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「ミランの新たな壁」トモリと、新たな不安

 ミランが1月のメルカート(移籍市場)で獲得したCBフィカヨ・トモリが、評価爆上げ中です。前回のイバン・ペリシッチに続いて、今回もそんなに話題になっていない選手の活躍の評価の高まりについて記したいと思います。

獲得の経緯

 ミランは1月の移籍市場でCB補強を最優先に考えていました。ずっと狙っていたのはストラスブールのモハメド・シマカンでしたが、選手とは合意したものの、クラブ間の交渉が難航していたことが伝えられています。それでもミランは説得に自信を持っていたようですが、そうこうしているうちにシマカンが負傷。選択肢の一つだったトモリで手を打ったという流れです。

信頼獲得まで時間は掛からず

 シモン・ケアーの離脱ですぐに出番がきたトモリ。チェルシーで全く出番がなかったことに加えて、イタリア初挑戦ということで、不安は大いにあったでしょう。それでもすぐに起用しなければいけないチーム事情でいきなり存在感を示したことで、ファンの心をつかんだ印象です。

揺れるピオリ

 問題はケアーが復帰してから。加入してから好印象を続けるトモリですが、ケアーとロマニョーリのCBコンビはなかなか手をつけられないものです。

 2月21日に行われたミラノダービーの前日会見では、トモリをロメル・ルカクにぶつけないのかと問われたステファノ・ピオリ監督がこう語っています。

「彼は良い状態だ。ほかの選手とは異なる特長がある。ただ、技術的にもフィジカル的にも、トモリはラウタロやサンチェスに対応した方がうまくいくだろう。アグレッシブだが、そういったフィジカル能力の高い選手に対抗する肉体はない。彼のパフォーマンスには満足している。彼は良い準備をしているよ」

 その結果、0-3の完敗。(後半序盤のインテルGKハンダノビッチの好守がなければもう少し競ったはずですが…)

 トモリ起用の機運が高まります。

「重要な決断」

 すると2月27日、ミランの練習で大きな変化があったようです。ローマ戦の前日、ロマニョーリが外れてトモリを起用する案が浮上。どのメディアも、トモリが先発するようだ、と伝えました。そのローマ戦でトモリは大活躍。ミラン公式のファン投票でMVPに選出されるなど、高評価連発でした。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』が「6.5」だったものの、『コッリエレ・デッロ・スポルト』は「7」、『トゥットスポルト』は「7.5」の選手採点。『TMW』は「ミランの新たな壁」と称賛し、ファビオ・カペッロ氏は「トモリのようにスピードのあるDFがいることは幸運だ。前半のボルハ・マジョラルに対する守備はファウルもせずに止めてファンタスティックだった」と語っています。

 さらに、インテルのレジェンド、ジュゼッペ・ベルゴミ氏は「トモリを選んだことは重要だった」とも話しました。

一皮むけるか、トラブルの予感か…

 ベルゴミ氏の発言には前置きがあり、「ロマニョーリは困難な時期に直面したということであり、落第というわけではないかもしれない」ともコメントしています。また、ミラン幹部のパオロ・マルディーニ氏はローマ戦直前に「もちろんロマニョーリはうれしくないだろう。当然だ。ただ、ローテーションは誰にでもある」とフォローしていました。

 思えば、ロマニョーリの現在地はかなり難しいものです。主将でありながら、ミランのリーダーはズラタン・イブラヒモビッチと誰もが口にする日々。ディフェンスラインもケアーの経験が不可欠と言われ、キャプテンマークの威厳は薄い印象を受けます。健全な競争でトモリが出てきたとしても、ロマニョーリにしたら面白くない状況でしょう。

 ミランはチームの輪を大事にし、その一体感で走り抜けてきた若いチームです。だからこそ、ピオリ監督はインテル戦で“序列”を忘れなかったようにも映ります。ただ、トモリが称賛される今、ロマニョーリを外す理由ができました。

 ロマニョーリが奮起してハイレベルなパフォーマンスと取り戻すというのが、ミランにとって最高のシナリオ。最悪のシナリオは……。

 インテルの元主将アンドレア・ラノッキアを引き合いに出そうかと思っていましたが、長くなるので、今回はここまで(笑)。

 お読みいただきありがとうございます。

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