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1つのケージでの多頭飼育のすすめ

1つのケージの中で複数のヘビを飼育管理する。
いわゆる "多頭飼育" について、なぜか否定的な情報を見ることがあります。"共食い"や "給餌の際の事故" などをその理由としているようですが、果たして本当に "多頭飼育" が原因でこういうアクシデントが起こるのでしょうか。

私のうちではケージ内における "種を超えた" 多頭飼育であっても事故が起きるようなことはほぼないので、そのようなアクシデントはおそらく飼育環境に問題があることが原因だろうと推測しています。
すなわち、恒常的なストレス負荷が非常に大きい、餌の種類や給餌間隔に異常があるなどです。

他の動物、例えばイヌやネコなどでもそうですが、ストレス負荷が一定値を超えると異常な行動に出ることがあります。具体的には異常に暴力性を増したり、落ち着きが極端になくなったり。
いや、これは動物だけではありません、人であっても同じでしょう。

ヘビの異常行動も、多くはストレス負荷の増大に起因しています。
本来は "飼育できる動物" ではないヘビを飼育するという、ある種の矛盾をはらんだ趣味を全うしようとする際、彼らの嗜好・本来の生態に人が合わせてあげる必要があります。
それによって初めて、彼らが飼育環境に慣れ、異常な行動を起こすようなこともなくなります。

少し脱線してしまいましたが、ヘビの1つのケージでの多頭飼育は、うまくするとむしろ彼らの気持ちを落ち着け、ストレスの増加を抑制してくれる効果があります。
特に同種あるいは近い亜種同士を同じケージで飼育すると、それらの個体同士がある種の "コミュニケーション" をとっている様子が見られることがあります。

もちろん彼らはいわゆる純粋な意味での "社会性動物" でありませんので、お互いを気遣ったりということはありません。
しかし、たとえばAという個体が餌を食べているのを見て、Bという個体が "ああ、これは餌なんだな。僕も食べてみよう" と感じたり、あるいは個体Aがバスキングしているそばに個体Bが近寄って行って一緒に身体を温める。それにより、お互いが落ち着いた状態で休息する。
これは、私はある種のコミュニケーションの1つだと感じています。

1つのケージ内での多頭飼育は、このようにそれぞれの個体にプラスの効果をもたらすことを実感しています。
ただし、多頭飼育にもいくつかの注意点があることは間違いありません。以下、それぞれについてご紹介しましょう。

1.自然下でヘビを主食としている種と、そうではない種は同居させない

ミルクスネークやキングスネーク(これらは遺伝的な "属" は一緒です:
Lampropeltis)、現在は愛玩目的では飼育できなくなってしまいましたが、キングコブラOphiophagus hannah、あるいは南北アメリカおよびアジア、そしてアフリカのサンゴヘビ(Micrurus, Sinomicrurus, Calliophis, Aspidelaps)、あるいはその他のコブラ科のさまざまなヘビ(Elapidaeに属する種)など。
すなわち自然下で餌としてヘビに嗜好が寄っているヘビと他のナミヘビ類、あるいはボアやニシキヘビ類などを一緒にすることはしないほうが良いでしょう。

広いケージを使用している場合にはほぼ考えられませんが、狭いケージで多頭飼育した場合などには、ごくごく稀に餌として捕らえてしまうことがあるようです。
普段ほかの餌を健全な給餌間隔で十分な量を与えていれば、ほとんど考えられないことですが、全くないとは言い切れない以上、やめておいた方がよいでしょう。

2.サイズの著しく異なる異種同士は同居させない

これもそれほど大きな心配をする必要はないのですが、サイズの著しく異なるヘビ、それも遺伝的に離れた種同士を同居させた場合には小さい方のヘビにストレスがかかることがあります。

