『人を動かす原則』レス・ギブリン著/弓場隆訳

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扉には次のようにありました。

最も成功している医者、弁護士、セールスパーソンが、
最も知的だったり最も優れた技能を持っていたりするとはかぎらないし、
最も幸せな夫婦は美男美女というわけではない。
仕事であれプライベートであれ、
うまくいっている人の共通点は、
人間関係の技術、人との接し方を心得ているということだ。
基本的な一般原則を理解して実践するという点で、
人間関係の技術は他のどんな分野の技術とも似ている。
あなたは、何をすべきかだけでなく、なぜそれをするのかを知らなければならない。
人を動かすということは表面的なものではなく、
一般原則にもとづく確固たる技術である。
私たちが暮らすこの社会では、
他人のことを考慮しなければ、
成功や幸福を手に入れることはできない。
               レス・ギブリン

第1部 人間関係で最も重要な「自尊心」を学ぶ

「2 相手の自尊心を満たすことを心がける」に、4つの重要事項があった。

人間の本性に関する4つの真実を心に銘じる
1 人はみな自分本意である
2 人はみな他の何よりも自分に興味がある
3 人はみな自分が重要な存在であると感じたがっている
4 人はみな承認欲求を満たすために他人に認めてほしいと思っている
人はみな、自分の自尊心を満たしたいと思っている。
自分の自尊心がある程度満たされて初めての自分のことを忘れ、他のことに意識を向ける余裕が生まれる。自分を好きになることができた人たちだけが、他人に対して友好的で寛容な精神を発揮することができるのである。
―――自尊心が低いと自己中心的になる

 これに対して、

人々が仲よくやっていけるのは、お互いの自尊心が高いレベルにあるときである。自尊心が高い人は明るくて心が広く、他人の考え方にすすんで耳を傾ける。自分の基本的なニーズを満たしたから、他人のニーズのことを考える余裕があるのだ。そういう人は精神的に安定しているから、自分が間違っていることを認めることができる。批判や侮辱に対しても冷静に受け流すことができる。なぜなら、そんなことぐらいでは自尊心は揺らがないからだ。
―――相手の自尊心を高めることで問題は解決する
自尊心が低いと、ちょっとしたことでも不安材料になるし、少し厳しいことを言われるだけで大惨事のように思える。何気ない発言の中に嫌味や皮肉を感じ取る過敏な人は、自尊心が低いために苦しんでいる。その一方で、やたらと自慢をしたり見せびらかせたりする人も同じ問題を抱えているのが実情だ。
他人の低い自尊心によって引き起こされる事態にうまく対処するためには、その人が自分を好きになるように手伝ってあげればいい。

とある。

point 誰もが自尊心を満たしたいと思っている。自尊心を高めることで人を動かすことができる。
―――すべての人を大切に扱えば、必ずよい人間関係を築くことができる。 ヘンリー・カイザー(アメリカの実業家)




第2部 相手を受け入れ、価値を高める

―――周囲の人を惹き付ける3つの方法
1 相手を受け入れる
2 相手を承認する
3 相手を高く評価する

そのための方法として、

1 相手を待たせない
2 すぐに会えないから、相手の存在を確認していることを伝える
3 相手に感謝の意を表する
4 相手を特別な存在として扱う

を挙げている。


ここで、次のキーワードが上がってくる。

―――人々は、「自己重要感」を満たしたがっている
あなたは他人に自己重要感を与える力を持っている。

と述べている。

――相手の重要性を認める
政府は外交交渉で「相手国の重要性を認める」という言い方をよくする。私たちはその教訓をふだんの人間関係に応用すべきだ。たとえば、上司と部下の関係について考えてみよう。部下のあいだで不満の原因になるのは次の7項目である。どの項目をとっても、部下が自分の重要性を認めてもらっていないと感じていることに注目してほしい。
1 提案しても評価してもらえない
2 不満を言っても解決してくれない
3 励ましてくれない
4 人前で注意されて恥をかかされる
5 意見を求めてくれない
6 進捗状況を教えてくれない
7 えこひいきをする

