3 どこで歯車がずれたんだろう
夫がよく呟く。
「いつまでもお嬢様感覚が抜けないな、おまえは」
と。
…そう言われてもなあ。
わたしの「普通」は
18年×365日×24時間、
つまり
15万7,685時間、
946万800分、
オギャーと産まれてから高校を卒業するまでの
生きてきたその経験から作られてきてるわけで。
意識と無意識、覚えていることも覚えていないことも
すべてがわたしという人格の構成要素なの。
それをさ、
全部捨ててオレの946万800分に合わせろよ。
なんて言われてもムリなんだよ。
あなたがお嬢様感覚だというのは、
例えば
ブラジル産の98円/100gの鶏モモでななく
国産の168円/100gの鶏モモを選ぶこと
ジュースという名前の人工甘味料と着色料と合成香料の混合物よりも
ストレート果汁100%のりんごジュースを選ぶこと
特売のだし入り味噌よりも
自然食品屋の手作り味噌を選ぶこと
ファミレスでレトルトパックを温めて盛りつければ完成するような980円の食事をいただくよりも、素材にこだわるオーナーシェフのお店で1500円のランチをいただくこと
ぐらいじゃあないだろうか。
このことについては、ひとこと物申したい。
お嬢様感覚ではなく、母親としてのわたしのデフォルトなのだよ。と。
「子供たちはこれから体を作っていくのだから、人工的な添加物が入っていないものや、自然な材料のものを食べさせたいな」
っていう感じ。
水と空気と食べ物と。
これが、人間のからだを18年かけて作り上げる材料だと
わたしは考えている。
かわいい我が子の946万時間をなるべくいいもので満たしたい。
つい、そう望んでしまう。
これを「お嬢様感覚」だと言われても、どうもしっくりこないのだ。
このデフォルトに、家計がついていかないのであれば
その分余分に稼げばよいだけではないか。
夫は会社員で、給料は決められた額。
家のローンに、保険料、固定資産税やら少々の積立などの固定費や3人の子供たちの教育費を差し引くと、満足のいく生活費は残らない。
満足するためには、妻も働けばよいじゃないか。
なんなら、会社員の夫だって、ネット副業とかしていくらだって副収入は得られるはず。
自分たちが満足のいく暮らしをするための金額がもし少し足りないなら、パートに出よう。ハケンで働こう。なんなら無料でオンラインショップを立ち上げて、ネットショップを運営してもいい。
わたしたち主婦の働く場は今はいくらでもあるんだもん。
自然とそういう考えで、ずっと働いてきた。
わたしの場合は訪問販売の化粧品だったり、エステティシャンだったりしたのだが、
そういうフリーな働き方で、母や妻の役割とを上手くやってきたつもりだった。
色んなことがあったけど
そこそこ充実したママライフを10年以上過ごしてきた。
はずだった。
なのに、一体どこで歯車がずれたのだろうか。
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