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PCノベルゲーム良作まとめレビュー【DL版/40作品↑】

初めましての方はどうも、calcと申します。

今回はサマーセールの時期も近づいてきたということで、おススメのノベルゲーム(ビジュアルノベル/アドベンチャー/シナリオ重視のエロゲー等)を広く浅くレビューしていきたいと思います。新たな作品との出会いのきっかけになれば嬉しいです。

作品数が多く定期的に更新している関係上、記事が非常に長いので目次を使ってカタログのようにご覧いただければと思います。後日(いつか)最上位作品と推し作品を詳細にまとめた記事を投稿する予定です。



注意点

・R-18作品の掲載リンクには年齢認証があるので未成年の方は注意してください。
・対象年齢の判定はDL版を基準としています。
・ストアページは筆者が購入したサイトを中心に掲載しています。
・とにかく伝えたい情報を書きなぐったので、読みにくかったり誤字脱字があったりしたらスミマセン。
・ネタバレについては極力配慮したいと思っているので、あらすじについては作品の概要のみにとどめてほぼ書いていません。


評価基準

最優先
シナリオの完成度、キャラクターの魅力度。

加点事由
演出面のクオリティ、世界観の独創性、インパクトの強さ等。

とはいえ厳格に点数を振ったわけではないので、上の方を除いては誤差の範囲かなと思います。好みのジャンルで探してもらってもいいかも。

コスパについては考慮していません。ただシナリオの長さは満足度に影響し得るとは思っているので、参考までにおよそのプレイ時間を記載しました。


また一部作品には注意事項を記載しています。

①鬱要素…鬱・胸糞シーン等が一定の割合を占める作品。(ある意味で鬱要素を楽しむ作品。)
②グロ描写…血しぶきの演出やグロテスクなCGが存在する作品。
③抽象的作品…人によっては面白さがわかりにくい作品。

それぞれ程度や割合によって軽度、中度、重度の3段階で分けていて、①②は重い作品を回避したい人向けのフィルターとして、③は購入優先度を検討する上で機能してくれたらと思います。

ただ正直重い作品の方が評価は高いです。


それではレッツゴー。


SSS+

家族計画 (R-18)

引用: DMMストアページ

プレイ時間: 20時間~
注意事項: 鬱要素(中)

「家へ帰ろう──。」

筆者とほぼ同い年のレジェンド作品。天涯孤独、排他的な性格になってしまった主人公の下に似たような境遇にある人々が集まり、ひとつ屋根の下共同生活を始めることに。他人同士が疑似家族を演じて過ごす「家族計画」を描いたハートフルコメディADV。
名ライター田中ロミオ氏が山田一名義でシナリオを手掛ける。癖の強い独特の文体が特徴的であるが、比較的まともな主人公の周りに大量の天然キャラが集まるという構図の下、セルフツッコミ、パロディ、下ネタ、不謹慎ネタのオンパレードで描かれる日常パートは爆笑必死。あまりに速度のあるギャグの連発で最序盤から神ゲーを確信したレベル。
もちろん中盤以降はシリアスな場面もあり、特に各ヒロインルートではヒロイン達の壮絶な過去が明かされる。かなり鬱度高めのキツいシーンもあったが、それをバネとして「他人の対義語としての家族」の在り方をプレイヤーに伝える圧倒的なメッセージ性、そして主人公とヒロインの人間的成長、感動の結末を描いたヒューマンドラマ作品の傑作といえる。
ロミオ作品といえば「CROSS†CHANNEL」が代表作に挙げられるが、筆者の感想としては癖の強さが勝ってしまった故に本レビューではそこそこ下の方に位置する。一方で本作は癖の強さを加味してもギャグと魅力的なキャラ設定が上回り、万人受けしやすいロミオ作品として高く評価している。
ちなみにDMMでは脅威の500円セール対象作品。古い作品なので外部ツールを使用したインストーラーが少し面倒なものの、Windows10でもしっかり起動した。リメイク版のRe:紡ぐ糸もリリースされているが、筆者はオリジナル版の絵の方が味があって好み。顎は尖がってるが…。

キャラクターがどれも好みだったのでファンディスク「家族計画〜そしてまた家族計画を〜」(→DMMストアページ)も購入。末莉ルートのアフターストーリーしかなかったのは少し残念だったが、FDにしては珍しい視点から描かれた感動作だった。非常に短いのでセール時であれば買いだと思う。

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Summer Pockets REFLECTION BLUE

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 60時間~

「眩しさだけは、忘れなかった。」
「まぶしさの──その向こう側へ‥‥」


泣きゲーで有名なKeyの近年大ヒット恋愛ADV完全版。無印は萌えゲーアワード2018大賞受賞作品。祖母の遺品整理のため夏休みを利用して鳥白島にやってきた高校生の主人公と、島で出会ったヒロイン達との淡く切ない恋物語が描かれる。
本作はKeyの王道ともいえる「感動×ファンタジー」を前面に押し出した作品であり、全ルートに泣けるシーンがたくさんある。プレイ中「そこでそのシーンはずるい、ずるすぎる」って無限に言ってた。特にグランドルートはADVゲームの仕様を逆手に取った壮大な伏線回収があり、ただの恋愛では終わらないKeyの真骨頂を見た作品。
演出面もフルプライス最新作品だけあって非常にクオリティが高く、夏休みのワクワク感や終わり際の切なさを感じさせるBGM、幻想的な美麗グラフィックがゲーム体験を豊かにしてくれる。RBでは無印版の4人のヒロインに加えて、完全新規ヒロインを含む4人のルートが新たに追加されておりボリュームも抜群。
筆者はKey作品初見なら「CLANNAD」を推していたが、現在は総合的にサマポケ推し。今最もアニメ化が待たれる作品の一つ。

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STEINS;GATE

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 35時間~

「神をも冒涜する12番目の理論──それは、俺たちが手にした偶然の産物。」

99%の科学と1%のファンタジーをコンセプトとする科学ADVシリーズの第2弾。ひょんな出来事からタイムマシンを発明してしまった主人公が、運命を変えるために世界線を越えた過去改変に挑む想定科学ADV。アニメが大ヒットしループ物では最高傑作と言われることも。
本作はアニメ版でも散々言われているようにプロローグ部分の癖がかなり強く、キャラの濃い登場人物の厨二病ネタが合わないという人も一定数いる。しかしそれを乗り越えた先には記憶を消してもう一度プレイしたい程の予測不能な展開と圧倒的な伏線回収がある。実際に存在する都市(秋葉原)を舞台にリアリティのある架空の国際機関が関わってくる現代SFなので「本当にこういう出来事があるのかもしれない。」と思わせる世界観の作り込みも秀逸。
原作ゲームはアニメよりも理論面が充実していたり、プレイヤー視点で臨場感がある場面も多い。アニメにはない個別ルートも存在するので、時間がある人にはぜひ原作をおススメしたい。イメージ画像にも取り上げた全編アニメーション化の改良版「ELITE」もリリースされているが、アニメと差別化したゲーム感を大事にしている無印の方が筆者は好み。

また本作をクリアした後はぜひ「STEINS;GATE 0」(→Steamストアページ)をプレイしてほしい。0は本編では描かれないが本当は存在した話、β世界線を選んだオカリンがα世界線に戻るまでを一つの物語として再構成したスピンオフ作品。キャラクターの苦悩や葛藤がよく描かれており、「これを乗り越えた先にあのシーンに繋がるのか」と感動できる原作補完作品としてこれ以上ない出来になっている。

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装甲悪鬼村正 (R-18)

引用: DMMストアページ

プレイ時間: 40時間〜
注意事項: 鬱要素(重) グロ描写(重)

──これは英雄の物語ではない。英雄を志す者は無用である。」

ニトロプラス創立10周年作品。劔冑(つるぎ)と呼ばれる魂の鎧を身に付けた武者達による戦乱の世を描くスラッシュダークADV。世界観としてはGHQや幕府が登場する戦国〜戦後をミックスした架空の日本「大和」を舞台とする歴史改変SF。大義名分があれば人を殺しても良いのか、英雄の謳う正義とは何なのか、といった問いをテーマにしたメッセージ性の強い作品
壮大なテーマを掲げたシナリオの破壊力はもちろんのこと、シリアスとギャグを兼ね備えたぶっ飛んだ魅力的な登場人物も本作の売りの一つであり、特に主人公は男性キャラながらファン投票で1位を獲得するほどの人気。冷静で堅物ながら時に天然ボケで笑いを誘い、それでもシリアスな場面では業を背負って我が道を行く姿には心を打たれた。長く暗い話を読み進められたのは大体彼らの信念とギャグのおかげ。
戦術や理論面も詳細に解説してくれる劔冑での戦闘シーンは迫力があり、いわゆるロボット物としても高評価。ニトロプラスらしいダークな展開も多いため人によっては好みが分かれるもしれないが、ぜひ多くの人にプレイしてもらいたい。序盤はかなり後味の悪い鬱展開が続くが、共通ルートが終わる頃には物語の本質を理解できるはず。