とある。

―――相手に重要感を持たせる4つの方法

では、

1 相手が重要な存在だと心から思う
 それは、相手が重要な存在であることを自分に言い聞かせることだ。そうすれば、あなたの思いはおのずと相手に伝わる。さらに、これによって小手先のテクニックの必要性を排除し、誠実さにもとづく人間関係を築くことができる。
2 相手に注目する
3 相手と競い合わない
 他人に好印象を与えたいなら、相手に感銘を与えようとするのではなく、相手に感銘を受けたことを伝えるのが最も効果的な方法だ。つまり、自分の素晴らしさを認めてもらおうとするのではなく、相手の素晴らしさを認めることが大切なのだ。相手の素晴らしさを認めていることをアピールすれば、相手はあなたに好印象を抱き、「なんて利口で素敵な人だ」と思う。しかし、自分の素晴らしさをアピールすれば、相手はあなたに悪印象を抱き、「なんて愚かでつまらない人だ」と思う。
4 「間違いを指摘することが適切なのか」を考える
 たいていの場合、私たちが相手の間違いを指摘するとき、その目的は事実を明確にすることではなく、相手のプライドを傷つけてでも自己重要感を満たすことである。「相手が正しいか間違っているかは本当に重要か」と自分に問いかけよう。相手のプライドを犠牲にしてまで、ささいなことで勝とうとしてはいけない。自分のプライドを満たすために小さな勝利を得ても、相手のプライドを傷つけると大きな損失をこうむることになる。
point 相手に自己重要感を与え、相手の素晴らしさを認めよう。

とある。

―――誰もが他人をコントロールする力を持っている

では、

(中略)私たちは催眠術師ではないが、他人を何らかのかたちでコントロールしていることは確かなのである。
私たちはみな、周囲の人の行為と態度に影響を与えて、コントロールする力を持っている。にもかかわらず、多くの人はその力を自分のために役立てるより、むしろ自分の足を引っ張るかたちで使ってしまっていることが多いというのが実態である。だから、もし他人から無礼な扱いを受けるなら、多くの場合、どんなにそれが不当なものであったとしても、実は、あなた自身がそのような扱いを求める振る舞いをしていたと言える。したがって、あなたは他人に対して、自分がそうしてもらいたいような行為や態度を心がける必要があるのだ。
私たちはふだんの人間関係で、自分の態度が相手の態度に反映されているのを見る。まるで鏡の前に立っているように、自分がほほ笑むと相手もほほ笑むし、自分がしかめ面をすると、相手もしかめ面をする。自分が怒鳴ると、相手も怒鳴り返す。
この原理を知れば、他人の感情を驚くほど巧みにコントロールすることができる。たとえば、もし今にも口論になりそうな状況に遭遇したら、自分の声の調子を下げてソフトにしてみよう。そうすれば、相手の怒りを鎮めることができる。
熱意は相手に伝染しやすい。
そして、自信は信頼を生む。自分の熱意で相手の熱意をかき立てることができるのと同様、自信満々に振る舞うことで相手の信頼をかき立てることができる。


―――どんな態度が人を惹きつけるのか
1 自分の体の姿勢に気をつける
 (中略)自信のある人は堂々と胸を張って歩く。背筋を伸ばし、目は前を向いて目標を見据え、それを達成するという確認にあふれている。
2 声の調子を加減する
 自分の声を聞いてみよう。それは絶望と希望のどちらを表現しているだろうか。不平を言う習慣がしみついていないだろうか。自信に満ちた声で話しているか、口ごもりながらぼそぼそと話しているか、どちらだろうか。
3 笑顔の魔法を使う
 心のこもった本物の笑顔を見ると、相手は親近感を抱く。
人々によりよい振る舞いをさせる唯一の方法は、チャーチルのアドバイスに従うことだ。すなわち、「他人に美徳を身につけさせる最善の方法は、その美徳をすでに持っていることを本人に知らせることだ」というアドバイスである。
point 自らの振る舞いは、良くも悪くも相手に影響する。自分が堂々と振る舞えば、相手も信じてくれるようになる。



