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大人がてんやで泣きかけた話

マイナンバーカードの申請をしたら国から2万円分のポイントをもらった。

「現金で2万くれや!」とはちょっとだけ思ったけれど、ありがたい話である。せっかくの臨時収入なので、外食をすることにした。

駅前に繰り出し、自分がチャージした決済サービスに対応している飲食店を探すことにしたのだが、これが中々見つからない。キャッシュレス決済ってsuicaぐらいしか使ってこなかったので初めて知ったのだが、PayPay以外の決済サービスってカスみたいな扱いを受けている。他の決済サービスがまぁまぁ有名なチェーン店でも対応していなかったりするのに対して、PayPayは個人店でも対応していることが多く、近所の昔ながら銭湯でも使えると知った時は愕然とした。

店選びに苦労する中、一筋の光のごとく神々しく輝く白い看板が目の前に現れた。

てんやだ。

「天丼いいなぁ〜」と思いつつ、「てんや キャッシュレス」で検索して調べると、「誰が使ってんねん!」っていう見たことない決済サービスにも対応していた。さすがてんや。他の決済サービス全然使えないのに、「PayPay使えます!」みたいなシールを店先に貼って「キャッシュレス社会についていけてまっせ!」顔をしている店は見習ってほしい。この日の外食はてんやに捧げることにした。

店先にあったメニューを見ていたので注文する商品は決まっていた。オールスター天丼だ。


えび天とかほたてとか色々乗っててみそ汁まで付いて今の時代に720円だった。どういうからくりなんだろう。

昔、バイト先の先輩が親に買ってもらったという車に乗りたくもないのに乗せられた時にガソリン代やらなんやらと色々理由付けられて1000円取られたことを考えると、720円でオールスターを食わせてくれるてんやはすごい。

注文が完了してオールスター天丼が出来上がるのを待つ。この時間はスマホを開いたりはしない。頻繁に外食に行く人にはない感覚かもしれないが、たまにしか外食に来れない身からすると、商品が届くのを待っている時間も楽しい。店内で流れてる嵐の曲ということだけは分かるお琴バージョンのBGMを聞いて(この曲なんだったけ?ドラマのやつだよな?)とかずっと考えていたい。

店内BGMが全然嵐の曲じゃないことに気づいた辺りでオールスター天丼が到着。てんや、看板も神々しかったけれど、商品も神々しい。具材一つ一つが輝いて見える。自分の中の彦摩呂が「天丼のギリシャ神話や〜!」と叫んでいる。

好きな物から最初に食べる派なので、真っ先にえび天をひと口。

うまい。うま過ぎる。

美味しいタレが染み込んだ天ぷらたち。えび天の他にも、いか、ほたて、まいたけ、れんこん、いんげん…最高だ。ご飯も進む。めちゃくちゃ美味しい。

めちゃくちゃ美味しい…めちゃくちゃ美味しいのだけれど、箸を進める度に「美味しい」とは別の感情が肥大してきて、完食が間近になる頃には、完全に上回った。「みんなはいつもこんなうまいもんを食ってるのか」と。

お恥ずかしい話、貧乏なので食事をするにも外食という選択肢を選ぶことはほぼない。「飯作るのめんどくさいし今日は外食にするか〜」とサラッと飲食店に入ってこういううまいもんを食べてる人が羨まして仕方なくなった。

隣の席に視線を向けると、おそらく自分と同世代の男性がオールスター天丼を食べていた。しかも、セットで注文できる小そばも付けて。自分も、もっと頑張って生きていたら、オールスター天丼に小そばを付けれる人生だったのかな。

なんだか泣きそうになってしまう。でも、絶対に泣いたらいけない。「てんやで泣く」なんてこの世に存在しないシチュエーションなんだから。これまでの人生で泣いたのが幼少期に姉と喧嘩した時と劇場版のドラえもんを見た時だけの人間なのに、久しぶりに、それも大人になってから初めて泣くのがてんやは嫌だ。我が子の誕生とかで泣かせてくれ。

涙を堪え、天丼を完食し、慣れないバーコード決済を完了させて、店を後にする。そして、帰路の途中に決意した。「毎日オールスター天丼を食えるぐらいに成功してやるぞ!」と。

帰宅してから冷静に考えて計算したのだが、720×31は2万ちょっとなのでそこまで成功してなくてもオールスター天丼は毎日食える。

結論 てんやはすごい。

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