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【コラム】図鑑から得られるもの

飼育に関する "実用情報" の合間にコラム的に "閑話" を挿し挟んでゆこうと思います。
今回ご紹介したいのは "図鑑" の見方についてです。

図鑑と言えば動物の種類を確認したり、その生態や基礎情報についての知識を得るためのもの。
たしかにその通りなのですが、優れた図鑑からはこうした基礎情報だけでなく、飼育に大いに役立つ+αの情報を読み取ることができます。

逆に言えば、最近では "基礎情報" はオンラインでいくらでも取得することができますので、こうした "追加情報" のない図鑑はわざわざ高いお金を出して買う価値はほぼ無いともいえるかもしれません。

”追加情報”。その一番は、当該種の "生息環境" です。

どんな植物が生えているのか、活動場所およびその周辺の光量はどうか、地面の湿り具合はどうか、枯葉などに覆われているのかそれとも下草が生えているか、乾いているなら土や砂の状態、礫の大きさや通気具合はどうか。

樹上生のヘビであればどんな樹木を "使って" いるか(これも誤解が多いですが、樹上性のヘビであってもずっと木の上で暮らしているわけではありません)、水生であれば水の透明度や水生植物の種、魚類ほか同域で暮らしている動物にはどんなものがいるかetc…

1枚の写真からこれらすべての情報が得られることはないでしょう。しかし、できるだけ多くのこれらの情報(を示した写真)が掲載された図鑑が優れたものだということができます。
*図鑑から先、自分で情報を探索するにしてもヒントになるという意味でも有用です。

また、和書においてはほぼ見当たりませんが、洋書の多くは(地域ごとの動物相を紹介した作品が多いこともあって)、それぞれの動物そのものを紹介するいわゆるアルバム的なページの前に、当該の地域の風景写真(こういうところでこれらの動物が暮らしている、という)のページがあります。

さらにヘビの図鑑であってもヘビの情報だけでなく "この地域にはほかにこんな動物が暮らしている" という解説のページを設けてあります。
こうした情報は当該の動物が暮らしている環境を知るのにとても役立ちます。

そして、その情報を参考にケージ内の環境構成に役立てることはとても重要です。

床材の種類(用土のブレンドの割合)、温湿度の設定(高温・低温/高湿・低湿)、水質(硬軟いずれか)や果てはケージのサイズ("地中" を含めて高さがあった方がよいか、底面積の広さが必要かなど)まで、図鑑の情報を飼育環境に役立てることで、飼育個体のストレスを極力減らすことができます。

残念なことに現在、日本語で読める和書でこうした情報を意識した図鑑はありません。
雑誌で紹介されている情報も併せて、お店にいる生体を撮影し、他の本の内容を組み替えた程度の解説文を添えただけの ”パンフレット” のようなレベルのものばかりです(その写真のクオリティが著しく低いことで、”写真集” としての価値も低いのが残念さに拍車をかけていますが……)。

一方で海外で刊行された書籍では、優れた情報を読み取れるものはたくさんあります。
なかにはほとんど論文を集めただけ、というものもあるものの、美しいフィールド写真が多数紹介され、眺めているだけで楽しいという作品も数多く刊行されています。

こうした図鑑を集めた "図鑑洋書" の専門店が国内にあれば、と思うのですが現在はそうした書店はないようです(ペットショップなどで海外の図鑑を置いているところもありますが、スペースはごくわずかですし店主の嗜好が反映されてほしいものがない場合がほとんどです)。

したがって、オンラインで購入することになることから、事前に内容をチェックすることが難しい場合もあり(誌面の数見開きを紹介しているブログもあるので ”書名” で画像検索すればある程度はアタリがつきます)、"当たりはずれ" の覚悟も必要ですが、慣れてくると優れた書籍を刊行している出版社もわかってくることでしょう。

国内種であればフィールドに出かけて行って、その生体が暮らしている場所の情報を得ることもそれほど難しくはありません。
しかしアフリカやオーストラリアなど、遠方に原産地をもつ種ではおいそれと "現場を拝見" というわけにはいきませんので、優れた図鑑が非常に役立ちます。

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