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このオバケ、ヤラセにしては人間すぎる!(レビュー:『新・三茶のポルターガイスト』)

オススメ度:★★★★☆

数々の超常現象が起こる、東京・三軒茶屋の雑居ビルにあるヨコザワ・プロダクション。天井や床から現れる白い手や、降霊術中に現れる黒い手、激しく揺れ動くホワイトボードなどの不思議な現象を、学者らが科学的な観点から解明しようとする。

 先日、『三茶のポルターガイスト』のレビュー記事を書いたところ、

 関係者の方から『新・三茶のポルターガイスト』の試写にお誘い頂いた。かなり気になっていた続編なので、ありがたく視聴させて頂いたのだが、そういうわけで今回は無料公開記事である。

 さて、前回のレビューで私は「ドキュメンタリータッチを徹底した本当によくできたモキュメンタリー作品」といった形で前作を結論したわけだが、どうも寄せられたいくつかの情報を参照するに、「これは本当にドキュメンタリー」とする意見が強いようだ。「そうなのか!?」と思って本作を見たのだが、しかし視聴後、私はさらに「どっちか分からん」状態へと陥ってしまった。この件、ものすごく微妙である……。

 まだ未公開作品ということで、できるだけネタバレ抜きで書きたいのだが、しかし、なかなか難しい。そもそも、この作品はどこからがネタバレになるのだろうか……? というわけで、ネタバレに踏み込んでたらごめんなさい、と先に断っておく。まっさらな気持ちで見たい方はこの先を読むことを避けて頂きたい。

 さて、前作では検証パートとして、マジシャンや内装業者などがチェックを行ったが、今回はさらに物理学者や超心理学者までが調査に入る。「学者が来たから怪奇現象が起こらない」などといったケチくさい話はなく、誰が来ようと別け隔てなく怪奇現象は発生する。再現性という点では本当に信用のおける心霊スポットである。

 前回の内装業者による室内チェックパートもワクワクしたが、今回はさらに室内を解体していく。いろんなものがゴチャゴチャしているのを、どんどんどかしていくのだ。こういった「室内の謎の空間」を探索していく話は、人の心を引き付ける妙な魅力がある。赤いクレヨンや洒落怖の姑塩漬け事件など、「普段、当たり前に生活しているスペースに実は気付いてない何かがある」といった話は「もしかしたらウチにも……」という想像を掻き立てるのだろう。


 それで、この調査の結果、学者サイドからはかなり否定的な結論が出されてしまう。確かに、「それっぽい怪奇現象を演出できそう」なアレコレは調査により色々と発見されたのだ。

 ただ、作中でも言われている通り、それをすることの意味だとかコスパだとか安全性だとかを考えると首を捻ってしまう。スタジオ側の盛大なヤラセやドッキリだとして、それをすることの意味が分からないし、一人ではできない以上、ものすごく士気が高くて、口が硬い協力者複数が必要になるが、どうやったらそんな協力者が得られるのかがさっぱり分からない。できなくはないのかもしれないが現実的だとは思えない。

 映画製作側まで一緒になってヤラセをやっているのだと考えても、今度はなんで作中で「これはヤラセ(の可能性が高い)」といった論調を紹介しているのか? 自分たちでヤラセっぽいことをして、出演者に「これはヤラセ」と言わせる作りは素直に意味が分からない。

 そういう意味で、本作は不思議で微妙なのである。オバケには見えないし、あまりにもヤラセっぽいけど、ヤラセをする意味が分からないし、そういうオバケにする意味も分からない。いや、そこまで含めてリアリティの演出だというなら、私は完全に掌の上で踊らされていることになるが……。

 本作の最も微妙な怪奇現象として、「踊ってるアイドルたちの後ろに登場する謎の12人目の男」がある。これが特に不思議で仕方ない。何が不思議って、仮にオバケだとして、なんでアイドルたちと似たようなファッションでわざわざ現れるのか? ていうか、オバケに服装選択の自由とかあるのか??

 どう考えても人間にしか思えない。しかし、仮にヤラセなら、こんな人間にしか見えないオバケを出すか? もうちょっと「オバケっぽいオバケ」を出すんじゃないか? なんでアイドルと同じような服を着て、しれっと混ざってるのか。この辺が全然意味が分からない。

 仮に「ものすごく低レベルなヤラセ」だとしても、その割にはこのヤラセを実現する労力が甚大で、かけたコストの割に結果がショボすぎる(こんなに苦労するならもっとオバケ感を出すだろう)。オバケだと考えても不可解だし、ヤラセだと考えても不自然で、すごく微妙なラインなのだ。

 そういうわけで本作はずっと分からない。個人的には、怪奇現象というよりは何らかの思考上の死角を突いたトリックなんじゃないか?と思っている。スタジオ側がやっているのか、第三者がやっているのか分からないが、実はものすごく簡単なトリックで、実現する労力も非常に低いので、「いつバレてもいいや」という軽い気持ちでやっている……みたいな。動機? それは全然分からない……。

 *

 ガチなのかヤラセなのかは未だに分からない。しかし、とにかく気になってしまう作品(テーマ)である。トリックだとしてもどういう秘密があるのか、どういう動機があるのか、そこにミステリーが生まれる。ガチだとすれば、メチャクチャ物理的な現象なので、解明できれば人類の科学は100年くらい進歩しそうでドキドキする。いやー、どっちであっても面白いですね!?

 あと、本作を視聴していて、自分の心境変化として面白い発見があった。「いや、これはヤラセです」と学者に強弁されると、「いやいやいや、その強弁の方が非現実的じゃね?」「ガチかヤラセか分からんけど、その強弁は違くね?」と、むしろ「肯定より」になってしまうのだ。「これは本物です!」と言われると「いやいやいやww またまたまたwww」となるのに、人間心理は面白いものである。そこまで計算の上での演出・脚本だというなら脱帽であるが……。


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