第3部 言葉や振る舞いで人を動かす

話す力を磨く
―――うまくいっている人は言葉を巧みに使いこなす
1 完璧主義をやめる
2 すごい雑談をする必要はない
3 ウォーミングアップをする
4 相手に自分について話をさせる
 会話上手になる秘訣は、利口そうなことや勇ましい体験談を披露することではなく、相手に打ち解けた状態で話をさせる雰囲気をつくることである。
5 相手の興味をひく質問をする
 人間関係で犯してはいけない間違いがある。それは、相手を軽んじることだ。あなたも人間だから、自分について話したくなるのは当然だ。あなたは相手に好印象を持ってほしいと思っている。しかし、自分のことより相手のことに焦点をあてたがほうあなたの評価は高くなる。
6 頼まれたときにだけ自分について話す
7 楽しいことについて話す
8 自分に手紙を書く
9 相手をからかったり皮肉を言ったりする衝動を抑える
point 相手を思いやってコミュニケーションをとることこそが、成功と幸福への近道である。

とある。

―――人間関係がうまくいく人は聞き上手である
成功者は自分の口を閉じて相手に話をさせるように持っていく。
―――相手の話をじっくりと聞くための7つの技術
1 話し手の目を見る
2 興味を持っている素振りを見せる
3 相手のほうに身を乗り出す
4 適切な質問をする
5 相手の話をさえぎらずにもっと話してもらう
6 話し手の話題に付き合う
7 自分の主張を理解してもらうために相手の言葉を引用する
point 相手の言葉に耳を傾けるだけで、相手はあなたを認めてくれる。





―――説得とは、プレッシャーをかけることではない
私たちは日常生活の中で、自分の意見を相手に受け入れてもらうために説得する必要のある状況をたびたび経験する。意見の相違は配偶者や子ども、上司、部下、顧客とのあいだに生じやすい。そんなときはついつい口論になりがちだが、そういう事態を避けて、相手をうまく説得する技術を身につけなければならない。
議論に勝つ唯一の方法は、相手に考えを変えてもらうことだ。
その秘訣とは、究極的に本書のテーマでもある。
人を動かしたいなら、人間の本性に逆らうのではなく、人間の本性に合ったやり方を選択しなければならない。
人間の最強の本能のひとつは「自己保存」である。つまり、自分の肉体と精神を守ることだ。私たちは自分を守るために、どの考えを受け入れるかに身長を期す。だから自分の信念に反する考えには耳を貸そうとしない。自分の考えを受け入れてほしいなら、相手の潜在意識に働きかけなければならない。なぜなら、潜在意識が受け入れないかぎり、人々は他人の考えを本気で受け入れないからだ。
―格言 意に反する考えを押しつけられても、その人の考えは変わらない。
この格言は、「潜在意識で考えを受け入れても、本心は違う」ということを教えてくれる。その人は口先では「はい、わかりました」と言って賛同しているように見せかけるだけで、心の中ではその考えを受け入れていない。自分の考えを相手の潜在意識によって受け入れさせる唯一の方法は、暗示の力を使うことである。なるべく気づかれないように相手の潜在意識に自分の考えを「忍び込ませる」のだ。




―――議論に勝つための6つのルール
1 相手に自分の考えを述べさせる
2 答える前に間を置く
3 100%勝とうとしてはいけない
4 自分の意見を謙虚かつ正確に述べる
 私たちは自分の意見に反対されると取り乱す傾向があるが、これは要注意だ。事実を冷静に述べることは、相手に意見を変えさせる最も効果的な方法である。
5 第三者を通じて自分の主張をする
6 相手の面子を保つ
point 議論とは相手をねじ伏せることではない。自分と同じ考えに「なってもらう」ことである。





