嫌なことはヘビにもしないというシンプルな考え方でよいと思います。
繰り返しになりますが、基本はとにかくヘビの飼育環境を全て自分の手で支配し、作り出すなどということはできないのだということを常に頭に入れておくことが何よりも重要だと思います。
その上で、自然下の環境を参考に、さらにより良い飼育環境のための「自然」「飼育」のいいとこ取りができるような環境構築がヘビの長生きへとつながるのだと言えます。
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