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BLACK SHEEP TOWN

引用: BLACK SHEEP TOWN 公式HP

プレイ時間: 25時間~
注意事項: 鬱要素(重) グロ描写(重) CV無し

「ようこそ、全てに価値がない世界へ」

殺人、薬物、売春、あらゆる闇と隣り合わせの都市「Y区」を舞台にしたデジタルノベル。サイキック、ミュータントの蔓延る裏社会のギャングの争いやそれに巻き込まれる人々の群像劇を描いた作品。
登場人物の細やかな心情描写に定評のある瀬戸口廉也氏が手掛けるシナリオは極上の一言。本作が様々な登場人物の視点から描かれるザッピングシステムを採用していることもあり、瀬戸口作品の良さが最大限に引き出されている。絶望に直面した人々が何を思うのか、潔く諦めるのか、それとも立ち向かうのか。そのような生き様や死生観を魅力的なキャラクター設定、ハイレベルな文章力で描いた傑作。
また形式面のクオリティの高さにも驚いた。ストアページの詳細やホームページの簡素さから同人系ノベルゲームを想定していたが、いざ起動してみると神画質に神UI。特にTIPSが優秀でテキストを読みながら文中のワードクリックで参照することができ、登場人物は顔付きな上、情報も物語の進行に合わせて更新してくれる神仕様となっている。後から錚々たるスタッフ陣で制作されていることを知った。
Steamレビュー数の少なさからして知名度は高くないが、個人的には瀬戸口作品の中でも最高傑作に挙げられると思う。(ニッチな話になるが「SWAN SONG」が抽象的過ぎて合わなかった人でも楽しめる。) 注意点としてはテキスト量が多く小説のような形式であること、内容がそこそこキツいこと。ネタバレとかどうでもいいレベルで登場人物が唐突にバタバタ死ぬので、誰が最後に生き残るのか予想しながらプレイするのも面白いと思う。

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WHITE ALBUM2 (R-18)

引用: DMMストアページ

プレイ時間: 35時間~
注意事項: 鬱要素(重)

「冬が終わる。君がいない春が来る。」
「届かない恋なんてしない。だって、もう人を愛せない。」


数多くのプレイヤーの心と胃を破壊してきた冬の名作。高校の学園祭から始まり、大学生、社会人まで尾を引くドロドロの三角関係を描いた恋愛ADV。思わずため息が出るほど切ないシーンの連続でプレイヤーを揺さぶり、その心を抉ってくる。
本作は何といってもメインヒロインの小木曽雪菜と冬馬かずさのキャラクター設定が最強。ネット上では長らく雪菜派とかずさ派で割れており、終盤にかけてプレイヤーは苦しい選択を迫られる。また2人ほど知名度は高くないが大学生編のサブヒロイン3人も魅力的でどのルートも指折りの名シナリオ。条件付きの選択肢があったり、複数周回で追加シーンがあったりとADVゲームとしても凝った作りになっている。主題歌「届かない恋」に挿入歌、BGMも名曲揃いであり、作品全体のクオリティが極めて高い。
前作「WHITE ALBUM」の一部キャラクター名や曲が登場したりはするが、ストーリー上の直接の繋がりはないため2からプレイ可能。並大抵の恋愛ゲーでは満足できなくなるレベルで刺激が強いので注意。
なおディスク版「EXTENDED EDITION」にはドラマCDやノベル等の特典も付いているので、プレイ環境がある人にはそちらもおススメ。

関連リンク


マブラヴ オルタネイティヴ

引用: マブラヴポータルサイト

※世界観の解説が前作「マブラヴ」の間接的なネタバレとなっています。本当に何も知らない状態でプレイしたい、近くプレイする予定がある場合はもう少し下の「マブラヴ」まで本レビューを飛ばすことを推奨します。





プレイ時間: 35時間~
注意事項: 鬱要素(重) グロ描写(重)

──人類を無礼るな……!
──人間を……無礼るなッ!!」

SF恋愛ADVマブラヴシリーズ最重要・最高傑作。地球外生命体BETAとの戦闘を通じて繰り広げられる極限状態の人間ドラマを描いた大作。
怒涛のシナリオ展開と戦闘シーンの臨場感が圧倒的で、先が読めないワクワク感と同時にやってくるプレイ中の絶望感、クリア後の虚無感が半端なかった。前作「マブラヴ」からは想像もつかない程の容赦ない鬱展開の連続でプレイヤーに厳しい現実を突き付けてくる。全キャラクターが命を懸けて戦っていた魂の作品。
ロボット・ミリタリー・政治等の様々な要素を詰め込んだ世界観も圧巻。敵となるBETAや有効兵器の戦術機、独自の歴史から国政まで細かい設定が作り込まれており、これまで多くの派生作品を生み出している。
「マブラヴ」の続編なのでプレイする際はマブラヴから。面白さのクライマックスはオルタネイティヴだが、それはマブラヴの下積みがあってこそなので絶対に飛ばさないこと。アニメの評価が伸び悩んでいるのも無印マブラヴ部分の尺不足にあると思っている。
マブラヴシリーズに少しでも興味があれば、もうこれ以上は何も調べずに無印→オルタネイティヴの2作品をプレイして欲しい。

関連リンク (微ネタバレ注意)


魔法使いの夜

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 18時間~
注意事項: 抽象的作品(軽)

「新生の鼓動よ響け。少女は今、青色(はじまり)の魔法を開く。」
「さあ──ごっこ遊びをしましょう。」

型月ことTYPE-MOONの伝奇ビジュアルノベル。1980年代後半を舞台に魔女の秘密を知ってしまった高校生の奇妙な日常を描く現代ファンタジー。選択肢ゼロの読み物ノベルゲーム。
本作はビジュアルノベルならではのゲーム体験を最大に引き出しており、奈須きのこ氏の現代魔術・魔法の世界観に浸ることができる。シナリオは心理・情景描写が多く行間を読ませるような文体が特徴的で、画面全体に表示されるテキストはさながら文学作品。BGMはクラシックをベースにした聞き心地の良い曲が多く、戦闘シーンはアニメーションに近いコマ送りの演出で臨場感バツグン。フルボイスHDリメイクされたことで狭義のビジュアルノベルでは最高到達点にある作品だと思っている。
他の型月作品との繋がりが示唆され所縁のあるキャラクターも登場するが、本作単体で十分に楽しめる。エンディングが明確に完結していないので人によっては消化不良感が残るかもしれないが、ここまでゲームの物語の世界に入り込めた作品はないので最高評価。未だ未公開ながら全3部作とされているので今後の展開に期待したい。劇場アニメーション化も決定している。

関連リンク


SSS

虚ノ少女 RE (R-18)

引用: DMMストアページ

プレイ時間: 20時間〜
注意事項: 鬱要素(重) グロ描写(重) 抽象的作品(中)

「その少女は虚(パラノイア)に支配されていた──。」

Innocent Greyの代表作であるカラノショウジョシリーズ第2作目のリメイク版。昭和初期の東京を舞台に私立探偵の主人公が連続猟奇殺人事件を追うサイコミステリィADV。
シリーズ1作目より先に紹介してしまい申し訳ないが、本作は「殻ノ少女」の2年後を舞台とした続編。そのため基本的な世界観や評価点は同作のレビューに譲る。
「殻ノ少女」でぼやかされた結末を続編「天ノ少女」に繋ぎ「カルタグラ」とも上手く交差させたシナリオはシリーズ屈指の完成度を誇り、個人的には3作品の中で最も評価が高い。前作以上に納得のパラノイア、そして思わず目を逸らしたくなる結末は良い意味での虚無感をもたらしてくれるサイコミステリーの傑作。
前作をプレイしてその世界観に惹かれた人、冬子の結末が気になった人には強くプレイすることを推奨する。シリーズ未履修の人もまずは殻ノ少女ないしカルタグラをプレイしてイノグレの世界観を知ってほしい。

