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本作では子熊は傷つけられません(レビュー:『コカイン・ベア』)

オススメ度:★★★★☆

麻薬密輸人がFBIに追われ、セスナ機からコカインが入ったバッグを投げ捨てた。しかし、こともあろうに巨大なクマが、その白い粉を食べてしまった―偶然にもジョージア州の森に集った刑事、ギャング、森林警備隊、観光客たちが、大量のコカインを食べて暴れ回る"頂点捕食者"と遭遇したとき、いまだかつてない惨劇が起きる―!

 本作はよくできた動物パニック系ホラー映画である。十分にオススメできる作品であるが、しかし、必ず見るべき作品というわけでもない。本作のタイトル、あらすじ、企画性……それらから受ける印象、そのまんまのB級ホラー映画であり、それ以上でもそれ以下でもないからだ。

 だが、「90分間ポテチを頬張りながら笑顔で見て、見た後にすぐ忘れる」系の作品としては十分な出来である。つまりはきちんとしたホラー映画ということだ。ホラー映画を見て人生を変えたいとか学びを得たいとか、そんなアホなことを考えている人がいるとは思えないが、そういう人を除けば総じてオススメできる。

 さて、実話を元にして作られたと謳う本作だが、しかし、そのような触れ込みの作品には必ず脚色がなされるものだ。「実話」要素は軽いフレーバー程度かもしれないし、逆にかなり事実に沿ったドキュメンタリーテイストの強い作品かもしれない。「実話を元にして作られた」という売り文句も実際の中身は様々である。
 
 では、本作はどうか? 本作に対して、われわれはどのような姿勢で向き合えばよいのか? それは開始後2分で明らかにされる。アメリカグマの生態に対する生物学的うんちくが字幕で挿入された後に堂々と明記される文字列。そう――

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