大きな方のヘビが自然下でヘビを常食している種でなければ意図的に、あるいは誤って小さい方のヘビを食べてしまうようなことはまず考えられませんが、個体によっては給餌の際などに(餌をくわえた)小さいヘビを追い回したりすることもないわけではありません。
飼育している全てのヘビについて、できるだけストレス負荷を減らすということを考えると、種の異なる大小のヘビを同じケージで飼育することは避けた方がよいでしょう。

3.異種同士の給餌間隔は基本的に同じにする

給餌の際に起きやすいとされる事故は、餌の取り合いによる咬み合いです。ケージ内の全てのヘビに、"同じタイミング" で餌を提供することにより、こうした "給餌の際の事故" を予防することができます。

すでにヘビとの信頼関係が構築されていて、尚且つ性格が臆病ではない種であればピンセットから直接食べることもあるでしょう。
しかし、ピンセットから餌を与えることは他のヘビから攻撃されやすい隙を作るという意味で好ましくありません。
そのため、環境に慣れた個体であっても、多頭飼育の際には必ず置き餌にして与えるようにします。

一方、餌の嗜好が異なる種同士の場合には、逆に給餌間隔に違いをつけた方がいい場合もあります。
特に多くのナミヘビ類では普段は地中に潜っていますので、ケージ内に餌を設置した際、その餌に嗜好が寄ったヘビだけが地中から這い出てくることで、ヘビ同士の接触を避けることができます。

4.給餌の際には聞き耳を立てておく

できるだけヘビが餌を食べる様子は覗かない方が彼らが落ち着いて食事ができるという意味でよいと言えます。
しかし、1つのケージで多頭飼育している場合にはごく稀に、ヘビ同士が餌と誤って他のヘビの体に咬みついてしまうようなことがあるようです。

こうした場合でも、彼らはほとんど自分たちで解決することができます。すなわち、咬んだ方のヘビが自ら牙を外し、そのまま相手のヘビを飲み込んでしまうなどということはほぼ考えられません。
しかし、"万が一" の予期せぬ事故を防ぐためには、ケージをタオルなどで覆った上で、中の様子に注意を払うことです。

こうした時にも床材に土および枯葉を使うことは有効です(https://note.com/calliophis/n/n906bb3c64d5a)。なぜならアクシデントが起きた際、枯れ葉が普段と違う騒がしい音を立てて異常を教えてくれるためです。

5.ケージ内に複数の "落ち着ける場所" を設置する

ヘビが普段過ごす "落ち着ける場所" がケージ内に1カ所しかない場合、その場所がヘビ同士で取り合いになることがあります。
同じ種同士の場合には問題がないことが多いですが(あるいは異種同士でもそれほど多いわけではありませんが)、異種同士の場合にはこうしたアクシデントが起こることもないわけではありません。

こうした際は概ね身体の大きい方、あるいは気の荒い方がその場所を占拠して小さい方、気が弱い方は別の場所に移動し、時には所在なくしていることもあります。

このように、ケージ内である種の "格差" が出ることを避けるためには、複数の "地中シェルター(https://note.com/calliophis/n/n884821873d97)" や "落ち着ける場所(https://note.com/calliophis/n/ndac8771dda9a)" を設置することが有効です。
ときにはケージ内におけるヘビ同士の "無用な接触" を避ける措置が有効な場合もあることは理解しておく必要があります。

特に同じ種類(ペットスネークとしてメジャーなコーンスネークやボールニシキヘビなど)であれば、1つのケージに多個体を同時飼育することには多くのメリットがあります。
先にご紹介したようなストレス負荷の低減のほか、繁殖を狙うような場合には交尾行動を促すためにも有効です。
普段から慣れ親しんだオスとメスだからこそ、交尾のスイッチが入るというのは、ある意味で理にかなっているといえるでしょう。

あるいは飼育している部屋のスペースに限りがある中で、できるだけ広いケージにヘビを収納する、という意味においても多頭飼育はプラスになります。

一般的に言われている多頭飼育の問題は、ここにご紹介した点に注意をしていただくことで、ほぼ解消することができると思いますので、よろしければどうぞ試してみてください。

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