なおカルタグラプレイ済みユーザーへの耳寄りな情報として、殻ノ少女では名前での登場に止まった冬史が新ビジュアルで再登場。八木沼と共に主要キャラクターとして玲人をサポートする様はカルタグラを彷彿とさせる。

関連リンク


CLANNAD

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 80時間~
注意事項: 日本語非対応

「ありふれた学園生活から始まる、人と町の物語。」
「俺たちは登り始める。長い、長い坂道を。」

泣きゲーで有名なKeyの代表作ともいえる恋愛ADV。不良少年の主人公がヒロイン達との出会いを通じて成長していく物語。学園編と社会人編の2部構成になっており、感動の親子愛・家族愛を描いた社会人編(アニメ~AFTER STORY~)は「CLANNADは人生」とまで言わしめた名シナリオ。
原作は学園編の恋愛要素が強く、アニメ版でカットされた部分も含めてファンタジー・三角関係・ミステリー等の様々な展開のヒロインルートが楽しめる。グラフィックは時代を感じさせるものがあるが、メインルートはどのシナリオも折り紙付きの完成度。
さらに特筆すべきは圧倒的なボリューム量。学園編はメイン6ルート、サブ5ルートもあり、それに加えて複数ルート相当の社会人編にネタルートまで存在する。また学園編の選択肢が非常に多く、選んだ選択肢が社会人編に影響する仕様もあったりと攻略難易度が凄まじく高い。攻略サイトを使用しない場合にコンプリートまでかかる時間は100時間を超える。
現状DL版(Steam)は日本語に対応していないが、Keyを語る上では外せない名作ということで紹介した。気になる人はぜひディスク版を購入して欲しい。なお筆者は気合で英語版をプレイした結果130時間を記録している。

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G線上の魔王 (R-18)

引用: DMMストアページ

プレイ時間: 15時間~

「いま、命をかけた純愛ドラマの幕が上がる──

美少女ゲームアワード2008大賞受賞作品。「車輪の国、向日葵の少女」と並んであかべぇそふとつぅのシナリオゲー代表作。昼間は学生、夜は裏社会のビジネスマンとして過ごす訳あり主人公が、不思議な転校生と共に「魔王」と呼ばれる人物によって引き起こされる事件を追っていくサスペンス風の恋愛ADV。
物語全体を通してプレイヤーのミスリードを誘う描写が多く、曲者キャラによる心理戦が非常に面白い作品。度々登場する魔王の正体と物語の終着点が気になってプレイする手が止まらなかった。
また恋愛物としてもクライマックスの瞬間火力が高すぎる感動作。本作は各章ごとに個別ルートに分岐する特殊な物語構成となっており、個別ルートでは厳しい境遇故に歪んでしまった主人公がヒロインと手を取り合って成長する姿が描かれる。そして個別ルートに分岐しなかったグランドルートでは、個別ルートをプレイしたからこそ感動できるADVゲームならではのエンディングが描かれ、全てを知っているプレイヤーの涙腺をドンピシャで破壊しにくる。ED曲「Close Your Eyes」が流れるシーンは号泣必須。個別ルートのみでも良作だったのがグランドルートで神作まで突き抜けた作品。

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終のステラ

引用: DMMストアページ

プレイ時間: 5時間~

「空の向こうに行けば、人間になれる──。」

萌えゲーアワード2022シナリオ賞受賞作品。泣きゲーで有名なKeyの終末世界を舞台にしたSFキネティックノベル。名シナリオライター田中ロミオ氏が運び屋とアンドロイドのペアによる旅を描く。
キネティックノベルは対話型小説やアニメ映画に近い選択肢ゼロのビジュアルノベルであり、Keyの専売特許として知られている。シナリオは短いながら小説のような形式で主人公の心情がよく描写されており、Keyらしい感動シーンの落としどころがピカイチ。作中にはオリジナルの設定や用語が多数登場するが、主人公は未来人として、ヒロインは現代人(=プレイヤー)として会話をしてくれるので理解がしやすいのも良かった。演出面においても細部まで描かれた背景CGやメニュー画面のUIは現行最高レベルのクオリティを誇り、近未来SF的な世界観を存分に味わうことができる。
総じて短編ではこれ以上ないレベルの傑作。主題歌「breath of stella」が流れるOPムービーもめちゃくちゃワクワクするのでぜひ見て欲しい。

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白昼夢の青写真 (R-18/全年齢)

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 13時間~

「こんなにわたしを愛してくれて、ありがとう──世界と呼ばれた少女の物語──

2020年に入ってからのノベルゲーム界に突如現れたあらゆる完成度がお化けのSF恋愛ADV。世界に全てを捧げた少女と一人の青年の純愛物語。恋愛要素が強く一部選択肢も存在するが、ルート分岐はなく実質的にはビジュアルノベルに近い。
本作は中世・現代・近未来の異なる3つのエピソードが未来の1つのエピソードに収束するシナリオ構成が最大の特徴。各エピソードは独立した短編作品として成立するレベルで細部にこだわって作り込まれており、専用の主題歌やUI、アフターストーリーまで用意されているのは驚き。1本でまったく世界観の異なる4作品を楽しめる上、プレイしていく内に薄っすらとエピソード間の関連性に気付くように作られているため、キャラやシナリオの渋滞といった問題点も解消されている。
また各エピソードの主題歌は「本当に同じ人が歌ってるんか?」と疑いたくなるほどクオリティが高い。特に最終エピソードOPの「Into Gray」は本作の純愛ストーリーを表現した名曲であり、その他の曲も公式Youtubeチャンネルで全て視聴することができるので要チェック。
シナリオもシステムも演出もあらゆる要素が綺麗にまとまっており、令和のビジュアルノベル代表格といってもいい名作。

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BALDR SKY (R-18/全年齢)

引用: Steamストアページ

プレイ時間: 60時間~
注意事項: 日本語非対応

「俺は忘れない。そこにかけがえのない“空”があったことを・・・」
「すべてを思い出せ──

AIが大きく発展し、脳にチップを埋め込んだり、仮想世界で暮らしたりすることが一般化した近未来を舞台とするSFサイバーパンクアクションADV。記憶喪失に陥った主人公がシュミクラムと呼ばれるロボットでの戦闘を通じて過去の記憶と向き合い、失われた未来を取り戻しにいく物語。
本作はこれぞ近未来SFというべき圧倒的スケールで描かれるのが特徴。それ故にオリジナルの横文字設定が多いが、最近のトレンドともいえるAI関連をテーマとしていることからストーリーの流れは掴みやすいのもグッド。
シナリオの内容に踏み込むと、本作の登場人物はAI派・反AI派を基本とする様々なバックボーン・勢力に分かれており、それぞれが己の正義に従って行動している。そのため誰が本当に正しいのか判断するのが難しく、記憶喪失の主人公と初見のプレイヤーがリンクして物語に引き込まれる。主人公が様々な派閥に属して戦うことになる各ヒロインルートは全てグランドルートの伏線となっており、クライマックスは超がつく胸アツ展開。
読み物の合間にはロボットを操作して敵を殲滅するアクション要素があり、自分好みの技やボタンを設定して爽快なコンボを叩きこめる。アクションが苦手な人も難易度調整が可能であり、ノベルとの割合も絶妙に感じた。クリア後にやり込み要素もあるのでアクション重視の人にも嬉しい。ボス戦で流れる「Restoration~沈黙の空~」「jihad」も屈指の名曲。
ノベルゲームに限らず18禁ゲームの括りでもトップクラスの名作であるが、2023年にリリース元の戯画が終了したことに伴いプレイ環境が限られているのがネック。かつてはDMMにてR-18/日本語のDL版がリリースされていたが、現在はディスク版を除いてSteamの全年齢/英語版のみとなっている。


ファタモルガーナの館

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 15時間~
注意事項: 鬱要素(重) グロ描写(中) CV無し

