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【コラム】"愛玩" で飼えなくなった特定動物④アフリカンガーターヘビ

"ガーターヘビ" の一般名がついていますが、北アメリカ産のThamnophisとは遺伝的に縁もゆかりもありません。
こちらはコブラ科(Elapidae)の小型のヘビで10の亜種が知られていますが、比較的ペットルートに乗る機会が多いのはアフリカ大陸南部原産のElapsoidea sundevalliiです。
*種小名はスウェーデンの動物学者カール・ヤコブ・サンデヴァル(Carl Jakob Sundevall)から

このヘビはオスの方がメスよりも大きくなることが知られていますが、オスの成蛇であっても成長しても1メートルに満たない程度のサイズにしかなりません。

また、原産地での咬傷事例はほとんどなく、ごくわずかな事故事例でも受傷部がわずかに腫れる程度、あるいは重篤なケースであっても吐き気を催したり意識が若干朦朧とするくらいで、これまでに死亡事例は記録されていません。

このヘビの体色には顕著な特徴があります。
幼蛇の頃はキングスネークやミルクスネークを思わせるようなはっきりとした黒(または青灰色)と明るい褐色(ないし白)のバンド模様(多くの場合、黒い部分は明るい乳白色で縁取られる)。
これが成長するに従って薄れてゆき、成蛇ではほぼ真っ黒(腹面は白)になります。

性格は非常に臆病かつ隠蔽性が高い性質で、原産地では日中、アリ塚の中やその周辺に掘られた穴、あるいは朽木の下などで暑さを凌いでいるとされます。
飼育下でも "ほぼ地中生活" で、索餌・摂餌の際以外で地上を徘徊している姿などはほぼ見られません。
*この手の "地中性コブラ" は、どれもほぼ同じ環境で飼育が可能だと思います。先にご紹介したヒャンやハイ(https://note.com/calliophis/n/nde41e140779c)、ケープサンゴヘビ(https://note.com/calliophis/n/n9aef87506cd8)の他、"幻のヘビ" とも言える地下生活に特化したコブラ・フィジーヘビOgmodon vitianusなどもおそらく飼育するとすれば同様の環境が適していると思います。

餌については、これもまた他の小型コブラと同様、小型の爬虫類に嗜好が寄っています。すなわちニホントカゲをはじめとしたスキンク類、それに飼育するアフリカンガーターヘビのサイズに合わせた "食べられる程度のサイズ" のヘビが餌として利用できます。

原産地では比較的標高の高い場所で暮らしていることもあってか、比較的低温に強い傾向があり、日本の気候でも特に健康を害することもなく、温度管理に極端に気を遣う必要もないでしょう。
湿度が低めの方が調子が良いのも、他の種々のヘビと同様です。


先日ご紹介したケープサンゴヘビもそうですが、この手の小型コブラは隠蔽性が高く、運動量も非常に少ないことからよほど気を抜いた飼育管理をしない限りは咬傷事故や脱走の心配はないものと考えられます。

色々な飼育者がいますし、現実には難しいのかもしれませんが、一律に "コブラ科" で愛玩目的の飼育許可をNGとするのではなく、きちんとした裏付けの元に飼育の可否を決めてほしい、そんな風に感じることもあります。

体色や生態などが(悪く言えば)比較的地味で、 アフリカ産コブラの中でも日本国内ではあまり知られていない種のようですが、いつの日かまた、真っ当な申請手続きによって飼育許可を得ることができるようになるといいな、と思わせられるだけの魅力をもった素晴らしいヘビの1つだと思います。

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