見出し画像

雑記:おれはかがみ、酔拳の使い手


 こ、こいつら……。覚えてろよ、リアルで会ったらおれの酔拳が火を噴くからな……。


 というわけで、蒲田で酔拳を習ってきたので、簡単な感想を書くことにする。うろ覚えの部分もあり、感想も主観的なものなのでその点は割り引いてお読み頂きたい。


■酔拳は分からん殺し

 まず総じて感じたのは、酔拳とは分からん殺しなのだな、ということだ。「今から武術を使って殴るぞ!」という構えを見せれば相手は警戒する。「相手は酔っ払いだと思ってたら突然ボコボコにされる」のが酔拳なのだ。

 なので、「私は酔拳の使い手で、今から酔拳を使って戦います」というのは酔拳らしからぬスタンスである。私は今野先生に「酔拳の動きも現在では情報が出回っており、相手に研究されるのでは?」と問うたが、その答えが上記だ。相手が酔拳を使うことを知らなければ研究も対策もできない。なので、「酔拳を使う」という触れ込みで試合に出るなら、むしろムエタイで戦うという。

■纏橋(てんきょう)

 体験した事柄について個別に感想を残しておく。

 まずは纏橋。橋=腕であり、腕を鍛えるトレーニングだ。指の先まで気を張り巡らせるのがポイントで、簡単そうに見えるが、やってると腕がぷるぷるしてくる。

 中国武術には筋肉を付けすぎると攻撃が遅くなる、という感覚があるようで、これも筋肉を鍛えるのではなく「筋を鍛える」と説明される。その「筋」が何なのかはよく分からないが、おそらく「骨の周りの筋肉」ではないかとのこと。この辺りは西洋の解剖学的な知見とは異なる人体理解が背景にあると思われる。

 なお、私は最初のこれをやっている時点で「功夫ってこういうのを毎日やることなのかぁ」と感じて、「功夫を練るのって大変だなあ」という素朴な感想を抱いた。これを毎日やらんと達人になれんのかあ、と。

 ニンジャスレイヤーのカラテやハンターハンターの念も同じニュアンスなのだろうが、こういう地味な身体操作や鍛錬を日々欠かさないことがフィクションにおけるキャラクターたちの強さなのだろう。そう考えると、私がニンジャや念能力者になっても修行をサボってサンシタで終わりそうだなぁ……と思った次第である。幻影旅団とかいつ修行してるんだ?

■甕回し

 準備運動の一種という位置付けのようだ。動的ストレッチか。

■四平大馬

 これはキツい! 「動の鍛錬と静の鍛錬が50:50で必要なので、次は静の鍛錬」という触れ込みで始まったのだが、実際、空気イスである。今回は体験だったので2分だけだったが、実際は15分とかやるらしい。映画の『酔拳』だと腕に茶碗とかを置いている。

 姿勢と同時に心も平らにすることが求められる。ここで言う「心も平ら」というのは、要は戦闘中に心が乱れていると不利なので(怒りとか)、クレバーに戦える精神性を涵養する目的らしい。

 仏教も「心を乱さないように」することを教えられるが、あれは「乱れてると悟りに至る上で不利だから」という技術論であって、こういう「精神を安定させる」的なものは道徳的な美辞麗句ではなく技術論であることが多い印象を持つ。

■歩型(四平大馬、弓箭馬、吊脚馬)

 youtubeに動画がなかったので簡単に解説すると、四平大馬は上記の通りの構え(?)で、横からの圧力に強いが、縦(真正面)からの圧力には弱い。

 弓箭馬は前後に脚を開く姿勢で、これは縦からの圧力に強い。吊脚馬は片足立ちで、もう片足はつま先を地面に添える程度とし、蹴りへと派生しやすい。

 この四平大馬→弓箭馬→吊脚馬を順に行うことで移動する修行も行った。実際には状況に応じて、この歩型をパパパパッとシームレスに切り替えていく。

■手型(酒盆指)

 親指と人差指でCの形を作り、おちょこを持つような手の形。こちらの記事に詳しい。

 この手形は握り込んでのグーパン、掌底、人差し指を使う酒盆拳や、引っ掛けての投げに派生する。

■歩法(酔歩、浪歩)

 酔歩が横への移動で、浪歩が縦への移動。上で私がやっていたのが酔歩だが、

 今野先生がやるとこうなる。いやはや、酔っぱらいの動きをそれっぽくやるのにも技術がいるものだ……!

 この縦移動の浪歩が特徴的だが、縦への動きがリニア的ではない。相手からすると思わぬ速度で急に距離を詰められることになる。これが最初に書いていた「分からん殺し」で、相手がしっかり構えて殴ってくるなら攻撃の到達速度も予測できるが、こういう動きをされるとそれも分からなくなる。

■排打功

 二人一組で互いの手や足を打ち付け合う修行。相手の攻撃に対して防御をするという考え方がないらしく、相手の攻撃に対してこちらの攻撃を打ち付けて「払う」という感覚。

 当然ながら痛い。手も足も痛い! 私はすぐにギブアップした。今野先生も師匠とやってるとメチャ痛いらしい。

■秘孔的な?

 ここまでが体験の内容で、以下はその後の雑談の際に聞いたものとなるが……。

 中国武術では指を使って攻撃を行うことが(拳や掌底に比べて)最も強いとされている。指でサンドバッグ(のようなもの)を突く→秘伝の薬酒に指を漬ける、といった「毒手の作り方」的な修行も実際にあるらしい。

ここから先は

882字
この記事のみ ¥ 300
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?