「他人の悲劇だから耐えてこられたんだよ」
「その館に住む者は──必ず不幸になる」

Novectacle開発の西洋浪漫サスペンスホラーノベル。プレイヤーは記憶喪失の「あなた」として呪われた館の女中(メイド)に導かれ、その館で起きた悲劇を回想しながら謎を解き明かしていくサスペンスADV。同人ゲームながら広くコンシューマ移植されている人気作。
シナリオの主な内容は登場人物を平穏な日常からどん底まで叩き落すいわゆる鬱ゲーであるが、起承転結がはっきりしているのでサクサク読みやすい。序盤から中盤にかけて複数の悲劇を回想し、それが「あなた」に繋がっていく伏線の貼り方も綺麗で読んでいてスッキリした。ただ3章の話はマジで苦しい。
キャラクターボイスはないが、場面に合わせた様々なオペラ風のオリジナルBGMが流れるので、ひたすら文字を読んでいる感覚はなく物語に入り込めた。キャラクター絵も独特の画風だが、西洋の世界観の作品としてはむしろ味があってよかったと思う。
かなり悪意に満ちたキャラクターやシナリオが描かれる重い作品ではあるので苦手な人は注意。ただそれを乗り越えた終盤、エンディングの展開は圧倒的な解放感と達成感を味わえる、シナリオ構成力トップクラスの名作。

関連リンク


SS+

CHAOS;CHILD

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 50時間~
注意事項: 鬱要素(重) グロ描写(重)

「そして。僕は、このくそったれなゲームをクリアーした。」

99%の科学と1%のファンタジーをコンセプトとする科学ADVシリーズの第4弾。新聞部の活動の一環として連続猟奇殺人事件を追う主人公達が狂気の妄想に巻き込まれるSFサスペンスホラー。
「この作品は、シュタインズ・ゲートを超えたのか?」と公式が触れ込むほどの大作であるが、コンシューマ版でZ指定されるほど設定を攻めていたり、アニメ化が微妙だったりしたことから知名度はそこまで高くない。シナリオの内容もシュタゲとは対極にある作品のため人は選ぶが、美しくも儚いエンディングはシュタゲを超えたと評する人も多い。
本作は誰が味方で誰が敵なのか、ミスリードを誘うシナリオと思わずドキッとするような演出で主人公兼プレイヤーの不安を煽ってくるのが特徴。かなりの長編で中盤はマンネリ化する場面もあるが、謎が明かされ始めてからエンディングまでは衝撃の連続、クリア後は虚無感でロスに陥ること間違いなし。ただ注意点としてサスペンスとはいえガッツリSF作品なので、犯人捜しを主眼に置いた推理物としての期待はしない方がいいかもしれない。
シリーズ1作目の「CHAOS;HEAD」とはストーリー上の繋がりはないが世界観を同一にする。もっとも初期のニトロプラス色が強く難解な作品となっているため、学園の日常要素が多く含まれる分ややライトな作りになっている本作を優先的にプレイすることを推奨する。個人的にはシュタゲを超えたとは思わないが、科学ADVシリーズの中ではシュタゲと並びうるTop2の名作だと思う。

関連リンク


殻ノ少女 HD (R-18)

引用: DMMストアページ

プレイ時間: 20時間~
注意事項: 鬱要素(重) グロ描写(重) 抽象的作品(重)

「探して欲しいんだ。
──私を。本当の、ね。」

Innocent Greyの代表作であるカラノショウジョシリーズ第1作目のリメイク版。昭和の東京を舞台に私立探偵の主人公が連続猟奇殺人事件を追うサイコミステリィADV。
捜査・推理パートのあるミステリーADVではあるが、推理物というよりは愛と偏執(パラノイア)をテーマにした読み物としての側面が強い。30人を超える登場人物の人間関係は複雑に絡んでおり、プレイヤーは怒涛の鬱展開と紐解かれていく真実に釘付けになる。「お前死ぬんか?お前そこと繋がってるんか?」の連続だった。
美少女ゲームアワード2008ではグラフィック部門・BGM部門を含む4部門で入賞している。昭和の懐かしさや儚さを感じさせる音楽、キャラクタービジュアルや背景CGの数々は世界観ゲーとしても評価が高い。
「殻ノ少女」はシリーズ物として前日譚「カルタグラ」続編「虚ノ少女」「天ノ少女」との連続作品となっており、主要なキャラクターや背景設定は本作がベースとなっている。かなりグロ描写が多く抽象的・文学的な作品でもあるが、ぜひシリーズを通してプレイしてほしい。

関連リンク


車輪の国、向日葵の少女 (R-18)

引用: DMMストアページ

プレイ時間: 15時間~
注意事項: 抽象的作品(軽)

「人を好きになれること、時間が平等であること、親が幸福であること、
 それくらい望んでもいいじゃないですか?」


「G線上の魔王」と並んであかべぇそふとつぅの2000年代シナリオゲー代表作。罪を犯すと特別な義務を課される架空の国家を舞台に、更生を促す特別高等人候補生の主人公と義務を負ったヒロイン達とのヒューマンドラマを描いた恋愛ADV。
独創的な背景設定と閉鎖的な田舎の夏を感じさせる舞台設定が100点満点でとにかくその世界観に引き込まれた。真っ当に生きる意味を失ったヒロイン達の成長模様、垣間見える本当の強さは胸に来るものがあり、一見ちゃらんぽらんに見える主人公も人間味に溢れていてめちゃくちゃ格好良かった。
更生するまでのヒロインはグダグダで日常パートも古いネタを中心におふざけ全開だったが、シナリオにメリハリがついているので思った以上にサクサク読み進められた。エンディングは含みを持たせた終わり方になっているので、もう少し結末を詳しく描いて欲しかったとは思う。

ファンディスク「車輪の国、悠久の少年少女」(→DMMストアページ)も要チェック。ヒロインとのアフターストーリーのみならず、本編でラスボスっぷりを遺憾なく発揮した法月将臣の過去、樋口三郎との関わり、冒頭に登場した南雲えりの回想エピソードが収録されている。「本編で語っとけよ…」と言わんばかりに車輪の国の真相により近づくことができる内容となっているので、本編クリア後にはぜひ悠久もプレイしてほしい。

関連リンク


シンフォニック=レイン

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 13時間~
注意事項: 鬱要素(重)

「雨、いつまでも、止むことなく降り続ける雨。
……さぁ、妖精の歌を奏でましょう。」

工画堂スタジオのくろねこさんちーむが送るミュージックアクションゲーム第3弾。舞台となるのは架空のイタリア、雨が降り続ける街ピオーヴァの音楽学院。故郷に想い人を残した主人公が卒業課題のパートナー探しと揺れ動く心に葛藤する恋愛ADV。
本作は可愛いデザインに反してかなり毒のあるシナリオが特徴的で、ダイレクトな描写と言葉でじわじわくる鬱展開のダブルパンチがやってくる。不完全燃焼感が残る個別ルートの伏線を、衝撃のグランドルートが回収してくれるシナリオの構成力も圧巻。「これってこういうことだったんだ…」の考察で2度楽しめる作品。
PCのキーボードをピアノに見立てた音ゲー要素もあり、岡崎律子氏が作詞作曲した各ヒロインのキャラクターソングが楽しめる。難易度は高めだがスキップ可能なので音ゲーが苦手でも本編をプレイする上では問題なし。洋風の世界観から海外ウケも良く、約20年前からリニューアルを繰り返し続けている名作。

関連リンク


千恋*万花 (R-18/全年齢)

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 25時間〜

「乙女の恋は忍ぶれど──。
「全ては叢雨丸を掴んだ、その手の中に
──。」

萌えゲーアワード2016準大賞受賞作品。ギャグとテンポが絶妙なゆずソフトの第9作目。パッケージからは戦国時代物にも見えるが、由緒ある温泉街を舞台にしたジャパネスク現代物。誰も引き抜けないと言い伝えられる神刀叢雨丸を偶然引き抜いてしまった主人公が不思議な恋愛に巻き込まれる和風恋愛ADV。
和風テイスト代表格の作品であり、和楽器をベースとしたBGMと甘味・温泉・旅館等のシーンはまるで旅行をしているかのような気分を味わえる。
シナリオ面もヒロイン達との恋愛と過去の伝承を絡めた内容はH要素抜きでも勝負できるレベルのクオリティの高さを誇り、全体的にほんわかとしつつもクライマックスは感動。ムラサメルートはキャラゲーとは言わせない。

ゆずソフト全般に言えることとしてキャラクターにあまり癖がなく、シナリオの展開、背景設定も明快で読みやすいことが挙げられる。鬱シーン等も存在しないのでライト層のプレイヤーでも手を出しやすいブランドといえる。特に本作はゆずソフトの中でも頭一つ抜けていると思っているので、ノベルゲーム初心者には強くおススメしたい。

関連リンク


9-nine- (R-18/全年齢)

