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雑記:NHKがツイフェミ化?

 先日、このようなポストが流れてきた。

https://x.com/Myb1dEAkKz0s7aP/status/1799439559526379731

 落ち着いて頂きたいのだが、ツイフェミのそのような言説は当然キモいし、専門家が同じことを言おうが、NHKが言おうが同様にキモいのである。誰が言おうがキモいものはキモい。

 何らかの表現が「犯罪者の実行を後押しする価値観を形成する」というのが仮に真だとするなら、暴力事件や殺人事件に繋がりそうなあらゆる暴力描写は同様に規制すべきであり、この世からアクション、クライムサスペンス、ミステリなどは全て駆逐される。そういった社会が本当に健全になるかどうか想像してみると良い。あのような言説は端的に戯言である。

 よって「NHKがこのような言説を肯定しているのであれば苦情の一つでも送らねばならん」と思い、当該番組を確認した。

 だが、結論から言えば、当該番組に対してはあまり強い批判はできなさそうだ。上記ポストはポスト主の主観や連想が強く出たものであり、当該番組の趣旨ではその点は大きく扱われていなかったからだ。

 当然ながら、実在児童に対する性犯罪・性加害は許されるものではない。それは表現の自由うんぬんの問題ではなく、れっきとした犯罪行為である。そして、当該番組はこの実在児童に対する実際の加害に焦点を当てており、番組中の98%はそちらに関する話となっている。

 ほんの2%ほど、非実在児童に対する性的描写が問題視されていると捉えうる箇所があるが、割合としてはその程度である。「社会全体に子供を性の対象として消費してよいという価値観がある」という文脈で語られるが、そこで非実在児童に関するフィクションが強く槍玉に挙げられているわけでもない。例えば、宇崎ちゃんの献血ポスターなどが大写しになったりすることもない。

 全体的に言って「表現の自由」マターとしては、そこまで過度に敵対的な内容とは言えないだろう。とはいえ、そのわずか2%から冒頭ポストのようなものが生まれたことを考えると、NHKの行間の読ませ方は「有効に機能している」と言わざるを得ないのだが……。

 当該番組中で明確に批判の対象となりうるものは、33分頃に現れる上谷さくら弁護士のインタビューシーンである。日本では、児童ポルノ禁止法は「18歳未満の児童」が対象であるが、イギリス・フランス・カナダなどでは「18歳未満の児童に見えるもの」が対象となっている。日本においては「18歳未満であることが確実であること」が捜査上の足枷となっていると紹介する。

 だが、これは日本の現状の方が「マシ」である。「18歳未満の児童に見えるもの」の中には18歳以上が含まれる可能性があるからだ。そこには被害者がいない。誰も困っていないのに「犯罪」だけが生まれてしまう。

 なお、カナダにおける厳しすぎる児童ポルノ禁止法には一般市民も法学者も反対していたという。

問題は、カナダの児童ポルノ法の適用範囲が広すぎることだ。カナダの法律では、絵だけでなく、単なる表現物(例えば文学)の所有まで犯罪化してしまっている。現行社会におけるこれの最適事例は、日本のヘンタイ漫画のほとんど大多数がカナダでは違法になっていることだ。この処置には、〔法が制定された〕最初期から一般市民は反対してきた。

https://econ101.jp/stephen-harper-versus-the-intellectuals-part-2/


 また、「18歳未満であることが確実であること」が捜査上の足枷となっている、という言説にも私は疑わしさを感じている。AV新法があるため、「18歳未満に見える」作品であっても必ず契約書が存在しているはずで、その契約書を確認すれば良いだけだ。それが現状できていないのなら、それは司法側の捜査手法の問題であり、犯罪化する範囲を拡大して恣意的に逮捕対象を増やす事はナンセンスである。

 なお、斉藤章佳氏のインタビューは41分頃に現れる。われわれの界隈では「有名」な人物である。

 ただ、当該番組における斎藤氏の言説は、比較的ふわっとしている。

https://www.nhk.or.jp/minplus/0026/topic127.html

(この取材記事を元に番組は作られている)

 かなり抽象度が高い。その価値観の学習先として、「児童ポルノ」「メディア」「アダルトコンテンツ」を挙げているが、具体的に何を指しているのかが分からないため、強く批判はできない。

 おそらくは「成人した演者による未成年を模したアダルト作品」を想定しているのだろうが、斎藤氏が何を「問題のあるメディア・アダルトコンテンツ」とみなしているのかはこれだけでは不明だ。その辺りの一線をNHKは慎重に避けてきたな……という感覚である。明言はしないが、あちら側の人達の間では都合よく脳内で解釈されそうな絶妙なラインだ。

https://x.com/nikutamasoba731/status/1800278974037418359

(脳内で都合よく解釈した例)

 *

 結論を繰り返すと、番組自体には大きな問題はなかった。番組が主に取り扱っているのは、実在する児童に対する性加害であり、われわれとしてもその問題性は認めるところである。

 しかし、奥ゆかしく仕掛けられた「社会的な価値観」などのタームから、ツイフェミ的な行間を読み取る人たちがわらわらと湧いているのが現状であり、実際、NHKも少なからずそれを狙っていただろう。かなり「巧みな」手法だと感じている。

 だが、これも繰り返すが、当該番組は全体の98%が実在する児童への性加害問題を取り扱っているのだ。被害者が存在せず、科学的な因果関係も不明な非実在児童の描写を問題視しているヒマがあれば、現実の問題へと目を向けるべきだろう。番組が力を入れているのもそちらだ。実在児童への性加害の生々しさに動揺させられ、非合理的な非実在児童への規制に心動かされないよう、われわれは理性をもって現実を見るべきである。


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