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「お前のことなんて誰も気にしてない」と言いますが

ローソンの入り口を跨ぎ店内へと足を踏み入れると、心臓の鼓動が少し速くなる。明るい照明の下、レジ横には、大好きなからあげクンが見える。

「からあげクンください!」

と言えば、少々ダルそうにしながらも店員がからあげクンを取り出してくれるだろう。しかし、その一言がどうしても言えない。なぜなら、それは自分にとって恥ずかしい行為だから。

まず、好きなことを伝えるのに抵抗がある。「からあげクンください!」は、「僕はこのからあげクンが大好きです!!!!!!!!!」と言ってるようなものなので。これに関しては、経験上、自分の”好き“をさらけ出して、ろくなことがなかったせいかもしれない。

そして、「からあげクン」って響きが恥ずかしい。からあげクン自体はめちゃくちゃ好きなのだが、「からあげクン」って言葉を発してる自分がめちゃくちゃイヤだ。「クン」の部分が特にイヤ。ローソンの企画力にはいつも驚かされるが、「からあげクンってよくないですか?」って会議で提案した人は恨む。ローからとかでよかっただろ。

でも、頑張って「からあげクンください!」って言う。恥ずかしい以上にからあげクンが食べたい気持ちが強いから。からあげクンの前では人間は無力。

自分にとって大きな壁だった「からあげクンください!」の一言。一人暮らしを始めて極貧になってからは、コンビニのホットスナックも贅沢品になったので、このセリフを言う苦しみからも開放されたのだが、今でもからあげクンを買うには店員に「からあげクンください!」と発表するシステムは変わってないのだろうか。誰もがからあげクンを気軽に買える世界になることを願う。美味しいものと面白いものは一人でも多くの人に届くべきなので。

こういう話をすると、考え過ぎ、自意識過剰、だとツッコまれ、アドバイスとして「お前のことなんて誰も気にしてない」という言葉を頂戴してきた。ただ、この「お前のことなんて誰も気にしてない」って果たしてそうなのかなと疑問に思っている。

SNSを見てると、電車で前の席に座ってる人やレジに並んでる人のこと観察した投稿をよく見るし、こういった投稿ってほっこり系のものが多いがポジティブな内容のものばかりではなく、「こういう乗客がこうキモくて〜」みたいな内容もある。これはキモ側の人間としては、明日は我が身の光景だ。

文字で晒される分には、「これ俺のことだ!」と発見しても、黙ってれば精神的ダメージのみで済むが、怖いのが隠し撮りした写真や動画を晒されるリスクがあることだ。何故だか分からないが、キモい奴は隠し撮りしても、ネットに晒してもあんまり叩かれない。SNSやショート動画でそういう動画が回ってきて、コメント欄で盗撮が叩かれてるのかと思って見に行ったら、「キモくて草」みたいなコメントばかりで絶望する。扱いが害虫駆除動画で苦しんでるゴキブリじゃないか。

迷惑行為をしてる奴がそういう扱いをされるのは分かるけれど、ただキモいだけで何も悪いことをしてない奴が不特定多数の目に晒されて嘲笑されてしまうのはあんまりだ。ただキモいだけなのに。

生きる迷惑行為として、キモがられない努力をして、街で歩いても誰にも気に留められない存在になりたいし、僕のことなんか気にしない世の中になってほしい。

なので、ローソンの店員さん、僕が「からあげクンください!」と言っても、「今日キモい奴がからあげクンください!って言ってきたw」とか投稿しないでくださいね。

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