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 6時間~ (全4部作で25時間~)

「この世界は、キミを「 」した物語だった——。」
「——忘れられないこと、忘れてはいけないこと。」
「——2つのカタチ、2人のセカイ。」
「少女の夢——その果てに。」


ぱれっとの美少女ADVシリーズ4部作。アニメの厨二設定が現実になってしまった学園都市で繰り広げられるファンタジックバトル物。
本作は同じ世界観でストーリーが進行しながらも、各ヒロインに焦点が当てられた4つのエピソードから構成されているのが特徴。エピソードごとに各ヒロインとイチャイチャでき、ストーリー上の新要素も明らかになりつつクライマックスに近づいていく。特に最終章のエピソード4は123の伏線回収とプレイヤーの期待を裏切る演出が凄まじく、しっかりADVゲーム作品として物語を締めくくった。PVも鬼かっこいい。
全体的に話のテンポがよく恋愛あり感動ありでライトに楽しめるため、特にノベルゲームをあまり遊んだことがない人に強くおススメしたい。感情移入できる主人公による胸熱展開も多く、主人公=プレイヤーとして楽しめる作品でもある。
ストアによっては一括購入でお得になることもあるが、ひとまずエピソード1をプレイして様子をみることも可能。エピソード2の妹ヒロイン新海天のキャラが最高に良いので、できれば2までプレイしてそのまま4まで突っ走ってほしい。

「アニメ向きの作品だけど、アニメ化するの難しそうだなぁ」と思っていたら、なんとつい最近にアニメ化決定。ゲームならではの展開がどのように描かれるのか非常に楽しみ。

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マブラヴ

引用: マブラヴポータルサイト

プレイ時間: 25時間~

──それは、とてもちいさな、とてもおおきな、とてもたいせつな、あいとゆうきのおとぎばなし──

マブラヴシリーズ第1弾の超王道学園恋愛ADV。平凡な日常を過ごしていた主人公の下に世界的財閥の跡取り娘が住み着き、幼馴染やクラスメイトを巻き込んで繰り広げる甘々おバカラブコメ。天然だらけのヒロイン勢に無限に湧いてくる財閥のお金でやりたい放題である。
というのは表向きで後にギャルゲーとは思えない壮大なストーリーに繋がる。シリーズ最高傑作である続編「マブラヴ オルタネイティヴ」の伏線が多数あり、よりキャラクターに感情移入できるようになる作品。
オルタネイティヴの概要を薄っすらと知っているプレイヤーの期待とのギャップのせいか、やや過小評価されている印象がある。たしかに面白さのクライマックスはオルタネイティヴだが、本作をプレイせずにマブラヴは語れない。「オルタネイティヴの前作」としてのみではなく、学園恋愛物としてもなかり高く評価できる作品だと思っている。ギャグ路線ではあるが。
学園での日常を描いたエクストラ編とオルタネイティヴに繋がるアンリミテッド編の2部構成になっているので、前者は恋愛、後者はSFとして二重に楽しめる。
マブラヴシリーズに少しでも興味があれば、もうこれ以上は何も調べずに無印→オルタネイティヴの2作品をプレイして欲しい。

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メモリーズオフ2nd

引用: メモリーズオフヒストリアHP

プレイ時間: 20時間~
注意事項: 鬱要素(中)

「かけがえのない想いと引き換えに……」
「選ぶことができるのだろうか?
 これから共に、かけがえのない想い出を築いていく、その人を────。」

メモリーズオフシリーズ2作目にしてシリーズ最高傑作の呼び声が高い恋愛ADV。「恋愛の乗り換え」をテーマに、物語開始時点で主人公に彼女がいる三角関係ゲー。やきもきするすれ違いや修羅場シーンが多数あり、苦しい恋愛を期待するプレイヤーのお眼鏡にかなうであろう一作。
後に良作とされたシリーズ作品の多くは主人公やその過去の仕掛けを通じてサスペンス風の展開が繰り広げられる中、本作は純粋な恋愛要素をメインに押し出して勝負した正統派の恋愛ADV。
シンプルなデザインながら(だからこそ?)ヒロインの人気も高く、50名以上を対象にした2018年のメモオフシリーズ総選挙では白河ほたる(1位)、飛世巴(6位)、南つばめ(7位)と大暴れ。かなり古い作品だがSteamにてフルHD移植されたこともあり、グラフィック・システム面は現代作品と何ら遜色ない。
シリーズ間にストーリー上の直接的な繋がりはないため、初代をプレイすることなく本作から始めることも可能。むしろメモオフを触るならとりあえずでも2ndというくらいおススメ。メインヒロインのほたるとその親友・実姉がバチバチにやり合う巴・静流ルートは必見。

ちなみにシリーズ最終作が本格的にリリースされた後の20周年総選挙では初代ヒロインに12フィニッシュを許すも、ほたるはそれに続く3位となり人気は健在。こんな彼女がいて浮気するなんてありえないぞ主人公。

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SS

イハナシの魔女

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 8時間~

「このちっぽけな島が 俺たちの生きていく島だ。」

DLsiteアワード2022ゲーム部門受賞作品。沖縄を舞台に魔女と出会った高校生達の日常チックな非日常を描いた「ラブコメ×ファンタジー」のビジュアルノベル。
伝奇・SF要素を絡めつつも、思春期特有の悩みや葛藤を優しく、時に鋭く描いた青春・ボーイミーツガール系作品。ルート分岐はゼロでシナリオも短めだが、各ヒロインに焦点を当てたシナリオが順番に展開され、視点が頻繁に入れ替わることでその主観が描かれるのでキャラクターの掘り下げが豊富。メタ発言やパロディネタも豊富でテンポが良くテキストも読みやすかった。
メインヒロインのリルゥは刺さる人にはとことん刺さるクーデレヒロイン。リルゥ編は主人公達を追い詰める苦しいシーンもあるが、それを愛と友情で乗り越える名シナリオとなっている。背景設定はやや大味ながら、魅力的なキャラクターと心情描写が上を行った日常系作品の名作。

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カルタグラ~ツキ狂イノ病~ FHD (R-18)

引用: DMMストアページ

プレイ時間: 8時間~
注意事項: 鬱要素(重) グロ描写(重) 抽象的作品(中)

──それは、妄執と狂気に至る愛。」

Innocent Greyの処女作。昭和の東京を舞台に私立探偵の主人公が連続猟奇殺人事件を追う和風サイコミステリィADV。
ストーリーは短いながらエンディング数が18と多く、各ヒロインルートやバッドエンドにトゥルーエンドの伏線やミスリード要素が含まれているので、ガチガチの推理物ではないがミステリーADVとして楽しめた。嫉妬や百合要素が絡む偏執(パラノイア)が物語上のテーマとして存在し、登場人物の様々な心情が表される読み物的側面からも評価できる作品。
約20年前の作品だが、HDリメイクによってグラフィック・BGMのクオリティは相当に上がっており、華やかで儚くもある和風下町の世界観に入り込める。また主人公が遊郭を拠点としているという設定上、艶やかなヒロインばかりでH要素も秀逸。
本作は単体でも楽しめるが同社の代表作であるカラノショウジョシリーズの前日譚的な立ち位置の作品となっており、一部のキャラクターや背景設定が後のシリーズに登場する。「殻ノ少女」のプレイを見据えたイノグレ入門編としてもおススメ。

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この世の果てで恋を唄う少女YU-NO

プレイ時間: 45時間~
注意事項: 鬱要素(重)

「「物語」という名の迷宮へ‥‥
 並列世界を駆け巡る旅が、今、始まる。」


驚愕の1996年リリース、ゲーム業界に大きな影響を与えた伝説的作品のリメイク版。失踪した父が残した装置を手に謎を解き明かすべく主人公が並列世界を渡り歩いていくSFアドベンチャー。ノベルゲームというよりはADV色がかなり強く「移動する・話す・調べる・アイテムを使う」ことでストーリーが進行する。(推理ゲー・逆転裁判の探偵パートのようなイメージ。)
本作は主人公の行動と分岐を可視化したオートマッピングシステムが特徴的で、達成率が100%に近づいていくワクワク感がたまらない。登場人物の発言や背景設定に古臭さは感じるが、フルHDリメイクによって演出やシステム面は現代でも通用するレベルになっている。なおオリジナル版がR-18作品ということもあってNTR、近親相姦を仄めかす描写があり、加えて洗脳やカニバリズム等の重いテーマも扱っているので要注意。
シナリオは終盤の展開が突飛でやや駆け足ではあるものの、オートマッピングシステムも相まって中盤はとにかく先が気になってのめり込んだ。グランドルートでは想像もしなかった方向に物語が進み、初見での衝撃とワクワク感は今でも覚えている。長編かつ攻略難易度が高い作品なので面倒な周回を要求されることも多々あるが、達成率100%を目指してじっくりプレイしてほしい。