―――ほめ言葉が人間関係を円滑にする
―――毎日、「小さな奇跡」を起こそう
毎日、心をこめて誰かをほめて、その人がよりよく振る舞うのを観察すればいいのだ。
―――感謝の心を伝える6つのルール
1 誠実な気持ちで言う
2 もぐもぐ言うのではなく、はっきり言う
3 相手の名前を言う
4 相手の目を見る
5 感謝するための努力をする
6 相手が最も予想していないときに感謝する



―――相手を注意する方法を工夫する
人間関係で犯しがちな間違いのひとつは、他人の自尊心を傷つけて自分の自尊心を高めようとすることだ。
1 相手を注意するときは完全に二人きりでする
2 相手を注意する前にほめ言葉で前置きする
3 個人攻撃しない
4 答えを用意する
5 協力を要請するのではなく依頼する
6 注意するのは1回に1度にする
point 自尊心を傷つけるような注意の仕方ではなく、相手をよりよい方向に導くような注意の仕方を心がける。
―――相手を心から信頼すれば、誠意を尽くしてくれる。 ラルフ・ウォルド・エマーソン(アメリカの思想家)

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読了し、人を動かすとは、テクニックではないと感じた。

テクニックではなく、言葉でもない。

「何を言うかではなく、誰が言うかである」という言説があるが、結局の所この言葉によって、自分は思考が停止していたかもしれないと振り返ったのである。

陰ながらの行動や習慣が人間性や人柄をつくり、結果を残したが権威となって、人を動かすのか?という一応の結論に至っていたように記憶していたのである。

自らを振り返ると、大した結果は残していないし、そんな自分が何を言ったところでぼちぼちの成果しか得られないだろうと諦めていたところもあった。

この本は、人を動かすのは、「自尊心」だと焦点をあてたものであり、「相手の自己重要感を高めること」だと核心を突き、核心を具体化する方向性と方法について述べている。また、具体例も多く散りばめられ、理解しやすい。

人間の本性に関する4つの真実を心に銘じる

1 人はみな自分本意である
2 人はみな他の何よりも自分に興味がある
3 人はみな自分が重要な存在であると感じたがっている
4 人はみな承認欲求を満たすために他人に認めてほしいと思っている

人間の本性が4つあるということを置いておくだけが最も重要と考える。

もし、現状に不満があるのなら、

まずは、自分自身の「自尊心」を常に高い状態にできるよう最善を尽くすことだ。生活や仕事をいていれば、「自尊心」が傷つけられることはある。そのとき、反論していれば、自己中心的になる。自分の自尊心回復のために、他人の自尊心を傷つけるという沼から出られない。

そして、ある程度「自尊心」を高めることができたら、「相手の自己重要感を高めること」に焦点をあてる。受け入れる、認める、高く評価する。

そして、4つの方法「心から相手を重要だと思う」「相手に注目する」「相手と競わない」「間違いを指摘することが適切なのか考える」がある。

この2つの大原則を押さえつつ、態度では自信をもつことが大切。

そして、

話す・聞く・説得する・ほめる・注意するの5つに分けて、行動を具体化しながらポイントを押さえることが大切なのだ。

話すとは、言葉を巧みに使いこなすこと。秘訣は、相手を思いやってコミュニケーションを取ることである。

聞くとは、人間関係がうまくいく聞き上手のこと。秘訣は、じっくりと相手の話に耳を傾けること。

説得とは、プレッシャーをかけることではなく、相手に考えを変えてもらうこと。秘訣は、自分と同じ考えになってもらうこと。

ほめるとは、円滑にすることだ。ポジティブなエネルギーを与えること。

注意するとは、相手の自尊心を傷つけずに、よりよい方向に導くような注意の仕方に工夫すること。

自分に落とし込むためには、定期的に振り返ることが必要だろう。「自尊心」「相手の自己重要感を高める」の2つをいつも心に留めておくことだけでも効果が出てくると考える。

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