「コロナは嘘」論者はいかにして「塩の人」になったか
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Twitterで批判を集める「塩の人」
ここ最近、筆者のTLによく流れてくるようになったアカウントがある。
このアカウントは、まるで塩が万能薬であるかのような健康法・治療法情報を発信しており、特に医療関係者から注意喚起のツイートが度々行われている。
また、上記のアカウントはあらかじめ医療関係者を大量にブロックしていることが知られている。ここから医療従事者の間で「#塩の人ブロックチャレンジ」というハッシュタグが生まれ、ブロックされているかどうか確認する人々も見られた。
筆者はそのツイートの雰囲気から、単なる代替医療アカウントとは思えないものを感じ取ったため、ダイスケ氏が辿った経歴について調べることにした。その結果、様々な怪しい界隈との繋がりが見えてきた。
「塩と水」の前は「宇宙料理」
このアカウントは、現在は「塩と水を伝える人」ということになっているが、元からこのような健康法を主張するアカウントではなかった。ツイートを辿ったところ、2021年12月上旬頃はマクロビに影響を受けたと思われる「宇宙料理」を提唱しており、Webのキャッシュから分かる通り「宇宙料理研究家」を名乗っていた。
ここでアイコン画像に注目して頂きたい。そこにあるのは宇宙を背景に、男性が汁物を手にしているイラストである。これは「塩と水」のイメージとは合わないが、その前の姿を知れば意味が分かる。アイコン画像は「宇宙料理研究家」の頃に設定したものであり、それを今でも使っているのだろう。
この宇宙料理だが、一般の人が思い浮かべるような「宇宙空間で食べるための」料理ではない。このアカウントはマクロビオティックに言及しており、さらに配偶者による説明マンガでも宇宙料理の研究に「陰陽の法則」と描かれている。これもマクロビの根本をなす内容であり、あくまで「マクロビから影響を受けた、宇宙の法則を生かした料理」という程度の意味合いだろう。「宇宙」と付いているのは、マクロビではよく「宇宙の法則」や「宇宙の秩序」という言葉が使われるため、そこから持ち込まれたものと考えられる。例えばマクロビを創唱した桜沢如一は「宇宙の秩序」という本を書いており、マクロビ関係の団体には「宇宙法則研究会」というものがある。
このダイスケ氏、最初は宇宙料理を普及させようとしていたようだが、さすがにエッジが効きすぎて受けが悪かったのか、21年12月の終わり頃から塩に関する投稿を頻繁に行うようになり現在に至っている。
当初は新型コロナ関連の陰謀論アカウント
「塩と水を伝える人」の前は「宇宙料理研究家」だったことが分かったものの、宇宙料理についてツイートし始めたのは21年12月からである。このアカウントが作成されたのは21年2月であり、宇宙料理までは時間が空いている。それでは、作成当初はどのようなアカウントだったのだろうか。ツイートを辿ってみたところ、当初は「新型コロナウイルスは存在しない」「コロナワクチンの有効性を示す文書は存在しない」といったツイートを行うアカウントだったことが分かった。
さらにこのアカウントは「アドレノクロム(アドレナクロム)」についても言及しており、ディープな陰謀論に染まっている様子も伺えた。アドレノクロムというのは主にQアノンの周辺で出回っている陰謀論で、世界中のセレブ達が誘拐した子供の脳髄からこの物質を抽出し、若返りに使っているとされる。この陰謀論の成立過程と受容については、カナダの名門マギル大学で疑似科学やフェイクニュースに取り組んでいるOffice for Science and Societyによる解説記事が非常に分かりやすい(QAnon’s Adrenochrome Quackery)。
筆者は何度か主張しているが、陰謀論と代替医療は相性が良く(例えば製薬企業が真実を隠しているといった話に展開しやすいため)、こうした陰謀論に染まった人物が代替医療や民間療法について情報発信すること自体は不思議ではない。
しかしこのアカウントについては、4月まではツイート数自体が少なく(4月に至ってはツイートがなく、放置していたようだ)、自然派な内容は見られなかった。ところがとあるセミナーを受けた後にツイート数が急増し、自然派・健康志向な内容も含まれるようになる。
「覚悟の人體セミナー」後に投稿内容が変化
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