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月に寄りそう乙女の作法 (R-18/全年齢)

引用: DMMストアページ

プレイ時間: 20時間~

「ありがとうございます、お優しいルナ様」

Navel設立10周年記念の代表作にして萌えゲーアワード2013大賞受賞作品。デザイナーに憧れた主人公が男子禁制の服飾専修機関で学ぶため、ヒロインの専属メイドとして学園に潜り込む女装系恋愛ADV。
コミカルな下ネタを中心に繰り広げられる日常パートは非常にテンポがよく、5人目のヒロインとして女装メイドに染まっていく主人公の様子が面白い。男子バレのヒヤヒヤ感やシリアスな場面もあり、最初から最後までメリハリを持って楽しめた。
ヒロインの中ではルナ様こと桜小路ルナが可愛くてイケメンで魅力的で最強であり、本作はもちろん、ほとんど登場しない後続作品のキャラクター部門でも1位を獲得するほどの人気を誇る。乙女も唸る主人公との主従関係は必見。個別ルートの展開は似たり寄ったりなところもあったので、ルナ様を1周目で思いっきり楽しめればいいかなと思う。
Steam版は主人公ボイスとアフターストーリーが搭載済み。DMM版もアペンドディスクを別途購入することで完全版になる。

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智代アフター 〜It's a Wonderful Life〜

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 30時間~ (本編10時間~ ミニゲーム20時間~)
注意事項: 鬱要素(重) 抽象的作品(中) 日本語非対応

「人生の宝物を探しにいこう」
「みんなの夏が始まった。5人で過ごす、最初で最後の夏休みが…。」


CLANNADに登場するヒロイン坂上智代に焦点を当てた外伝。智代ルートのその後、智代に関わる5人の不思議な共同生活を描く。麻枝准氏の私的作品として開発されたこともあり、非常に実験的かつ衝撃的な結末が賛否両論を呼んだことで有名。現在はエンディングが補足的に修正されたこともあり再評価路線。ファンディスクを望んだ人からすればあまりに救いようがない結末は駄作認定まっしぐらであるが、個人的には坂上智代の人物像の描き方としては一番の形だと思った。
数は少ないながら「Hope」「Old Summer Days」等のBGMのクオリティも高く、シナリオの内容と相まって閉鎖的で陰鬱な感じがしつつも、どこか懐かしい夏を思わせる独特の雰囲気がある。シナリオ以外での作品全体の世界観が個人的にはかなり好み。
本編クリア後にはダンジョン踏破型RPGミニゲームが遊ぶことができ、こっちが本編といわんばかりの難易度の高さを誇る。
DL版はSteamしか存在せず日本語非対応なので注意。(主人公フルボイスのため比較的英語版でも遊びやすい方ではあった。) CLANNADを紹介する以上は外せない作品だと思ったため掲載した。

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マブラヴ オルタネイティヴ トータル・イクリプス

引用: マブラヴポータルサイト

※「マブラヴ」「マブラヴ オルタネイティヴ」の事前プレイが強く推奨される作品であり、レビューにおいても2作品の世界観ネタバレを含みます。





プレイ時間: 28時間~
注意事項: 鬱要素(中) グロ描写(中)

絶望のみが生み得る希望──
 ──希望のみが紡ぐ未来」

実戦から離れた戦術機開発テストパイロットの戦いを描いた「マブラヴ オルタネイティヴ」のスピンオフ作品。オルタネイティヴと同一の時間軸で物語は進行するが本編のキャラクターはほぼ登場せず、実質的には独立したタイトルの作品となっている。
本編とは異なりBETAとの実戦は少なく、シミュレーションや12・5事件のような対人戦が多い。某アニメで例えれば大規模侵攻に対するランク戦の立ち位置主人公ユウヤの人間関係や成長、政治的駆け引きがメインの内容であり、そこに面白さを見出すべき作品といえる。
最初は「タケルちゃんと純夏のいないマブラヴなんて…」と食わず嫌いしていたが、いざやり始めたらマブラヴらしいぶつかり合って成長する人間関係の描き方に引き込まれて一気に読み切れた。主題歌・挿入歌も格好よく、戦術機の戦闘シーンにも高低差やムービーが加わっていて盛り上がった。ただユウヤはもっとタケルちゃんのユーモアを見習った方がいいと思う。
オルタ本編のキャラクターが特別好きな人には合わないかもしれないが、マブラヴの世界観やシナリオの組み立て方が好きな人なら十分楽しめる。終盤はオルタ本編と間接的に交じり合うシーンも描かれるのでシリーズファンなら触っておくべき。

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メモリーズオフ-Innocent Fille-

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 25時間~
注意事項: 鬱要素(中)

「これは、かけがえのない──
 そして負けない、想い (コイゴコロ) 」


学園恋愛ADVメモリーズオフシリーズ8作目。主人公はとある事件で恋人を失った過去のある札幌の高校生。国内交換留学制度での湘南の高校への転入をきっかけにかつての親友や新たな友人と出会うことになり、過去の恋愛と向き合い未来へ進んでいくメモオフらしさ全開のシリーズ最終作。
本作は恋愛要素重視のライトサイドとサスペンス要素重視のヘヴィサイドから構成される2面性のあるシナリオが特徴的。中盤までは過去の事件だの病的ヤンデレ系ヒロインだの「メモオフあるあるやな」と思っていたが、そこからもう1段階ギアが上がった。各ルートにおけるミスリード描写の積み重ねによって隠された真相は最終作に相応しいラストだったと思う。一方でサスペンス要素が強い分、ヒロインとのイチャイチャ要素は少なめ。(ライトサイドに関しても展開は全くライトではないので注意。)
シリーズファン向けに歴代ヒロインがサブキャラクターとして再登場しているが、過去のシリーズとストーリー上の直接的な繋がりはないためいきなりIFからプレイすることも可能。
なお2024年には新作「メモリーズオフ 双想」の発売が予定されている。シリーズ最終作とは如何に。

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S+

VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 12時間~
注意事項: 抽象的作品(中) CV無し

「一日を変え、一生を変えるカクテルを。
あなたのカクテルが、誰かの運命を変える。」

日本のレトロカルチャーに影響を受けた海外産サイバーパンク系ビジュアルノベル。主人公は「VA-11 Hall-A」のバーテンダーとして、ディストピアを生きる人々の話を聞き理想のカクテルを提供する。サブタイトルにアクションとありつつも、コマンドでカクテルを提供する以外はほとんど一本道のビジュアルノベル。特定のカクテルを提供することで小ネタや個別エンドが見れたりする要素は存在する。
本作はキャラクター人気とセクシャルトークを中心に主観をよく描いたシナリオが評価されており、海外を中心に強く支持を受けている。一方で日本のレビューではつまらないという意見をチラチラ見かけることもあり、万人受けするかは微妙な雰囲気ゲーともいえる。あっと驚く展開はないが、ちょっとした読み物を求めている人には特におススメ。
仮に雰囲気ゲーと割り切ったとしても演出面のクオリティは高く、表情豊かなドット絵に加えてバラエティに富んだBGMはジュークボックスで自由にカスタマイズが可能。SFアドベンチャーとは異なるベクトルでサイバーパンクな世界観に没入できる一作。

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俺たちに翼はない (R-18)

引用: DMMストアページ

プレイ時間: 20時間~
注意事項: 抽象的作品(軽)

