ヘビの餌:餌動物の飼育6 ドジョウ
ヘビの餌として有効な淡水魚は、栄養価を鑑みるとそれほど多くありません。
例えば、コイ科の魚類については ”サイアミナーゼ(チアミナーゼ)” というビタミンB1を分解する酵素が含まれているという情報があり(実際にどのような悪影響があるか、悪影響があるのかどうかは個人的には判断がつきかねます点は記しておきます)、ヘビの健康への影響も懸念されます。
その他の魚類ではハゼ科のヨシノボリや、同じハゼの仲間のドンコなどは嗜好性が高く、栄養価についてもおそらく及第点だと思います。
しかしこれらを差し置いて、淡水魚の中でヘビの餌として最も優れているのは何と言っても "ドジョウMisgurnus anguillicaudatus" です。
ドジョウの栄養価で特筆すべきは何といってもカルシウム含有量の豊富さで、リンやマグネシウムとの含有バランスもよいので、吸収効率もよいと思われます。
水生のヘビではこのドジョウだけでの給餌でも問題なく長期飼育が可能です。
飼育や繁殖も容易で、ほぼいいところしかない餌動物だとも言えますので、水生、あるいは魚食生のヘビを飼育されている場合には、ぜひとも自家繁殖をお勧めしたいと思います。
難しいことはほとんどないのですが、以下に飼育に当たっての要点をいくつかご紹介いたします。
水槽の仕様と ”底材”
繁殖を狙うのであれば、ある程度の数を同居させる必要があります。目安は10個体以上、この数に十分な広さの水槽を用意します。
目安としての理想的な水槽のサイズは以下の通りです。
横方向:60㎝以上
奥行き:60㎝以上
高さ:60㎝以上
またドジョウの飼育で絶対に気を配る必要があるのが ”飛び出しの防止” 、そして ”十分な空気孔” です。
水槽は半透明の衣装ケースなどを利用できますが、天面は ”ごみのカラス除けネット(このような製品です:K.G.K ゴミ散乱防止 ごみかぶせネット カラスネット イエロー 2mx3mの詳細情報 - Yahoo!検索)” で覆い、ビニールひもなどで水槽の周囲を縛って固定、ドジョウの飛び出し防止とします。
*給餌の際などは逐一ひもをほどき、ネットをはずして作業を行う。
繁殖のためには底に土、そして枯葉を敷く必要があります。なぜならドジョウは水底の枯葉や水草などに卵を産み付けるためです。
この際に使用する ”底材” の土も、ヘビに使用する用土を利用できます。
ドジョウを水槽に納入する10日から2週間前に水槽をセッティングし、枯葉を水に大量に投入しておくと、ドジョウを入れる頃に水底に沈みます。枯葉の投入は水質および濁度の安定にも効果的です。
餌は動物性のものを何でも食べる
ドジョウは餌に嗜好の偏りはなく、動物性の餌であれば何でもよく食べてくれます。
したがってムカデ(ヘビの餌:餌動物の飼育5 ムカデ|cobra_thief (note.com))と同様、"サプリメント" としても利用できます。
また言葉は悪いですが、ヘビやそのほかの動物の餌の ”残飯処理班” としての価値も高いと言えるでしょう。
ただし一応、嗜好性の高い餌・低い餌というのはあり、エビ類やイカ(イカ刺し)、アジなどの青魚は好む傾向がある一方で、肉類はあまり好きではないようです。
*肉類は油脂分が多いので、水質が悪化しやすいこともあり、ドジョウの餌としては使用しない方がよいでしょう。
繁殖~孵化のコツは "放っておく" こと
ドジョウの産卵は、親のドジョウや飼育環境に問題がない限り5月~6月頃に行われます。
一度に産む卵の数は数万単位ともされますが、実際、交尾・産卵がうまくゆくと無数の卵が枯葉の周辺に産み落とされているのがわかります。
卵の孵化には通常数日を要します。
産卵、孵化後の飼育管理で特筆すべきことはありませんが、交尾から孵化まで、とにかく "できるだけ放っておく" ことがよいでしょう。
ドジョウは栄養価・嗜好性ともに高く、冷凍→解凍(幼蛇に与える場合などサイズが大きすぎる時には、冷凍したものを食べやすいサイズに刻んでも食べてくれます)したものも食べるヘビが多いため、非常に重宝します。
また、ヘビだけではなくイモリなどでも(小さく刻んだ)ドジョウを食べる個体は少なくありません。
栄養価、嗜好性、使い勝手とも優れた餌動物であるドジョウ。ヘビに利用できる餌動物のなかでもトップクラスに利用価値が高いものの1つと言えますので、ぜひ試してみていただけたらと思います。