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ヘビの疾病・健康管理②マウスロット

ヘビのうちでもボアやニシキヘビに比較的多く見られる疾病が ”マウスロット” 、すなわち口腔内にできる炎症性の潰瘍です。

その症状はケースによってさまざまで、軽度の "びらん" で済むものがある一方、口内全体に血がにじみ、口の開閉が満足にできないほどに重篤な症状となる場合などもあります。

マウスロットを発症するヘビの様子を見ると、ほとんどのケースで免疫力・抵抗力の低下が原因となっているようです。
すなわち飼育環境の不備によってストレスがかさみ、その結果として口内にできた傷に細菌が感染してマウスロットへと至るというものです。

健康な状態であればほとんど気づかない程度で治癒するものが、恒常的なストレスによってより重篤な疾病に至るというしくみは、人でもヘビでもあまり変わらないようです。

初期のマウスロットの段階で気づけば、多くの場合、ケージ内外の環境を整備すれば自然に治癒します。
これは他の外傷性疾患などでもそうですが、ヘビにかかるストレスが大きくなければ数回の脱皮、およびその間の普段より長時間のバスキングによってそれほど長期化せずに回復することも少なくありません。

彼らの免疫力・自然回復力は素晴らしいものがあります。たとえば比較的深い切り傷などでも(特にWC:自然下で捕獲された個体の場合には同種・他種のヘビや捕食者による深い傷がついていることもそれほど珍しくはありません)、傷を受けた場所がほぼわからないくらいに回復するなどということもあるでしょう。

ただし、これもあくまでヘビがストレスを感じにくい環境で過ごしている場合であって、不適切なケージ、床材、温湿度管理にさらされているような場合では自然治癒は期待できず、むしろ重篤化するというケースも少なくありません。

また不適切な餌の選択や加工に問題がある(餌の種類や大きさ:栄養の偏重や過度に大きな餌による消化器系への負担、給餌時の加工:鳥類であれば羽毛をむしる、毛の生えた哺乳類であれば毛を剃ってから与えるなどの処理etc. )、状態のよくない(顕著に不衛生など)餌を与えるなどもマウスロットが起こりやすくなる要因です。

常に口が閉じられない状態、呼吸時に音が聞こえる、口からクリーム状の異物が垂れるなどの症状が見られる場合にはかなり症状が進行しているものと考えられますので、直ちに信頼できる獣医師のいる動物病院で診察を受けるようにしてください。

マウスロットそのものはヘビの命を即座に奪うような恐ろしい疾患ではありませんが、ときには細菌が(嚥下により)体内から全身に及び、死に至る可能性もないわけではありません。

異常に気が付いたときにはすでに重篤な状態で、飼育環境の更新をする間もないくらいに症状が進んでいるといった場合には、何をおいても一刻も早く診察、治療を受けることが重要です。


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