「ありがちな悩みとありがちじゃない悩みを抱えた若者たち。
 彼らが出会う、恋ともろもろ。
 それはきっと何処にでもある、ありふれた物語。」


ちょっぴり不思議な青春群像劇をテーマにしたNavelの恋愛ADV。異世界グレタガルドで聖騎士として戦う気弱な高校生、バイトを掛け持ちするイケイケの貧乏フリーター、便利屋と肉体労働で食いつなぐ自称ハードボイルド系不良少年の3人の主人公の日常と関わり合いを描いた作品。
あらすじの通り厨二・ヤンキー・電波系といった一世代古いネタがテンコ盛りの日常パートはNavel節が炸裂。全体的に好みの分かれる作風ではあるが、2人目の主人公であるイーグル編はヒロイン、サブキャラクター共にキャラが明るく、恋愛要素とコミカルな下ネタでテンポよく物語が進むのでかなり面白かった。一方でそこに到達するまでの序盤の展開がかなり微妙なので、早い段階で切り捨てずに何とか根気よくプレイしてもらいたい。イメージとしては面白くなるまでに5時間、めちゃくちゃ面白くなるまでに10時間くらいかかる。
3人の主人公の関わり合いにも面白い仕掛けがあり、癖強日常パートを除けば群像劇としてはよく構成された作品。クリア後は何というか他人の人生を覗いたような感覚で一つの作品を読み切った感が凄かった。(語彙力)

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沙耶の唄 (R-18)

引用: DMMストアページ

プレイ時間: 4時間~
注意事項: 鬱要素(重) グロ描写(重)

──それは、世界を侵す恋。」

元祖ニトロプラスのグロテスクでサイコなサスペンスホラーADV。交通事故による知覚障害で世界が激変した主人公の下に突如現れた一人の少女との物語。
かなり狂気的な世界観で描かれる作品ではあるが、当時流行した電波系の作品とは一線を画する美しく切ないシナリオ構成からしばしばグロゲーにみせかけた純愛ゲーともいわれる。メインヒロインの沙耶はとにかく狂っている、狂っているがめちゃくちゃ可愛いので主人公もプレイヤーも何も言えないのである。
画面全体にテキストが表示されるデジタルノベル方式で物語が進むため、短編小説のようにサクサク読める。選択肢は2つのみと非常に短いが、それでも世界観のインパクトは抜群、深くは語らないエンディングはかなり余韻が残る。ダークな作品に耐性がある人はもちろん、ニトロプラス入門編としてもおススメ。

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Staffer Case:超能力推理アドベンチャー

引用: Steamストアページ

プレイ時間: 14時間~
注意事項: CV無し

「文書を組み合わせ、真実を明らかにせよ」

超能力の蔓延る架空の1960年代ロンドンを舞台に、不可思議な殺人事件を超能力と推理力で解決していく新感覚の推理ゲーム。韓国インディー発であり、国内最大級のインディーゲームフェスでも注目を集めた作品。
あえて既存の作品で例えるなら「ライトなSCP的世界観×逆転裁判系ゲームシステム」の推理ADV。プレイヤーは供述や現場検証の文書データから容疑者の発現の矛盾を突いていき、事件の真相に近づいていく。もっとも主人公の問題提起の範囲内で矛盾を探していくため難易度は低め。正直ゲーム性としてはチョロいと思ってしまう人が多いと思う。
それでも高評価した理由はただの推理物ではなく人間ドラマが重視されている点。物語が進むにつれて魅力的な捜査チームの仲間が事件に深く関わってくるため、トリック・犯人推測以上の物語的な面白さがある。
さらにこの手の作品にしては珍しいルート分岐が存在する点も見逃せない。推理パートは正解するまでやり直すことができるのでペナルティやバッドエンドは存在しないが、いわゆるミスリード的な推理ミスには個別の展開とエンディングが用意されている。事件ごとに複数の結末を辿ることができ、それ自体も伏線になっていたのは斬新だった。キャラクターの過去と主観の描き方が非常に良かったのでぜひ続編を出して欲しい。

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白衣性恋愛症候群 RE:Therapy

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 12時間~
注意事項: 鬱要素(軽)

「再び出会う、白衣の天使たち‥‥
 ひとりの看護師として、そして、ただの女の子として。」


工画堂スタジオのしまりすさんちーむが送る白衣性シリーズ第1弾。おっちょこちょいな新人看護師の主人公が、先輩や患者さんとキラ☆ふわガールズラブを繰り広げる百合恋愛ADV。
看護師ならではの日常エピソードがシナリオの多くを占め、しばしば専門用語の解説を挟みながら描かれる内容はかなり本格的。患者さんとの距離の取り方や、規則と私情のどちらを優先するかといった考えさせられるテーマも。
また本作はADVゲームとしての攻略難易度が高く、非常にやりごたえがある。分岐の選択肢に抽象的なものが多かったり、ヒロインの性格が捻くれていたりとギャルゲーの正攻法では攻略が難しく、加えて一部ルートでは1ミスでグッドエンドに行けなくなるため、プレイヤーはヒロインの性格や心情を真剣に考える必要がある。
さらに攻略に失敗した末のバッドエンドも特徴的。キラ☆ふわガールズラブとのギャップが凄く「え?そっちの方向行っちゃう?」と思わず言いたくなるほど内容がえげつない。各エンディングは1シーンで短いが、怖いもの見たさでプレイしてみるのもあり。
なおタイトル名が無印であるSteam版も、内容は完全版のRe:Therapyなのでしっかり追加ヒロインまで攻略可能。

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はつゆきさくら (R-18)

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 15時間~

「初雪から桜まで、卒業おめでとう」

SAGA PLANETSの四季シリーズの最後を飾る恋愛ADV。復讐に囚われた不良少年の主人公が学園でのヒロイン達との交流を通じて本当の自分を探していく物語。作中ではゴーストと呼ばれる幽霊が物語の鍵を握り、オカルティック現代ファンタジー的な世界観で描かれる。Getchu.comの美少女ゲーム大賞2012ではシナリオ部門、音楽部門、総合部門で1位に輝いている。
この作品はとにかく「切ない」の一言。本当に綺麗なハッピーエンドがなく、ご都合エンドでも許したくなる展開ばかり。個別ルートではどのヒロインも主人公に一途過ぎて、だからこそ報われない結末が辛かった。オカルティックな背景設定はやや掴みにくいが、各ルートでは散りばめられた様々な伏線はグランドルートでそれなりに回収してくれるので後味はすっきり。
筆者は裏ヒロインこと小坂井綾推しで、綾ルートは「これを序盤に攻略させるの鬼か?」と制作陣に言いたくなるほど印象に残った。

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レイジングループ

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 15時間~
注意事項: 鬱要素(軽) グロ描写(軽)

「おおかみをくくれ。よみびとを絶やせ。」

携帯スマホゲームで知られるKEMCOのリアル人狼ゲームをテーマにしたホラーサスペンスノベルADV。「週間ファミ通」新作クロスレビューゴールド殿堂入り作品。
とある閉鎖集落で発生したリアル人狼ゲームに集落外の一般人である主人公が巻き込まれるところから物語は始まる。集落関係者が騙し合いの心理戦を繰り広げ、その中で何故巻き込まれたのかを探っていくワクワク感が非常に面白かった。基本的には主人公のゲーム進行に乗っかった上で、吊りやCOといった重要な局面でプレイヤーが選択肢を選ぶ仕様になっているので人狼初心者でも問題なく楽しめる。
またもう一つのテーマとして「死に戻り」という設定があり、様々な役職、結末を迎える複数のルートを攻略できる。選択肢を間違えてもシナリオチャート機能でヒントを得た上で分岐まで戻ることができるのでプレイも快適。
唯一気になった点としては個人的に伝奇・SFの絡んだ結末のインパクトが弱く感じてしまい「人狼ゲームをしている時が一番楽しかった…」となってしまったところ。とはいえプレイ時間の大部分は楽しませてもらった点は高評価。

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S

アオイトリ (R-18)

引用: DMMストアページ

プレイ時間: 20時間~
注意事項: 抽象的作品(重)

「それは祈りが紡ぐ、命の物語──」

男子禁制の学園を舞台に性交渉を行った相手を幸福にする神父の主人公とヒロインの関わり合いを描いた恋愛ADV。萌えゲーアワード2017では主題歌「アオイトリ」が主題歌賞金賞を受賞している。
シナリオとH要素が強く結びついているTHE・R-18作品であるが、下品さを感じさせない工夫が随所に光る作品。舞台となる学園は閉鎖的なミッション系女子校であり、異国の洋館を思わせる幻想的な背景CGの数々は雰囲気バツグン。
シナリオは「凡人・普通であることに対する葛藤」をテーマに海外の演劇や小説を絡めた展開がなされ、恋愛物というよりは文学的読み物のような内容となっている。かなり抽象的でメッセージ性を重視しているように感じた。もっともヒロインのメアリー・ハーカーがめちゃくちゃ可愛く、日常パートも適度に描かれるのでキャラ重視でも楽しめるとは思う。
「アマツツミ」とは姉妹作のような立ち位置にあり、どちらを、あるいはどちらから遊んでもOK。個人的には「アオイトリ」の方が設定が小難しくない分読みやすかった。

