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生体を購入(入手)する際の注意

ヘビを長生きさせるために最も重要なポイント。
それは "どこで(あるいは誰から)ヘビを購入・入手するか" です。

どんなに飼育環境を万全に整え、ヘビのストレスができるだけ少ない環境を用意したところで元々の管理が良くなければ、あるいは入手したその時点での健康状態が著しく悪いようであれば、その後長くヘビを生かすことは簡単ではありません。

したがって、どのようなお店から(あるいはブリーダーから)ヘビを購入するかということは最も重要と言えます。

イベント会場で生体を買うことの大きなリスク

まず、ことさら "最初の1個体" すなわち一番最初に飼おうというヘビについては、いわゆる即売イベントで購入することは極力避けた方が良いでしょう。
いえ、こういうソフトなお伝えの仕方ではわかりづらいかもしれませんので、はっきりと即売イベントで購入することはやめてください、とお伝えした方がいいかもしれません笑


現在、ほぼ年間にわたって全国各地で爬虫類を始めとした愛玩動物の即売イベントが行われています。年々来場者数も増えているようで、期間中の会場は多くの人でごった返しています。
そうした中で、特に臆病な動物であるヘビを1日中、あるいは時に数日間にわたって多くの人の目にさらされるケースの中に閉じ込めておくと言うのはほとんど "狂気の沙汰" と言ってもよいでしょう。

誤解のないように申し上げておきますが、私は動物愛護の運動を声を上げて行うつもりは毛頭ありませんし、過激な方法でそうしたことを行う人々に対しては恐怖すら感じます。
しかし、彼らがしている "動物の即売イベントへの批判"、そのこと自体にはほとんど両手を挙げて賛成という気持ちもないわけではありません。

かくいう私も何度か爬虫類の即売イベントの会場を訪れたことがあります。しかし毎回必ず、輸送中なのか、あるいは会場においてなのかはわかりませんが、極度のストレス負荷によって衰弱し、もうほとんど亡くなっているか、あるいは生きていても文字通り "虫の息" のような状態になっているヘビを見て、いたたまれなくなりすぐに会場を後にしました。

本当にヘビが好きであるからこそ、とてもではないですが、その場にいられるだけの神経の図太さを持ち合わせていなかったのです。

例えば小売店の店頭に並べられている時の健康・ストレス状態を10とした場合に、イベント会場における数値はほとんど3-4、まだ強い個体であってもおそらく
6-7程度と見受けられます。
そのような個体を購入し、自宅のケージで飼育環境を立ち上げるとなると、かなり神経を使いますし、仮に無事にヘビとの信頼関係を築けたとしても、何らかの事態をきっかけにまた昔のストレス状態に戻らないとも限りません。


こうしたことを鑑みると、特に慣れていない頃にイベント会場で生体を買うことは避けた方がいいだろう、という結論に達するわけです。

お店で生体を購入する際の確認事項

イベントで購入できない、となると必然的にブリーダーあるいは爬虫類専門店で購入するということになります。
このうち、ブリーダーと直接取引するという方法は生体の飼育管理者自身から直接話しを聞いた上で購入できること、そして購入後のさまざまな健康異常について相談できるという点などから最も安心できる手段です。

しかし、よく知られた種であっても国内にはまだ "この人なら" と安心できるブリーダーはいませんので、海外から個人輸入するということになります。
これには少し面倒な手続きが必要になります。改めてその方法についてはご紹介するとして、ここでは最も一般的だろうと考えられる "爬虫類専門店で購入する" という場合の注意点についてご紹介しましょう。

ご存知の方も多いと思いますが、販売されているヘビにはWC(WILD CAUGHT:野生個体を捕獲したもの)とCB(CAPTIVE BRED:養殖個体)がいます。
*厳密には原産地で養殖したFH(FARM HATCHED)や、WCの個体が卵や仔ヘビを産み、それを育てて販売しているCH(CAPTIVE HATCHED)といった個体もいます。
 
いずれにしろ、販売されているそのお店にやってくるまで、それぞれの生体にそれぞれの経緯があるわけです。そこで、購入したいと思った生体について、その "素性" をお店のスタッフに聞くことは非常に重要です。

具体的にはCBであれば、どこの国のどういう人が繁殖させた個体なのか。ブリーダーから直接購入して販売しているのか、あるいは問屋を経てそのお店へやってきたのか。
海外のイベントや、海外の問屋を経て日本へやってきた場合には、国内に到着してからどれくらい日にちが経過しているのか、といったことも聞いてみた方がよいでしょう。
ある程度日にちが経過していれば、いわゆる "時差(ヘビが時間の感覚を備えていることについてはまた改めてご紹介しますが、太陽光によって時間の感覚を感じていることは以前にもご紹介しました)" によるストレスは少なくなっているでしょうし、あるいは日本の "水"(水は国内と国外で最も差のあるものの1つで、特にヘビは水に非常に敏感な傾向があります) にすでに慣れている可能性も考えられます。

一方、WCの個体であればどこで捕獲されたものか。捕獲された日にちまでわかればベストですが、それが難しい場合でも海外であればせめて出航日と国内への到着日は確認しておく必要があります。
それによって同じく、ヘビが極端にストレスを受けている期間(航行期間を含めた輸送期間や待機期間)がどれくらいなのかについて大まかにでも把握できるためです。

お店に着いてから時間が経過している場合には、そこでの管理方法についても尋ねる必要があります。すなわち餌にはどんなものをどれくらい、どのくらいの給餌スパンで与えているか。その餌は食べているのかどうか。
また、これまでにそのヘビについての問い合わせはどれくらいあったかも重要です。(ケージからヘビを出した回数と関係があります。頻繁に尋ねられていれば出し入れする回数は多くなるでしょう:店内でのストレス負荷が大きくなる)


特に重要なポイントを駆け足でご説明しましたが、最低限これらの質問に回答できるスタッフがいないか、あるいは回答に問題がある場合(例えば以前に "強制給餌だけで生体を管理している" というお店があると聞きました )には、そこでの購入は控えた方がよいでしょう。

"もう2度と入荷しない" などと言われることがあるかもしれませんが、私の知る限りでは、1度だけしか流通に乗らなかった種などというのは稀ですし、そうした種は"極端に巨大化する"、"原産地での個体数が著しく少ない:にも関わらず何らの理由で捕獲規制がなされていない"、"そのヘビの嗜好性の高い餌の入手が極端に困難である" などの理由がありました。そのようなヘビはどのみち、一般的な家庭では飼育を始めたとしてもうまく行かないケースがほとんどだと思います。

また、これはお気づきの方も多いかもしれませんが、例えば関西のとあるお店で入荷した珍しい種は、同時期に関東のお店でも入荷しています。問屋への入荷状況によってこういう事態が起きるのでしょうが、"そのお店でしか買えない" という生体はほとんどいないと言えます。

今回もだいぶ長くなりましたので、この辺りで一旦筆を置こうと思います。
ここまでお読みいただけた方には、改めてヘビの飼育において "どこで購入するか" の重要性をご理解いただけたのではないか、と考えております。

なお、 個別のご質問などございましたら、X(旧twitter)のDMでもお受けしておりますので、お気兼ねなくお尋ねください。
ご質問が集中した際、お返事が若干遅くなることもございますが、何卒ご容赦いただけましたら幸いです。

皆様の飼育されているヘビ、爬虫類あるいはそのほかの動物。その健康長寿をお祈りしております。

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