「誰かが撮った動画」で構成されるホラー映画(レビュー:『スプリー』)
オススメ度:★★★★☆
本作の内容はあらすじそのままである。視聴後の感覚も、あらすじから受ける印象と相違ない。そのため苦手な人にはオススメできない。
似たような方向性の作品に『仁義の墓場』がある。深作欣二監督によるカルト的人気を持つこの任侠映画は他の実録やくざ映画と比べても異質だ。
主人公の石川力夫は凶暴なやくざである。その暴力性や破壊衝動は敵対組織だけでなく、自分をずっと庇ってくれていた身内にまで及び、クスリに溺れて自滅していく。人でなしの主人公がロクでもない粗暴な振る舞いにより、自分を含む全方位に迷惑を掛けるだけ掛けて死んでいくという、爽快感の欠片もない異様なストーリーだ。主人公が死んで「やっと死んだ!」「良かった!」と心の底から思える恐るべき映画である。
本作はこの『仁義の墓場』をよりライトに、よりコメディチックにした作品と言える。
が、根っこは同じなので、10年間、動画を投稿し続けて、結局、誰にも相手にされなかった白人男性がヤケになって過激動画(殺人)を投稿する……という「全方位迷惑型」の作品ではある。かなりコメディチックな仕上がりではあるが、やはり主人公の鬱屈感や閉塞感などの「悲しさ」が根底にあるため、見ていてスカッとする話ではない。(石川力夫と比べてまだ「共感できる余地がある」とも言えるが)
本作は終盤まで「周囲を巻き添えに落ちていく」主人公の姿を、コメディチックに見せていくだけでストーリーらしきストーリーはない。それが終盤において、女性人気コメディアンを付け狙いだしてから、急にストーリー性が強くなる。
本作は全体的に「バズる」ことを至上価値とするデフォルメされた世界観で描かれいる。主人公はライドシェア業務中に、車内各所に設置されたカメラで配信しており、客のプライバシーなどあったものではないが、客も客で、すぐにスマホを取り出して配信を始める。「バズに繋げよう」「フォロワーを増やそう」という行動原理に誰も彼もが脅迫的に駆られているのだ。女性コメディアン自身もそうであった。
前半の主人公は「せっかく殺人までして過激動画をライブ配信してるのに、視聴者が2桁にならない!」と嘆いているのだが(この部分が本作の一番のコメディ要素だ)、後半で彼は大勢のフォロワーを有する女性コメディアンに嫉妬し、そのライブ会場を襲撃しようとする。
しかし、舞台で女性コメディアンは
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