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eden* (R-18/全年齢)

引用: DMMストアページ

プレイ時間: 4時間~

「死にゆく楽園(ほし)へ、最後のラブストーリー。」

地球脱出を余儀なくされた終末世界を舞台とするインタラクティブノベル。最期の時を地球で過ごしたいと望む少女と、それを束縛する護衛任務にあたる主人公との恋愛物語。
物語自体はありきたりといえばありきたりの純度100%ラブストーリー。だが主人公とヒロインはもちろん、その周りで関わる人々の「ルールなんかより私情だ!」という熱い想いがセリフ・行動の随所から読み取ることができ、めちゃくちゃ感情移入できた。
演出面も10年以上前の作品とは思えない程クオリティが高く、CGはアニメーションのように背景と立ち絵が一体となってキャラクターのセリフに合わせて目や口が動く力の入れ様。ゲーム中に選択肢は存在せずシナリオも短いものとなっているが、非常に濃密な時を過ごせた作品。

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君と彼女と彼女の恋。 (R-18)

引用: DMMストアページ

プレイ時間: 8時間~
注意事項: 抽象的作品(中)

「君が、好きです。」

平凡な主人公と学園のヒロイン、電波少女の3人の奇妙な恋愛模様を描いたニトロプラスの怪作。公式ではオルタナティブADVというジャンルの作品であり、文字通りプレイヤーは二者択一を迫られることになる。
レビュー書いておいて何だお前と言われるかもしれないが、本作は1発ネタの挑戦的な作品なので事前情報0でプレイすることを推奨する。正直PVも見ない方がいい。プレイ中も攻略サイトは見ずに、詰んだと思っても試行錯誤を繰り返してエンディングに辿り着いて欲しい。
唯一言えることはライト向けの作品ではないこと。ノベルゲー、ギャルゲーの類をある程度プレイした上で深みが出るディープな一作。

※いやでも「ちょっとくらいは内容を知りたい」「作風くらいならネタバレあってもいい」という人もいるでしょう。以下ほんのり解説します。





注意事項: 鬱要素(重) グロ描写(中)
以上。PVの笑顔が眩しい。

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CROSS†CHANNEL (R-18)

引用: DMMストアページ

プレイ時間: 15時間
注意事項: 鬱要素(中) グロ描写(軽) 抽象的作品(重)

「生きている人、いますか?──」
「この空が消えてなくなるその日まで──」

名シナリオライター田中ロミオ氏の代表作。夏休みを前にバラバラになってしまったとある学園の放送部のメンバーが繰り広げる青春アドベンチャー。田中ロミオが表現したかった全てがここにある。
一般論で評価すると「よくわからないんだけどなんか凄い」作品。主人公のキャラクター・テキスト文体の癖が強く「哲学」と取るか「電波」と取るかは人次第。メッセージとしては「人と普通の付き合いがしたいのにそれができない不器用さや葛藤、その中で見出す友情や愛情」のようなものが描かれている。(気がする。筆者には難解過ぎる。)
シナリオはSF要素を含むループ物であり、登場人物が狂っていったり、その謎が徐々に明かされていく展開は面白い。エンディングも深い終わり方で癖の強さを加味しても感動作ではあった。ただ仕掛けが凄さが売りの作品ではないので、SFよりはヒューマンドラマ系の作品が好きな人に刺さりやすいと思う。

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Geminism 〜げみにずむ〜 (R-18)

引用: DMMストアページ

プレイ時間: 4時間~
注意事項: グロ描写(重) 抽象的作品(中)

「私、不完全な双児形(シンメトリー)──。」
「サァサお立合い、夜半の忌事、はじまりはじまり
──。」

「さよならを教えて」のCRAFTWORKが22年振りに復活。双子姉妹が身体のパーツを奪い合う惜夜(あたらよ)のしあわせ探しADV。直近の萌えゲーアワード2023ではユーザー支持賞・シナリオ賞・サウンド賞・続編希望賞を受賞した注目作。
開幕から怒涛の戦闘シーン・グロ描写が繰り広げられインパクト抜群。シナリオの展開はなんとなく予想がついたが、プレイヤーの気になる点をぼやかして物語に引き込む力が強かった。
モダンとレトロをミックスした独特な世界観も味があり、独特なカットインとリアリティのある背景CGがそれを支える。画質も良くシナリオ以外の部分での平均点は高め。
またヒロイン姉妹の背後で暗躍する男キャラ2人組が魅力的な堅物&チャラ男コンビで、この2人を中心に続編を作ってほしいとも思った。続編希望賞受賞も納得。

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fault milestone (two side:above)

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: one 2時間~ two上 3時間~
注意事項: CV無し

「平和の終わりは旅の始まり──」

全世界累計販売50万本以上を記録したシネマチックアドベンチャーノベル。攻め込まれた王都から逃げようとした姫と護衛が瞬間移動に失敗し、世界の裏側から帰郷を目指す旅物語を描いた西洋風SFファンタジー。
「少年漫画を少女達でやる青年漫画調の冒険譚」というコンセプトに非常に忠実な作品。マナや王国といったバリバリ西洋風ファンタジーの世界観で描かれるが、バトル物ではなく旅路で出会う人々との人間ドラマを主な内容とする。現代の文化や差別についての問題提起とも取れる各エピソードは読みごたえがあり、一方でくどくない設定に1作品1エピソード完結のためサクサク読みやすくもある。
個人的に1作目のoneはそこそこの評価にとどまっていたが、続編のtwo上で3Dカメラワークが追加され演出が豪華に。陥落した王都の視点や未知の要素が展開されると共に、安定のサクサク感で主人公達の旅路エピソードも描かれ面白いシリーズになると確信。ただ現状はtwo上の良いところで物語が打ち切られており、続編であるtwo下がストアページの公開のみで未リリース。最低でも今後3~5作品は残されているボリューム感なので長く付き合っていける人向け。one→two上の順にプレイして面白いと思ったら主人公達の過去にまつわるStP編もおススメ。(1作目のLIGHTKRAVTEが3時間~)

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WORLD END ECONOMiCA

引用: 任天堂ストアページ

プレイ時間: 5時間~ (全3部作で15時間~)
注意事項: CV無し

「一つ、損をしないこと。二つ、一つ目のルールを絶対に忘れないこと。
 このルールを守れた者のみが、莫大な富を手にすることができた。」


「狼と香辛料」の作者である支倉凍砂氏が手掛ける月面を舞台としたSF経済ビジュアルノベル3部作。株で生計を立てる家出少年の主人公が前人未到の地に立つまでを描いた物語。
経済ビジュアルノベルと聞くと難しそうに聞こえるが、わかりやすくいえば株と経済というニッチなテーマに友情や恋愛を絡めたヒューマンドラマ的な作品。終盤にかけては経済に関する本格的な内容も含まれるが、Tipsや図解がわかりやすく、「この企業が悪い」「この賭けには勝たなければ」くらいのテキトーな理解でも全然楽しめる。
各エピソードの間にはそれぞれ4年の時の経過があり、主人公が世間に揉まれて成長していく様子が描かれる。次のエピソードへの引き込み方が上手く、先に進むほど面白くなっていく作品。本当に最初はクソガキだったのによく成長したもんだ…。
元同人ゲーということもありキャラクターボイスなし、全体的な作りも簡素なものとなっているが、マイナーテーマを掲げた独創的な世界観とシナリオが光る一作。後にライトノベル化もされているのでシナリオの面白さは保証済み。アニメ用PVでキャラクターが動いて喋ったのマジで感動したので、いつか必ずアニメ化してほしい…。

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おわりに

いかがでしたでしょうか。今後筆者も忙しくはなりますが、ノベルゲーム開拓はのんびり続けていくつもりではあるので、冒頭で述べたように本記事もアップデートしていければと思っています。


最後に名言を一つ。

漫画でも映画でも、物語を面白くする方法は同じです。
それは登場人物を追い詰めることです。
マブラヴはそれを教えてくれました。是非、極上のストレスと極上の解放感を味わっていただきたいです。

諫山創先生からのコメントが到着しました | アニメ マブラヴ オルタネイティヴ 公式HP (muv-luv-alternative-anime.com)


皆さんのノベルゲームライフに幸あれ。


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