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ヘビを飼育する "部屋" の必須条件とは

意外にないがしろにされがちなのですが、ヘビの飼育に当たって非常に重要な要素の1つが ”どんな部屋で飼育するか” です。
もちろん、飼育者それぞれにいろいろな事情がありますから、ヘビにとって理想的な部屋を用意してあげることは簡単ではありませんが、その中でも ”これだけは絶対に外してはならない” という条件がいくつかあるのでご紹介しましょう。


1.日中、一定以上の時間(できれば季節を問わず最低でも5-6時間以上)自然光(太陽光)が当たる部屋であること。

2.窓が2カ所以上あって空気を抜けさせることができること。

3.近くに鉄道路線や幹線道路などが通っておらず、必要以上の震動が室内に伝わらないこと

ほかにもいろいろとあった方がいい条件はありますが、これら3つは最低限必要な条件として押さえておく必要があります。

それぞれについてご紹介しましょう。
まずは "1" の自然光についてです。ヘビは太陽の光によって、1日、1シーズン、そして1年の時間経過を感じています。そして、これによって健全な食欲の亢進や繁殖スイッチ、あるいは日常の脱皮・代謝活動に至ります。

これらは保温のためだけに使用する赤外線ライトや、一定の波長だけを浴びせる紫外線ライトでは補うことができません。これらだけで飼育している場合には、しばしば拒食や代謝異常(脱皮不全他)、繁殖スイッチが入らないなどの健康異常が生じます。
もちろんこれらが起こらない個体も中にはいますが、それはほとんど ”たまたま起きなかっただけ” だと考えた方がよいでしょう。

ヒトやそのほかの動物、あるいはもちろん植物でもそうですが、太陽光を浴びることは生きていくうえで欠かせないことなのです。

続いて "2" の ”空気が抜けること” 。これもヘビを飼育する部屋には欠かせない要素です。

ヘビは高湿で育てた方がいい、という誤解が世の中にまかり通っていますが、実際にはそんなことはありません。飼育下において彼らは、どちらからというと乾いた環境を好みます。それはたとえ自然下で熱帯多雨林や、湿度の高い地域で暮らしている種であっても変わりません。
その理由の1つは、飼育されているケージ内では ”空気の動きが極端に少ない” ためです。
たとえば同じ70%の湿度でも、自然下では空気が抜けていることから、湿気は空気と同時に常に開放された状態です。
 一方で、ケージの中はどうかというと(健全なケージの仕様については改めてご紹介しますが)空気や湿気がこもった状態になります。その中での高湿状態は、潜在的にさまざまな菌類や微細生物を増大させるリスクを持っています。
こうした環境を知っているからなのか、ケージ内で一定以上に湿度が高いとヘビはストレス負荷が高くなり、何らかの健康異常が生じる可能性が劇的に高まります。

ケージ内だけではありません。部屋そのものも高い湿度の状態が続くと、菌類や微細生物、さらには ”匂い” がこもることになります。
ほとんどのペットショップにおいて、店内に動物の匂いが漂っています。これは内温性動物を販売しているところではある意味で仕方ないかもしれません。彼らの管理において、匂いを完全に消去することは現実的ではないでしょう。
しかし、外温性動物ではどうか、というとこれはまた別です。飼育している空気を健全に保てば、それほど頻繁に清掃をしなくても匂いをほとんど完全に消すことも難しくはありません。

”匂い” は飼育動物の ”異常” を知るうえで非常に重要なファクターとなりますので、ただ ”臭くていやだ” という感情的なことだけではなく、普段無臭にしていることは、飼育動物の健康維持のために欠かせないことだと言えます。

最後に3つ目の "震動の有無" についてご紹介しましょう。
もっともこれについては、非常にわかりやすい要素ですから、御理解いただくことも難しくはないかもしれません。
すなわち、ヘビは外耳をもたないことから大きな音にはそれほど敏感ではないにしろ、特に大きな震動は非常に怖がる性質があるというのは、よく知られていることかもしれません。
ヘビとの暮らしを考えるとき、特に賃貸物件などでは近くに震動の元となるものがないかどうか、は重要な要素になります。


ここまで、ヘビを飼育する部屋についての必須条件をご紹介してまいりました。部屋はヘビのケージを収納する "倉庫" ではありませんので、ただ広さがあればいい、とかケージを置きやすい間取りがいいなどということで決めることはできません。

将来的な飼育管理(ゆくゆくどれくらいの大きさのヘビを、どれくらいの数飼育してゆくか)も想定したうえで、彼らにとって快適な "居住空間" を用意してあげること。それが健康や長寿につながる。
よく考えてみれば、当たり前のことかもしれませんね。
  





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