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ジョブズ「だから」ハマった代替医療

2021年8月9日、Abema Primeにて疑似科学に関する特集が放送された。

出演はしなかったが筆者も取材協力しており、疑似科学や代替医療について考えるきっかけになる良い構成だったと思う。是非続編を企画して頂きたい。また、翌日にはNHKで新型コロナデマに関する「フェイク・バスターズ」という番組も放送され、新型コロナ禍で広まるデマや疑似科学が社会問題として本格的に意識され始めたことが窺える。

さて、こうした疑似科学やニセ医学に関する話でしばしば聞かれる言説がある。
「ジョブズのように賢い人も怪しげな医学にハマってしまったのだから、一般の人がハマるのも当然」というものだ。スティーブ・ジョブズは最初にがんが発見された際に標準医療を拒否してハーブやジュース断食といった代替療法を採用したために悪化させてしまい、寿命を縮めてしまったことが知られている。彼は後にその選択を後悔していた。

さて、「誰でも代替医療にハマる可能性がある」というのには筆者も同意するが、「ジョブズのような賢い人でさえ」という部分については筆者は違う認識でいる。ヒッピーや代替医療について調べている筆者の認識は、「ジョブズ『だから』代替医療にハマった」というものだ。これについて少し説明したい。

・典型的なヒッピーだったスティーブ・ジョブズ

ジョブズの死後、彼の伝記がベストセラーになったため読んだ方も多いことだろう。

さて、この伝記を読んでいて、前半で語られる彼の若い頃の姿に驚いた方はいないだろうか。そこで描かれているジョブズの姿というのは、大麻やLSDを摂取し、ビー・ヒア・ナウというインド精神世界書を読み、さらにはインドにニーム・カロリ・ババというグル(指導者)を探して旅に出ていた青年である(この時グルが見つかってインドに永住でもしていたらアップルは生まれなかったことだろう)。この青年像から分かるのは、ジョブズが典型的なヒッピーだったということである。ドラッグをやっていたのはほとんど語られることがないが、これはジョブズが特別アウトローだったというわけではない。当時はそういう若者が沢山いただけのことだ。LSDもかつては合法だったし、幻覚剤の使用は単なる快楽目的ではなく、「精神的な新世界を追求する、日常を超越した経験から何かを得る」という一応の意味づけがあった。

・ヒッピーとカウンターカルチャーとハッカーとニューエイジと

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