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【コラム】"愛玩" で飼えなくなった特定動物②リンカルス

これまでに飼育してきた "特定動物" をご紹介するコラムの第2弾はアフリカ原産のコブラ、リンカルスHemachatus haemachatusです。
1属1種の個性派で性格のおとなしい個体が多く、餌の選り好みも少ない大型コブラの "飼育入門種" といったヘビだと思います。

"大型種" と言っても確かに前回ご紹介したヒャンやハイ、あるいは世界中のcoral snakeなんかと比べると確かにサイズが大きいですが(サンゴヘビにはMicrurus surinamensisのような大型種もいますが)、キングコブラや各種フードコブラNajaなどのように "長く"  なるヘビではありません。
そのサイズ感も含めて飼育はしやすいヘビだと言えるでしょう。

餌は原産地ではヒキガエルの仲間を食べているとのことで、飼育下でもアズマヒキガエルを食べてくれます。
冷凍→解凍したものも食べるほか、ヒキガエルでは大きすぎる場合にはヘビやスキンク類への嗜好性も高いので、少なくとも餌について問題となることはあまりありません。

もちろん大きなケージが必要ですし、コブラとは言えそれなりに長くしっかりした牙を持っていますので(前回ご紹介したヒャンやハイはほとんど刺さらないくらいの小さな牙しかありません)、管理に注意が必要なことは間違いありません。
しかし、性格は非常におとなしい個体が多く、給餌の際にバタついたりすることもほぼありません。

またリンカルスといえば毒を飛ばすイメージがあるかも知れませんが、追い詰めるようなことをしない限りなかなかそのような威嚇をすることはありません。
普通の飼育管理をしている限りはリンカルスが毒を飛ばすようなシチュエーションはほとんど考えられないと言えるでしょう(むしろそのような管理をすること自体が問題です)。
また、もう一つの特徴である "擬死" もストレス負荷を考えるとできるだけさせないほうが良いことは言うまでもありません。

ケージ環境としては、床材は土ではなくチモシーなどの繊維質の植物がよく(ナミヘビ類やヒャン・ハイ、同じアフリカ産のサンゴヘビApidelapsなどと異なり積極的に "土を掘って潜る" ということはないようですが、床材に潜ること自体は好みます)、これを20-30㎝ほどの深さに敷いてあげるとその中に潜って過ごします。

ある程度大型のコブラ類は全般に水を好む(遊泳を好む)種が多いようですが、本種も水への依存度は比較的高く、広い水場を作るとそこに身体を浸からせている姿も頻繁にみられます。したがって、サイズに合わせた広いウォータープールを作るとストレス緩和となるようです。

シェルターはチモシーなどの床材に潜るため不要で、ケージ内レイアウトは非常にシンプルで問題ありません。

餌も先の通り、アズマヒキガエルで良いですが、げっ歯類へのリードもできるようです(私はしたことがありませんが、海外の飼育者ではネズミ類を与えている人もいるようです)。
ただしこれまでにご紹介している通り、外温性動物を常食しているヘビにネズミ類などを与えることは消化器系にダメージを与えることになりかねませんので、できればあまり与えない方がいいように思います。

同じコブラ科でも(私は飼育したことがありませんが)、マンバ属DendroaspisやケープコブラNaja niveaなどはかなり気の荒い個体が多いらしいことに加え、運動量も必要でかなり広いケージが必須とのことです。
しかしリンカルスについて言えば、性格が穏やかで極端に動きが多い種ではないため、アクシデントにさえ気をつければ飼育の難易度はそれほど高いわけではないと思います。

大きくフードを拡げるコブラらしいコブラですし、"普通に" 飼育している限りは毒を飛ばしたりすることも稀です。
新規に飼育することが難しくなってしまったことが残念な種であることは間違いありませんが、この素晴らしいヘビをどこかでまた見られる日が来ると良いな、とそんなふうに思っています。

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